その6
マンガの世界が変わってきた。
マンガの世界が変わってきた。
── | 「田亀源五郎先生」『弟の夫』 「山田参助先生」『あれよ星屑』 というメモがありますが、これはなんですか? |
つねさん |
ゲイの世界の漫画家が、 一般誌に描くようになったんだよ。 |
ジョージ |
ゲイであることを一切触れずに漫画家になって、 著名になられた方はいらっしゃるけれど、 もう最初からゲイとして描いている方々なの。 サブカルで始まって、その サブカルがグィーンと上に上がっちゃった。 裏ッ側が表ッ側に出るようなことなの。 本当は出ちゃいけないんだもんね。 でも今、テレビ見てたら、 出ちゃいけない人ばっかりじゃない? そういう時代のマンガなの。 |
── | 位置としては、どういう人なんですか? |
ジョージ |
田亀源五郎先生っていうのは、 もともと、どういうのかな、 うーん‥‥、ゲイの浮世絵と思えばいいです。 あ、ここはリンクは張らないでね、 ご自分でお調べになって。すごいから。 |
つねさん |
SMなの。 |
── | はぁ。 |
ジョージ |
とても古典的な、日本の春画を使って、 マンガを作った人。 そのカテゴリーはね、素晴らしかった。 |
── | (検索して)ああ‥‥なるほど‥‥はいはい。 これは、もう本当の本物ですね。 |
ジョージ |
この人が賢かったのは、 海外に出て行ったの。 海外には、ものすごいお金持ちがいて、 こういうのをコレクションしてる人がいるの。 |
── | アートとして。 |
ジョージ |
そう、ゲイアートであって、ゲイコミックではない。 そんなふうにアートの世界に突きぬけた。 アートになってしまったから、 どこにでも降りることができるのね。 |
── | なるほど。 で、山田参助さんというのは。 |
ジョージ |
絵がとてもうまい人。 |
つねさん |
山田さんは、西原理恵子さんが推したんですよ。 「絵がうまい、絵がうまい」って、 ずっと書いてました。 |
── | 純サブカル畑だ。 |
ジョージ |
サブカル中のサブカルが、 サブカルに引き上げられたってやつ。 田亀さんがゲイ浮世絵だとすると、 山田参助さんはゲイの鳥獣戯画だね。 |
つねさん |
あぁ! |
── | なるほど。 |
ジョージ |
その筆の走りといい。 うまい。すごくうまいと思う。 |
── | (検索して)いい絵だなぁ。 |
つねさん |
すっごい細い子なの。 |
── | その情報は不要かと。 |
つねさん |
音楽をやっていたりもするし、 画業でも 田中小実昌さんの文庫本の表紙を 描いたりもしてる。 |
── | おお。八面六臂。 |
ジョージ |
不思議なのが、昔はだいたい有名になってから カミングアウトなんだよね。 カミングアウトって、そうじゃん? |
つねさん |
うんうん。 |
ジョージ |
ティム・クックだって、もう行く所まで行って カミングアウトだけど、 この人たちは、カミングアウトする必要がなく、 ゲイだっていうことを自然に自然にやって、上に上がる。 この人たちは新しい。 いっぽう、芸能界で、 最初からゲイであるということを 売り物にして出ていく人たちがいるよね。 存在そのものを売る、 その頂点がマツコ・デラックス。 そこの後ろにはIKKOがいて、KABA.ちゃんがいて、 クリス松村がいて、ミッツがいて、 有象無象がクシャクシャクシャーってあって、 その中の光輝く巨星がマツコ。 でも、この人がいるから、この後ろは なかなか前に出られないわよね。 みんな「代わりがきかない」って 思ってるかもしれないけど そんなことはないのよ。 ブロードウェイでよく言われるのが、 「ブロードウェイの舞台なんて、 ニューヨークの地下鉄と同じで、 あなたが座っていても、 立ち上がった途端に誰かが座るのよ。 だから落とし物をしようが何しようが、 目的地に行くまでは絶対座ってなさい」っていう。 そんなもんだよ。 |
── | 「こうだったら、世界はまた少し変わるのに」 って思うことはありますか。 |
ジョージ |
そりゃさっき話した、ロシアよ。プーチンが、 ロシアを世界で一番のゲイフレンドリーカントリーに するって宣伝してくれたら、ずいぶん変わるわよ。 だからアメリカは賢いなぁと思うの。 同性愛婚もとりあえずいろんな州で認めるでしょ? 宗教的な問題でいろいろあるけれど、 ボクも友達、知り合い、 向こうで結婚したもんね。 日本人だけど、彼氏がアメリカ人なんで、 |
── | 日本では認められてないけれど。 |
ジョージ |
でも彼はグリーンカードを持ってるんで、 アメリカに行けば法律的には夫婦なんだよ。 だから全部収入の申告もアメリカで始めた。 税金の控除がいろいろあるので、夫婦としての。 |
── | 中国はどうなんですか? |
ジョージ |
中国、「そういう人はいない」ことになってます。 |
つねさん |
いっぱいいるけどね(笑)。 |
ジョージ |
いないことになってます! |
── | えぇと、いるんですよね、当然ね。 |
ジョージ |
いるんです。いるんですけど、 うちの国にはそういう問題はないってことに なってるんですね。 別にあそこは民族紛争問題もないことになってるし、 貧富の差もないことになってるし。 だから性的なもろもろもないことになってる。 なぜかというと、みんな同じであるということが前提の 共産主義なので、 違った人がいてもらっては困るわけですよ。 |
── | 『さらば、わが愛 覇王別姫』っていうのが、 それがNGですよっていう映画でしたよね。 |
つねさん |
あぁ、そうだね。 |
ジョージ |
あれは結局許されない映画だったね‥‥。 男同士が愛し合うシーンそのものがNGなんで、 一応女として演じることによって、 女が乗り移ってしまったということにしてね。 |
── | この前、ちょっとお2人とたまたま フーターズ(HOOTERS)に行って。 |
つねさん |
なんでこの3人で行くのかが謎なんだけど(笑)。 |
── | で、なんでジョージさんが、 そんなにフーターズが好きなんだろう? って。 要は、健康的なキャバクラみたいなものじゃないですか? なのに、すっげぇ騒いでるの。 |
つねさん |
キャーキャー言ってね(笑)。 |
── | 女の子が来ると、キャーキャー言ってる。 最初は意味わかんなかった。 「みなさんは、ゲイだよな」と思いながら。 で、「ゲイのカルチャーになんでこれがあるんだろう?」 と思って。そうしたら、理由が1つだけ 明解にわかってきて。 あそこ、ダンスタイムみたいなやつがあるんですよ。 キャーッ! って踊ってくれたりなんかする。 その時、隣のテーブルでそれが起きた。 そしたらジョージさん、隣の席まで 踊りに行っちゃったんですよ。 「盛り上がってるわ、混ぜて! キャーッ!」って チアリーダーみたいなところに混ざっていって、 「お客様!」って怒られて。 |
ジョージ |
そうなの。シュン‥‥。 |
── | そこで、ハァーッ! と。 「この人は、自分もああいうふうに チアリーティングがしたいんだ」って(笑)。 |
ジョージ |
そう、ボクはこっちにいるんじゃなくて、 あっちにいるわけよ! おわかり? |
── | 「あっち」って言われても、 外見はおっさんですよ! |
つねさん |
でも、終わったらハイタッチ! |
ジョージ |
わかった? |
── | はい。 ジョージさんが、 ラカージュ・オ・フォールみたいな店を経営したら、 ものすごいでしょうね。 |
ジョージ |
あぁ、いいかもしれない! ボク、2015年はゲイゲイしく生きる! |
つねさん |
あ、そう? |
ジョージ |
体をきっちりする! |
つねさん |
何年か前にも言ってたよね(笑)。 |
ジョージ |
うるさいなぁ、本当に。 |
(さあ次回で最終回。おたのしみに!) | |
2015-01-06-TUE |