田中宏和っていう奴。 田口ランディさんによる特別寄稿。 |
おそらく今日はじめて知る人が多いであろう |
田中君、大好き。 なんでかというと、いっしょにいて気持ちがいいから。 体にまとっている空気みたいなものが濁ってなくて気持いい。 そういう人といっしょにいると、息をするのが楽になる。 田中君は大きな会社でサラリーマンをしている。 一度、田中君の会社に仕事で伺ったことがあるのだが、 入って行ったら田中君は走りながら コンビニのオニギリを食べていた。忙しいらしい。 でも、会っているときは「忙しい」って言わない。 忙しいふりもしない。そこも好きだ。 私はあんがいいつも暇で、 自分が都合の悪いときだけ「忙しい」って言う。 ようするに 「それはやりたくない」という意思表明なのである。 だから「忙しい忙しい」と連呼している人を見ると 「この人は私といっしょに居たくないんだな」 と察知する。 田中君は私といっしょのときは 「忙しい」なんて言わないから、 きっと私のことを好きなのだろう、 と勝手に思い込んでいる。 私は自分がちょっとひねくれているので、 田中君のようなニュートラルな人にすごく魅かれる。 こういう人といっしょに過ごしていると 自分のよじれも治るような気がしてくるからだ。 だから知りあってからすぐに 「お友達になりましょう」 という強引なメールを送ってお友達になってもらった。 田中君の会社での評価はどんななのか、 私にはさっぱりわからないけれど、 私は田中君はものすごくまっとうなサラリーマンだと思う。 こういう感じで働けたら働くことも楽しいよな、 と思える働き方をしていると思う。 自分が受け持った仕事に いつも自分なりの興味の持ち方で関与してく、 っていうのかな。 仕事への自己関与度が高いと、だんだんと 「労働」に「働き」というベクトルが生まれる。 「働き」ってのは作用のこと。 個人が関与してある事柄に作用し、 その質自体を変えてしまうような力の加わり方。 田中君はその「働き」というベクトルを生むための コツみたいなもんを知っているなあと思う。 私は「よく働くサラリーマン」はたくさん知っているが、 「よい働きをしているサラリーマン」はあまり知らない。 田中君は後者だと思う。 以前に、仕事でベトナムにいっしょに行ったとき、 ホテルの部屋で夜中まで二人で話しこんだ。 そのときに田中君が語った 失恋の話はめっちゃおもしろかった。 私は、男から言われた一番きつい一言は 「好きだけど、愛してないんだ」だった。 バカ野郎。思い出しただけでムカっぱら立つ。 なんだよそれ。 田中君が女から言われた一番きつい一言は 「あなたの話ってぜんぜんつまんない」だそうだ。 経緯があるのだが個人的なことなので省く。 田中君は関西人で「話がつまらない」と言われることは 大ショックなのだそうだ。 ま、こういうのって趣味の違いだと思うのだが、 私は田中君の話はいつも 「おもしろいな〜」と思って聞いている。 だから私が結婚していなければ惚れていたかもしれない。 ただ、田中君の趣味は 「小林秀雄の講演テープを聞きながら、 あてもなく車を運転すること」 だったりするのだそうで、 これは話としてはおもしろいが、 私がつきあわされるのはごめんだな……とも思う。 田中君はとても対人センスのある人で、 ネゴシエーションが上手だ。 辛い目にあってもじっと耐えてあまり怒らないし、 仕事上の人間関係を 過剰にストレスとして感じるということがないらしい。 そういうのはすごい才能だと思う。 若いのにあっぱれな奴だ。 だから田中君との仕事はとても楽しかった。 去年はいっぱいいっしょにお仕事したのに、 今年はまったく接点がなかったのでずっと寂しかったよ。 年末にやっとこの原稿を頼まれて、ちょっとうれしいな。 いやーー褒めた褒めた。 年の終わりにこれだけ他人を褒めまくると、 なんだか自分のカルマが少し落ちた気になる。 他人を褒めるということは 厄落としと同じ力があるな〜。 田中君、私の今年1年の垢も、 君を褒めたおかげですっかり落ちたような気がします。 どうもありがとう。来年も仲良くしてください。 【※田中宏和より】 この原稿を会社のパソコンで受け取った時、 顔を真っ赤にして、思わず周りをきょろきょろしました。 誰ものぞいてるわけ無いんですが。 御歳暮を一世紀分いただいた気分です。 ひとをほめる時は、全力でほめる。学びました。 落ちこんだら「声に出して読みたい原稿」です。 田口さん、ありがとうございました。 田口ランディさんが、 この元旦から公式ホームページを立ち上げられます。 場所は、こちら。 |
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2002-12-30-MON
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