イズミ |
植木さんがファーストリテイリングの
バイトに入ったのは何歳の頃だったんですか?
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植木 |
僕はね、19歳の時ですよ。
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イズミ |
まだ小郡商事だった頃ですか?
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植木 |
もう当然小郡商事ですよ。
僕ね、その時、浪人生だったんですよ。
浪人の2年目。 5月の連休明けてですね、
もう勉強したくなくなっちゃったんです。
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イズミ |
出身は尾道でしたよね?
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植木 |
尾道ですけど、
当時は広島市内に下宿してたんです。
最初はね、1年目は、
予備校の寮に入れてくれるんですけど
2年目は追いだされちゃう。
それで、行き場は無いは、
勉強はしたくないわで、
自分の居場所をとにかく探してたわけですよ。
そこにユニクロ1号店が出来てきたんです。
1984年6月2日がオープンなんですけど。
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イズミ |
1984年6月2日ですか。
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植木 |
ええ。僕はその6月2日に
初めてユニクロに行ってみて、
これはすごいな、と。
なんとなく店のボリューム感というか、
今までに広島には無かったんですよ、
そういうお店はね。
当時、ああいう宣伝広告、チラシを見ても
インパクトがすごくて、
「こういうところでバイトしてみたいなぁ」
と思ったのがきっかけです。
僕、実家が洋服屋なんですよ。
田舎の田舎の店ですけど
要はこれも小売りで
おふくろとか親父がメーカーに仕入れに行って
買ってきたものを小さい店で売ることが
生業だったんです。
子供の頃から、服には本当に慣れて
自分たちは育ってきましたから。
で、もうこれはここで働くしかない、と
その時、ほんとに思ったんですよ。 |
イズミ |
へぇ〜。
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植木 |
で、誰に言えばいいんだろうな、って
思ってアルバイト募集って書いてあったから、
当時550円が時給で、
それも魅力だったんですよ。
確かマクドナルドが
400円ちょっとくらいですよ。
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イズミ |
それって結構、当時の水準でも高いですよね。
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植木 |
ま、そのぐらい、
オープン時期というのもあって、
人手が要ったんだと思いますね。
で、当時の店長、森田生夫さんっていう方ですね。
あの人のところに行けって言われたんですよ。
森田さんって
今でも僕の大尊敬している方なんですけど。
じゃあ彼が「明日から来いよ」って言われて。
で、オープン2日目から働き始めて。
ついでに僕はその年に
一応、予備校から地元の大学に入ったんですね。
それで大学に入ってからも
継続してバイトをすることになったんです。
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イズミ |
柳井会長って、当時からお店には
ちょくちょく来られてたんですか?
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植木 |
週に1回は必ずいらっしゃってましたね。
|
イズミ |
柳井会長はお店に
どんな事をされに来てたんですか?
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植木 |
とにかく商売を自分でやりたい人なんで、
週に1回、現場をきちっと自分の目で確認して、
お客さまの売れ筋、売れ具合、
何を触られてるかってのを
全部自分で確認してました。
ですから、ディスプレイひとつも自分で直される、
気に入らなければ。もちろん声出しもする。
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イズミ |
「いらっしゃいませ〜」
とか、
「ありがとうございま〜す、
どうぞまたお越しくださいませ」
っていう声出しですか?
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植木 |
もちろん。
だから、本当にそういう意味では、経営者が、
当然1店舗しかないですから、
小郡商事のОSショップっていうのは、
宇部の方に何店舗かあったんですけど、
ユニクロとしては1店舗しか
なかったんで、それは本当に気合いを入れて。
それは柳井会長だけでなく、
各MDも必ず週に1回は店舗を訪問して、
自分が買ってきたものが
売れているかどうかっていう確認は
当然してましたね。
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イズミ |
直接は聞いてないんですけど、会長が
お店が唯一のプロフィットセンターという言い方を
よくされるじゃないですか。
やっぱりそういうのが大事にされてるのかなぁ、
接客とかされてたんですか?
|
植木 |
されてたでしょうね、当然。僕がイメージ残っているのはね、
やっぱり店を全部チェックして、
店長とふたりで店の前に立って、
ちょっと離れて店を見てる。
かならずそれをやってましたね。
今も店舗応援に毎週行ってるんですけど、
やっぱり必ず店を外に出て見ますよね。
これってお客さまが入ろうとするのは
玄関から入ってくるわけなんで、
そこの印象ってすごく大事だってことですね。
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イズミ |
6月2日にユニクロが出来て、
すぐバイトを始めたんですよね。
どんな感じだったんですか?
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植木 |
とにかくめちゃくちゃ面白かった。
今考えてもバカだと思いますが
働いている時間は受験勉強しなくていいわけだし、
楽しい上にお金まで貰えるって事ですからね。
でもね、根本的な原因ってのは
やっぱりあるんですよ、本人の中では。
要は最初、とにかく何も教えてもらえない中で、
店に入りきれないお客さまが山のように来てて、
とにかく声出しをして。
それはそうでしょ。何もできない人は声出しか
商品整理くらいしかないわけですよ。
一生懸命、見様見まねで
「いらっしゃいませ!」をやってたんですね。
1週間位そうやっていると、
僕がバイトだったっていうのに
気がついたっていうことを
皆さんがおっしゃってくれたわけです。
そんなこともあって
僕は今でも、声出しには自信がありますよ。 |
イズミ |
それまで皆さんは
なんだと思っていたんですか?
|
植木 |
オープン当時は猫の手も借りたい状況だったので
メーカー応援っていうのがみんな来てたんですよ。
要はシャツのメーカー、パンツのメーカー、
みんな、担当の方が代りばんこで応援に来ていた。
で、ずーっとそうだと思っていたと。
ある日、僕がアルバイトだとわかって、
みんながね、
「おまえアルバイトだったのか。」と
とてもそうは見えなかった、
とおっしゃっていただいて。
それが本当にうれしくてね。
なんかそれって
すごく自分が評価されたのかなって、
勘違いをしちゃってね。
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イズミ |
あ、勘違いなんですか?
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植木 |
ええ。だからすごく楽しくなっちゃって。
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イズミ |
大事ですよ、勘違いも。
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植木 |
で、だんだんやってると、
3ヶ月経った時に
時給600円に上げてくれたんですよ、店長が。
これがまた弾みになっちゃって。
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イズミ |
もう俺はそうとうここのお店に期待されている、
俺はいなくちゃいけない人間だ、と。
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植木 |
なんていうのかな、
評価されたってのがすごくうれしかった。
|
イズミ |
学校の成績以外のところで、初めて社会人として
認められたっていう、
そんな感じのうれしさっていうのが
あったんでしょうね、きっと。
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植木 |
まさにそうですよ。
初めて自分がお金儲けしたのが、
ユニクロのアルバイトで、
その時に短期間で評価してくださったって
いう方がいらっしゃった、
ということですよね。
それが僕の会社で商売することの原点ですよね。
そうなると人間、弾みがついてくるんですよ。
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イズミ |
オープンの時から
お客さまはすごく多かったんですか?
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植木 |
ものすごく多かったです。
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イズミ |
ああ、それはなぜですかね?
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植木 |
広島にはああいう広告を打ったり、
ああいう店舗形態のお店も無かったですよ。
あれだけのボリュームの商品を
バーンとエレクターで並べて、
とにかくお客さん自由に買ってください
という店ですから
当時、老舗のお店でも、
接客ありきだったんですね。
「自分で勝手に選んでください」
というスタイルですし。
でも、スーパーじゃないんですよ。
売りたいものがハッキリ出ている。
スーパーみたいに、
行ってどっか探そうみたいなのじゃなくて、
その時々に主張が出てきますよね。
レイアウトによって、
それがハッキリお客さんにも伝わったんですよね。
|
イズミ |
そうですね。売り場みただけで
今、ユニクロが何を売ろうとしてて、
「あ、チラシにこれが入っているんだな」とか、
金曜日の売り場を見ると
「明日のチラシの限定ってここだろうな」
っていうのが、だいたいわかりますよね。
|
植木 |
袋町のお店は面白かった。
隣に某大手スーパーがあるんですよ。
食料品売り場がある
地下に昼飯を行くじゃないですか。
そこは沢山の人でにぎわっているんだけど
衣料品売り場に行くと
全然、人が入ってないんですよ。
僕なんか親が小売りしてたんで
そういう大手スーパーに
どんどんお客さま取られて、もう商売として
成り立たなくなったのが、印象にあったんですね。
だけどその大手スーパーの隣にある
僕が働いてるお店ってのは、
お客さまがたくさん来てくれて、
そのスーパーは本当に閑古鳥が鳴いていた。
当時、いっつも食料品売り場に行っちゃあ、
帰りに衣料品売り場を見てました。
|
イズミ |
よっしゃぁ、勝った〜、とか言って?
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植木 |
勝ったというかね、なんでお客さまいないんだろうなぁ、
って思いながら。
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イズミ |
その時の植木さんって
一(いち)バイトですよね。 |
植木 |
そうですね。
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イズミ |
一バイトがそこまで意識を持てるかっていうと、
他の職種のバイトが
そこまで考えるかなぁって思うんですね。
もう、ファミリーのようにユニクロを考えている
一バイト植木さんがいたわけですよね。
当時からファミリーみたいな
感じだったんですかね? |
植木 |
あのね、
やっぱりファミリーにしてくれたのは
森田さんですね。
僕は柳井会長はこれだけ大成功されて、
当然大尊敬してますけど、
やっぱり森田さんって店長が、
僕にとっては彼が素晴らしい店長だった。
とにかく面倒見のいい人で、
スタッフを絶対に突き放さないというか、
見捨てないというか。
当時(18年前)に
女性スタッフの大半は茶髪ですから。 |
植木 |
当時の森田さんは、
チェーン展開もまだしてない時期だったから
1店舗で勝負しなきゃ行けない。
1店舗で結果を出さない限り、
会社がこれからどうなっていくかっていうのは、
そこの結果が出ない限り、
次の展開はあり得ないので
やっぱり本当に、命懸けて仕事してたし…。
で、森田さんはね、命懸けて仕事をしすぎて、
体を壊してしまったのね。
生死の境をさまよったようなことも
あったみたいで。
それで袋町の店長を降りたんですけどね。
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イズミ |
で、今、カスタマーセンターで。
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植木 |
めっちゃ、がんばってますねぇ。
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イズミ |
今、森田さんっておいくつなんですか?
|
植木 |
45ぐらいかな。
|
イズミ |
45歳なんですか〜。
この前もトラックストアに来た
お母様なんですけど、
自分の子供が就職するんだけど、
今、どこの資料請求とかしても、
どんな人事の人と会っても
ハートがある人に出会えない、っていう。
で、ホームページとか見させてもらったんだけど、
すごいハートがある会社ですね、って
言っていただいたんですね。
けど、その頃ってもっとすごかったですね。 |
植木 |
う〜ん、すごいね、そういう意味では。
|
イズミ |
ハートに満ちあふれていた。
|
植木 |
今、思えばまさにそうですね。ただ当時はね、
それが当り前でやってたんですよ
別にね、これが森田さんって
すっごい迫力のある人でもなんでもないのよ。
当時、森田さんは26、7才くらいで
まだ、若いんですよね。
年齢的には今のうちの店長くらいですよ。
だけど、今のうちの26、7才の店長とは
当時から彼はもう、全然違ってたね。
ホントに風格があったし、
すごく痩せている人なんだけど
やっぱり店長らしかったですよ。
だから柳井会長は森田さんを一号店の店長に
抜擢したんだと思うんですよね。
|
イズミ |
なんなんですかね、
そのみんなを引きつける力ってのはね。
この人のためにやりたいって感じなんですか? |
植木 |
ええ。そんな感じです。
|
イズミ |
店長がお客さまのことを
本気で考えているから、
ってことかなぁ。
|
植木 |
まあ、お客さまの事も然りだけど自分たちのことを
本当に考えてくれているっていうのが、
やっぱり一緒に仕事しているからわかるんですね。
|
イズミ |
なんか自分の損得じゃないなぁ、
って感じなんでしょうね。
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植木 |
やっぱり印象深かったのは
岡山に新店をオープンさせた時だなぁ。
これは面白かった。
これは究極のアルバイトをさせられましたよ。
|
イズミ |
なんですか?
その究極のアルバイトって。
|
植木 |
確か次の年の夏休みだったと思います。
岡山で2店舗同時にオープンさせたんです。
準備もすごく大変だったと思いますが
しかし、バイトの私がいうのは生意気ですが
皆さん無理された分、
ある意味自信になったのでは
ないでしょうか?
|
イズミ |
やっぱり、無理しないとダメなんですかね。
|
植木 |
絶対そうですよ。
一店舗オープンすることは出来るとは思うけど
二店舗同じ日にオープンさせる。
この二店舗は10キロくらい離れているんだけど
岡山で初めての店を出すことでもあったし。
郊外の駐車場のある一店舗と
商店街のど真ん中にさらに一店舗。
これを夏の熱い時期に
同時オープンさせたわけですね。
この時はみんな死ぬ気でオープンさせましたよね。
|
イズミ |
多分、出来ることで想像しちゃ、
ダメなんでしょうね。
だって無理じゃないですか?
10キロも移動距離がある中で
2店舗を同時オープンさせることなんて。
|
植木 |
当時はそんなに沢山の人がいる
会社じゃなかったしね。
だからぼくみたいなアルバイターが
広島から電車に乗って応援に行ったと。
もちろん宿泊費も何も無しですよ。
みんなでアパートに雑魚寝して。
朝から晩まで働きましたよ。
ようやく前日を迎えて
朝の6時オープンなんですけど
その日はもう、帰って寝る暇もないわけですよ。
そしたら朝の4時半くらいかなぁ。
パンと牛乳が届けられて
「良かった、
朝飯にこれを食って頑張るぞ!」
ってことだと思って喜んでいたら
「これ、お客さまに配って来い」と。(笑)
これはお客さまのものであって
お前らのものじゃないと(爆笑)
|
イズミ |
そりゃ、勘違いしますよね。
|
植木 |
いや、確かに量は多いなとは思ったんだけどね。
まず、食えってことかと思ったら
まず、配れってことだったということでね。
でも、朝5時くらいから
何百人も並んでくださっていたから。
配りましたよ。
で、気づいたらパンと牛乳を渡すと
列から抜けて行く人がいるわけですよ。 |
イズミ |
ああ、パンと牛乳をもらったら
満足したんですかね。
|
植木 |
それだったらいいんだけど、
これがまた、列に並ぶんだよ。(笑)
それでも配りましたけどね。
|
イズミ |
パンと牛乳って
服とかけ離れすぎて意外すぎて
思いつかないですよね。
普通、プレミアム商品を
配りたがるじゃないですか?
これはどなたのアイデアなんですか?
|
植木 |
それは柳井会長じゃないかなぁ。
で、朝の6時に店を開けて
夜の12時に店を閉めるという。
|
イズミ |
セブンイレブンに対抗してってやつですね。
|
植木 |
当時はセブンイレブンなんて
田舎には無かったからねえ。 |
イズミ |
だいたい、10時に店は開くもんでしょうから。
|
植木 |
そうだねえ。あと、
社員旅行に連れていってもらったり、
柳井会長と一緒に映画を見たのは
よく覚えてるなぁ。
|
イズミ |
そんなことがあったんですか?
|
植木 |
後、ボーナスももらってましたよ。
|
イズミ |
アルバイトなのに。
|
植木 |
ええ。お年玉ももらったし。
当時は正月から営業している店って
少なくとも広島にはほとんど無くてね。
正月から開店するって事で
社長自らスタッフにお年玉下さってましたね。
私は1回に2つも頂いた記憶がありますよ。
そういう意味で恵まれていたなぁ。
これを楽しいと言わずして
何を楽しいというかって感じだった。
合コンの帰りも
必ず店の前を通って電気がついていたら
店長が仕事している証拠なので手伝ったりして。
|
イズミ |
じゃ、植木さんから見て
SKIPってどう思います?
|
植木 |
ぼくはフーズはねえ、
やればやるほど伸びる会社だなというのは
思ってますよ。
だけど、今のままでできるかというと
そうじゃなくて
どっかでねえ、こう
恥のかきすてっていうじゃないですか
あの、かきすてじゃなくて
恥って絶対無駄にならないと思ってるんですよ。
ぼくは店舗で訴求するときも
お客さまに笑われるまで訴求する。
|
イズミ |
あははっ。
どんな風に笑われるんですか?
|
植木 |
やっぱりね、やっている姿っていうのは見てね
滑稽に見えるんです。
わかりやすく言うと
バナナの叩き売りと同じですかね。
だからそう思ってくれたら
もう、ぼくは自分の勝ちだと。
やっぱり、それ印象づくじゃないですか。
|
イズミ |
実際には、これどうやって
お客さまに訴求するんですか?
|
植木 |
今、店舗ではパンツの3本セールだったでしょ。
神戸三宮店だと
近くの人にやかましくなく遠くまでとおる声で
「ただいまユニクロでは
パンツの3本セールを開催しております。
男性物女性物、お好きな組み合わせで
3本お選びいただきますと
6990円と大変お買い得となっております。
どうぞ、この機会に
ご家族、お友達とご利用くださいませ。
尚、男性ものは地下一階、
女性ものは2階のフロアとなっております。
本日はご来店いただきまして
ありがとうございます。」
と、こういうことばを
コーナーを巡りながら
ずーっと訴求していくんです。
こう、訴求と接客って違うんです。
|
イズミ |
ええ、違いますね。
|
植木 |
そこは訴求しながら
お客さまが来たら接客するわけで、
だけど、あれだけ広い店で
大量にお客さまが入ってきた時に
どこで何を売っているか、
それがいくらなのか?
っていうことは
まず、どこがってことが最優先なんですよ。
|
イズミ |
なるほど。
|
植木 |
お客さまはチラシを見てるんですよ。
で、今日、これ買いたいなと思っているんだけど
それって大体、限定商品に限られているんですね。
どこに何がってことを教えて上げることによって
お客さまとして買いたいものを意識して
そこの売り場に到着できる。
ぼくに言わせたら、それが訴求なんですね。
で、そこに担当者がいたら
ここで接客が成立して
もし、お客さまが質問してくださったら
接客すればいいと。
だから、必ず訴求する人は
お店の中に一人、
もしくはフロアに一人いなければならない。
それが無い店っていうのは
ものすごーく、寂しい店に。
つまり、お客さまはいるけど、
活気の無い店にみえてしまう。
忙しい時ってのは
そういう行為をしている人がいれば
防犯対策にもなるわけですよ。
ぐるっと、巡って来ているから
いつどこで声をかけられるかもわからない。
多分、万引きなんかもね、
非常にしづらい状態に
店がなっていくのかなぁっていう。
|
イズミ |
それで、トラックストアの時に
「ワイワイ騒いで」声を出して
接客しているのをユニクロのお店の人が見て
うらやましいと思ったんでしょうね。 |
植木 |
そう、そういうところがあるでしょうね。
|
イズミ |
ホントはああいうことをやりたいんだけど
それもマニュアルに無いんですよね。
だからやっても問題ないんですけど、
もしかして、やって怒られるのがやだな、
とういうのが多分あると思うんですよ。
やってお客さまから
クレームが来たらいやだなとか、
そういうのが凄くあるかなぁって気はしますね。
|
植木 |
それは今のSKIPが?
|
イズミ |
SKIPだけでなく、
ユニクロもそういうところが
あるんじゃないかなぁと。
|
植木 |
ああ、なるほどね。
|
イズミ |
変な意味で「尻尾」を出さないようにしようと
するとつまんなくなっちゃう。
|
植木 |
ガンガン、ぼくはそういうことをやろうと思っています。
訴求しないと
やっぱり物って売れないです。
それを教えてくれたのが
柳井会長であって、森田さんであって。
彼らが訴求してたわけじゃないんですよ。
自分で「こうすれば売れる」と思ってやったことを
彼らはそれを正しいことである
という風に当時は認めてたという
何も、言わないっていうかね。
|
イズミ |
じゃ、そろそろ最後の質問に行きます。
さっきもちらっと言ってたんですけど
今のままじゃSKIPはどうかな?
ってことがあったじゃないですか。
ユニクロの立ち上げから見てこられて
外から見てて具体的に
「SKIPこうしたらいいんじゃないか?」
「こうしたら、もっと良くなるんじゃないか?」
ってことがあったら教えてもらいたいんですけど。
|
植木 |
具体的に言うのって難しいんですけどじゃ、
ぼくが野菜を売れるのか?
っていうとそうでも無いと思うし。
|
イズミ |
でも知らないから解るとか
見えることがあるような気がするんです。
SKIPから伝えるべきことが
圧倒的に不足していると思うんです。
これはお客さまにとっても
社員の方に関しても、
店舗の方に関しても。
まず、それをなんとかしないといけないなぁと
思っているんですけど。
|
植木 |
うん。
SKIPでもユニクロでもそうだと思うんですけど
やっぱり、サービス精神があるか
どうかだと思いますよ。
ぼくはユニクロっていうブランドの
自分なりに思ってる商売っていうもの、
つまり、ホントに商売気があって最高のサービスで
お客さまに物を売ろうという姿勢と、
今のSKIPはちょっと違うと思う。
|
イズミ |
商売気ってわかるような気がします。
それは自分もひしひしと感じている部分なので。
言いたいことはこんな事だろうな
ってことはもやもやとしてるんです。
|
植木 |
うん。
やっぱり全員が店に立てる集団って
ことじゃないかなぁ。
ホント、お客さまと向き合える集団ということに
なれるかどうかだと思うよね。
今くらいの小さい規模で始めてるわけだから
「私は何係です」っていう会社になっちゃ
いけないかなぁっていう気がしますね。
|
イズミ |
当然、皆、得意、不得意があって
WEBをやってたりとか
マーケティングをやってたりとか
物流をやっていたりするんでしょうけど
やっぱり商売がすごく好きじゃないと
ダメなんでしょうね。
お客さまと接したり
物が売れる、買っていただくってことに
凄い喜びを感じる人じゃないと。
それが前提にあって
各部署ってことがあるんだと思います。
そうじゃないと弱いんじゃないかと
思ってるんですね。
|
植木 |
この間、柳井会長とちょっと
SKIPの話をしましたよ。
「ちょっと商売気が足りないですね」って。
ホンの一言ですけどね。
|
イズミ |
うん。小さい組織なんですけど
各担当の枠の中で考えがちなんです。
もちろん、各担当の中で信じられないくらいの
仕事をこなしてはいるんですけど。
ただ、各担当の人が店頭にでてくると
意外に、おもしろい発見がたくさんある。
いい気づきをするんですよ。
|
植木 |
だから、ぼくは一日も早くリアル店舗を出すのが
一番効果的だと思いますよ。
ホントに店として機能しようとすると
みんな、きちっと出来て当たり前で。
それを一通りみんなやってみないと
前に進まないのかなぁって気はしますけどね。
|
イズミ |
たかだか、トラックストアなんですけど
多分、これってみんなやった方が
いいんじゃないかなと思ったことが以前
あったんですよ。
今はリアル店舗が無いけど
トラックストアでも充分その役割は
果たせるんじゃないかと。
|
植木 |
ホントにそうですよ。ああやってお客さまに
ホントに売ってみてということを
繰り返さないと。
|
イズミ |
トラックストアをやってて
商売ってホント難しいなぁって
物ってホント売れないなぁって
痛いくらいに思いました
「こうやってみたいなぁ」ってことがどんどん
フィードバックしていくというような
ことができるといいと思いましたし。
|
植木 |
ぼくもSKIPのお店が出来たら
働いてみたいね。(笑) |
イズミ |
ダメって言っても来るんでしょうね。
でも、なんか一緒に店舗で働いている
イメージが湧きますよね。
絶対、オープンの時とか来てくれるんだろうな。
|
植木 |
もちろんですよ。(笑)
|