その7
生活することが楽しいの。
生活することが楽しいの。
── | ところで、この年末年始はどう過ごされるんですか? |
ジョージ |
え? |
── | 年末年始はどう過ごされるんですか。 |
ジョージ |
整理! つねさんの荷物が多くて多くて、 どうにもならないの。だから捨てさせないと。 |
── | (笑)旅行とかじゃないんですね。 以前はほら、ニューヨークでマンダリンオリエンタルの スイートルームに泊まって‥‥みたいな感じだったのに。 |
つねさん |
だって‥‥。 |
── | いまの楽しみは「生活を作る」ってことですか。 |
つねさん |
それだ! |
ジョージ |
そう、生活って、おもしろい遊びよね! |
つねさん |
ボク、ありがたいんですよ、本当に。 「明日片付けろ」って言いたい人なのに、 あたたかく、一応、見てくれてる。 |
ジョージ |
あたたかく、だから、そうして、 お片づけも、遊びにするの。 もちろん最高のソリューションとしては 全部捨てるってことよね。 ぜーんぶまるごと、この人ごと! |
つねさん |
俺ごとか(笑)。 |
ジョージ |
だけど、どういうのかな、もう面倒くさいのよ。 捨てたとして、1から始めるのが面倒くさい。 こんなでも、思い出があるんで、捨てられないじゃない? |
── | もうただのモノとしておっしゃってる(笑)。 |
ジョージ |
で、この人が持ってきたものも、 たぶんそれだと思うから、 捨てられないわけさ。 それ付きのこれが引っ越してきた、と思うと。 |
── | 整理するしかないと。 |
ジョージ |
そう。 |
── | うちもそうですよ、やっぱり。 それ、いろんな家庭に本当はあるんでしょうね。 |
ジョージ |
あると思う。ずっとね、自分がゲイであることによって、 いろんなものから自由で、 どこにでも行けるって思っていたけど、 もう50過ぎたじゃない? そうすると、どこにでも行けるかもしれないけど、 行くよりもここにいることのほうが たぶん楽しくて幸せだろうと思うのが 結婚なんだなと思ってね。 まぁ結婚したわけではないけど、 たぶんこれから結婚生活をするような感じ。 |
── | 結婚。同性婚の話題も出ましたが、 もうちょっと聞かせてもらってもいいですか。 |
つねさん |
ちょうど女性芸能人初の同性婚が 話題になってるし。 |
ジョージ |
あのニュースを見て思ったけど、 「結婚とは一体どういうことなのか」を 真剣に考えるキッカケになるんじゃないかしら。 実際、日本のように戸籍を共にするコトが 結婚と考えるということそのものが不自然、 って考えるべきなのかも。 |
── | ははあ。 |
ジョージ |
例えばアメリカなんて戸籍そのものが曖昧でしょう? フランスなんかでも事実婚でよしとする人たちが 増えていたりもする。 一緒に生活をする、 夫婦同然の気持ちで生きていて、 普通の状況において、 婚姻関係を結んでいるかどうかということは あまり意識をしていないものでしょう? もちろん子供がいれば、 子供のために結婚というコトもある。 でも2人が健康であれば 別に夫婦でなくとも問題はそれほどない。 |
── | そうですよね、健康であれば、ですが。 |
ジョージ |
でも! どちらかにもしものことが起こったら? 残されたパートナーは一体どうなるんだろう‥‥、 って心配で仕方なくなってきたの。 つねさんなんか見てると、 ボクがいなくなったら生きていけるのかしら‥‥、 ってもう今から不安でしょうがないのよ。 法的に結婚していれば、 ボクの財産とかさまざまな権利を 引き継いでもらうことができるだろうけど、 でもただのパートナーではそうもいかないのよね。 遺言を残してボクの持てるものを 引き継いでもらうことはできる。 でも税金などの面で不利を伴う。 くやしい。 だから、公証人役場に2人で出向いて、 公正証書を作ってもらえば良い話なのよね。 ボクは結婚の必要性をあまり考えないけど、 でも、夫婦としての権利は どこかで守ってほしいという気持ちは、あるなあ‥‥。 |
── | はい。 |
ジョージ |
そしてもう一つ! 日本において結婚って、 やっぱり家と家とのつながりの中で出来上がるモノよね。 家族にカミング・アウトしているボクではあるけれど、 両親に結婚しますと宣言することには やっぱりいささかの戸惑いがあるの。 それはカミングアウトというモノに対して 発揮したエネルギーの、 おそらく数倍のエネルギーを 双方に強いるものであることが容易に予想されるから。 しかも、つねさんはカミングアウトしているわけでなく、 ボクたちの結婚は、 つねさんの両親にとっては 青天の霹靂になっちゃうのよね。 結婚という事柄が、 あくまで当事者同士のみにで行われるものであれば、 ボクは今すぐにでも結婚式を挙げたくある。 でもそれはただのおままごとですものね。 |
── | 聞いていてせつなくなってきましたよ‥‥。 |
ジョージ |
(笑)だからボクがまだ仕事をしなくてはいけない 立場の間は、おそらく結婚は考えない! ボクとつねさんの関係が完全に自立した、 誰にも迷惑をかけない状況になるなったら別よ? でもおそらくそれって 互いが還暦をはるかに超え、 「おじいちゃん」って呼ばれる年齢になったときよね。 それでも2人で互いのことを いたわり合う気持ちが残っていれば、 そのご褒美として 結婚を考えることになるんじゃないかしらね‥‥。 悪くないでしょう? いつか、結婚できることを夢見て、 共の人生を送る生き様。 うん、悪くないわよ! |
つねさん |
‥‥。 |
ジョージ |
うちの家の近所で、たまに見かけるんだけど、 男2人が子どもを抱いて歩いてるの。 外国人。 一瞬ね、びっくりしちゃうのよ、 こんなボクですら! きっと養子縁組なんだなぁと思って。 |
── | 転勤かなんかで。日本で珍しいですね。 |
ジョージ |
でも、これから出るんじゃないかなぁと思う。 現状は無理だけどね。 |
── | ジョージさんにとって、 ちょっと好きな感じの人って、いま、誰ですか。 |
ジョージ |
うーん‥‥? ないわー。 だって、満たされてるんですもの。 |
つねさん |
おれもー(笑)。 |
── | 今、ジョージさんの顔が ポッと赤いのが、うっとうしいですね(笑)。 |
ジョージ |
違う! これ、違う! これ、更年期障害だから(笑)! ホットフラッシュってやつ! |
── | ありがとうございました。 またぜひよろしくおねがいします。 |
ジョージ |
こちらこそ! |
つねさん |
ばいちゃ! |
ジョージ |
古っ! |
(おわります! どうもありがとうございました。 またの登場をおたのしみにー!) |
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2015-01-07-WED |