ノリスケ |
キーウエストなんかに
ゲイリゾートがあるじゃない。
ああいうのはどう?
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ジョージ |
僕はあんまり好きじゃないなあ。
ゲイっていうのは、ゲイだけになると
無防備になっちゃうでしょ?
で、ゲイある前に人間であるはずなのに、
ゲイだけになると人間の常識をかなぐり捨てて
甘えだしたりとかするの、よくね。
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ツネさん |
この街(2丁目)にいるときの人々もそうだよね。
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ノリスケ |
だから、僕もゲイビーチだとかさー、
相手を探すっていう目的があれば
別なんだろうけどさ、
リラックスするためにゲイ・ビーチっていうのも
何か違う気がするんだよー。
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ツネさん |
違うよね。
だってそういう人(相手を探しに来る人)いないじゃーん。
みんな遊びに来るだけでしょ?
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ジョージ |
なんか微笑ましいのは、
アメリカ人のゲイカップルで
どっから見てもゲイのカップルなんだけど、
その2人がふつーうに他のお客さんに混じって、
ふつーうにご飯とか食べてて、
でもすごく仲がよさそうで、
横にふつうの老夫婦がいて、
隣同士で会話がはじまって
にこやかに夕食が終るってすごく素敵だよね。
ハワイとかにはそれがあるんだよ。
メインランドから、ハワイに行くって
おんなじアメリカとは言え、
やっぱりきっかけが必要でしょ?
そうすると、いいホテルに泊ると、
その中の大半はリタイアして、
65、70になってはじめてハワイに来る人が大半で、
あとたぶんつきあいはじめて
2年か3年くらいたって、
記念にやってくるゲイのおねえさんたちがいて。
で、そういう人たちが何の緊張感もなく
一緒にいられてるから。
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ノリスケ |
いいなあ。
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ツネさん |
いいねえ。
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ジョージ |
ねっ。日本人のゲイのカップルも
本来そういうところに出ていかなきゃいけないの。
もっと自信を持って。
でもなかなか出ていかないよね。
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ノリスケ |
たしかにね。それできるようになりたいねえ。
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ジョージ |
だからねー、そういう意味で、
もっといい意味で
可処分所得の多さを発揮していかないと、
って思うんだ。
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ノリスケ |
うん、そうだねえ。
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ジョージ |
たとえば、昔アメリカでも
言われたことなんだけど、
アメリカのゲイマーケットっていうのは
今から20年前くらいに
脚光を浴びたことがあるのよ。
可処分所得が多いということでね。
ゲイのマーケットの特徴というのは、
まず可処分所得が多いことと、
あと新しいもの好きということ、
あと、他人が持っていない物をもちたがること、
それと、飽きっぽくって、
最盛期のサイクルが短い。
たとえば、ノンケ(ストレート)の人だったら
10年間使えてしまうものを、
平気で2年間で変えてしまう。
このマーケットを使わない手はないってことで、
いろんな新商品をゲイマーケットに向けて
出してきたの。
アブソルート・ウオッカが
ゲイマーケットに出ていったのは
ちょうどその時期だよ。
だけど、結局、2、3年してゲイマーケットは
頼りにならない、ってことで引き上げたの。
なんでかと言うと、計画性がなくて、
行き当たりばったりの消費なんで、
1人の消費者を追いかけていっても、
結局その人は消費の傾向を変えちゃうから、って。
特にゲイバンクがいっぱいできたんだけど、
ゲイバンクはみんなつぶれたの。
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ノリスケ |
ゲイバンクなんてあったの?
知らなかった。
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ジョージ |
ノンケも預金できるんだけど、
ゲイの人が預金をすると、
金利が上増しになるって銀行があったの。
これはWOMEN's BANKっていうのが一時期あって、
女性ならば金利を上げる。
その次にできたのがゲイバンク。
ゲイバンクがつぶれた後に
半分くらいがレズビアンバンクに
変わったんですよ。
レズビアンバンクはいまだに続いてる!
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ノリスケ |
なんか、それわかる気がするなあ。
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ジョージ |
わかるでしょ?
だってレズっていうのは、
夫婦になると次にすることが
養子をとって育てようってことだもの。
計画性のある方向へ入っていくんだー。
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ノリスケ |
子供だって産もうと思えば産めるしね。
ジョディ・フォスターのように。
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ジョージ |
で、ゲイはなかなかそういう風にならないって
言われてたんだけど、
5年くらい前からアメリカでは変わったの。
で、ゲイバンクがいくつかできて
これは成功してるの。
それはエイズという波にあらわれたからも
あるんだけど、ゲイも計画性を持って、
たとえばいま10万円あるから
10万円使っちゃおうじゃなくて、
10万円使えるけど、2万円残して貯金して、
1年後に24万円残して何か買おうとか、
どこか行こうとかいうふうに変わりはじめたのね。
それで面白いことにアメリカでは
ゲイ向けの衣料店って少なくなってるの。
で、ゲイもGAPを着るの。
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ノリスケ |
ほお、そうかー。
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ジョージ |
たとえば、昔ならば、
ふつうの人が15ドルのポロシャツを着てるなら、
(ゲイの人は)30ドルのポロシャツを
買ってたんだよね。
日本で言うと、ふつうの人がGAPを
着るんだったら僕はPapasよ、
みたいな世界だよね。
買えちゃうから買ってたんだよね。
でも、いまはゲイの人もふつうに
15ドルのポロシャツを買って、
ふつうの人たちは15ドルのポロシャツしか
買えないから15ドルのポロシャツ買って、
ゲイは15ドルは貯めて、
貯めて貯めて貯めて、
ふつうの人だったら、
同じ所得で100万しか貯金できないけど、
自分たちは300万貯金できた。
そしたらば、150万まとめて
ぜいたくなことしましょう、
っていうんで、ゲイ向けの旅行代理店も
アメリカではけっこう増えてるの。
彼らが扱う商品っていうのは
世界で最高級と言われているリゾートホテルの
最もいい部屋、プラス、
ファーストクラスのエアのチケット。
だから、旅行代理店にとっても
一番利率のいいところなのよ。
それを専門にやってる旅行代理店も
けっこう増えてるの。
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ノリスケ |
なるほどねー。
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ジョージ |
ユナイテッド・エアラインは去年1年間で
ファーストクラスを使った
アメリカ系のお客さんで
一番増えた層っていうのが、独身男性なの。
それは、そのデータにゲイっていうカテゴリーが
ないから「独身男性」ってことになってるけど、
まあ、おそらくゲイマーケットよね。
だから、ほんとは日本人もそっちの方に
目覚めて行かないといけないんだろうけど。
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ノリスケ |
そうなんだよねー。
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ツネさん |
でも難しいよね。
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ジョージ |
そう、難しいの。
で、いまだにPapasを買うの。
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ツネさん |
なんでPapas・・・
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ジョージ |
僕はベルサーチも買えるんだけど、
Papas!
でもほんとに、僕たちのような層が
ある一定の方向に動き出したら、
日本の経済が変わるような衝撃があるよね。
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ノリスケ |
あるよねー。
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ツネさん |
でも、ほんと、移り気じゃないけど、
みんな行く方向バラバラだから。
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ノリスケ |
日本でもゲイ・トラベルエイジェンシー
できたけど、あれはどうなの?
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ジョージ |
僕見たけど、あれはゲイパレードなんかを
見に行ったり、参加するようなツアーを
出しているところみたい。
旅行代理店っていうのではないよ。
僕らがほんとに必要としているのは、
「ゲイホテル」じゃなくて、
男性2人でも行けるところなわけで。
何がイヤって、旅行代理店で
「男性2人4泊5日でホノルルへ」
っていうと、向こうが
「お部屋は2つですか」
って聞くから、
「1つでいいんです」
って言うの、すごく、イヤじゃん。
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ツネさん |
説明するのも面倒だしね。
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ジョージ |
ゲイの人がやってるエイジェンシーなら
ハワイに男2人で行きます、って言えば、
それ以上説明する必要ないじゃない?
ベッドは2つで、当代飛行機の席は
隣にブッキングしないといけないな、とか
そういうまっとうなことをしてくれる代理店を
やればいいのに、なんか違うものになっちゃう。
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ノリスケ |
ゲイパレードに行きましょう、になるのね。
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ツネさん |
違うよねー。
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ノリスケ |
そっちじゃないだろう、って感じだよね。
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ジョージ |
やろうと思ってたんだけど、
某旅行会社に知り合いが1人いて、
やろうやろうって言ってたんだけど、
その人歯医者さんの恋人になっちゃって、
幸せいっぱいでとりあえず1年は無理だって。
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ノリスケ |
ええー、それやってよー、ぜひぜひ。
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ジョージ |
そんでねー、ゲイホテル、じゃなくて、
ゲイ好みのホテルってあるんだよね。
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ノリスケ |
あるよー。
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ジョージ |
ゲイにも2タイプの人がいて、
ものすごくシャープでクールな
コンテンポラリーの雰囲気が好きな人と、
ほんとにトラディショナルな
ゴージャスなのが好きな人がいて、
東京で言うと、椿山荘かフォーシーズンホテルが
好きか、新宿パークハイアットが好きか、
みたいに分かれてくるんだよ。
まあ、どっちも好きなんだけど、
どっちかって言えば、どっちかになる。
それに近しいホテルが世界中山ほどある。
それこそ、もしその街に住んでいて、
男の子落とそうと思ったらそのホテル、
っていうのがあるんだよー。
たとえば、ニューヨークで言えば、
ニューヨークのフォー・シーズンズ・ホテル
なんていうのはその類のホテルだし。
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ノリスケ |
今回はどこに泊るの?
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ジョージ |
フォー・シーズンズ(笑)。
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ノリスケ |
そうだと思った(笑)。
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ジョージ |
あと、「ダブリュー」っていう
新しいホテルのチェーンが
シェラトンの系列でできはじめてて、
ここは男性の社員を
そこのユニフォームが似合うかどうかで決めるの。
ユニフォーム、アルマーニなんだよ。
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ツネさん |
すごーい。
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ジョージ |
しかも、アルマーニの黒のTシャツ。ピチピチの。
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ノリスケ |
じゃあ、肉体がよくないと、ホテルマンに
なれないんだ。
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ジョージ |
それで集めたら、結果70%がゲイだったの。
で、ゲイホテルとは言ってないんだけど、
そのホテルを予約するほとんどが
ビジネスマンなんだけど、
そのほとんどのビジネスマンがゲイなの!
そこの1階に「ウイスキーブルー」っていう
ショットバーがあって、そこは扉を開けると
もうゲイバーなんだよー。
でも、みんなネクタイしてビジネスマンなの。
で、ニューヨークに住んでるビジネスマンも
やってくるし、他からもくるけど、
決してその日一晩の相手を
探しにくるんじゃないのよ。
ゲイビジネスマンが海外に行って何が淋しいって
晩飯を食う相手がいないのよ。
そうすると、ルームサービスしかないわけでしょ?
そこで、何人かがじゃあメシ食いに行こう、
って言って知らない同志が集まって、
そこの上のレストランでメシ食うの。
そうすると、そのレストランは
ゲイレストランになるの。
すっごいかっこいいの。
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ノリスケ |
なんてホテルだっけ?
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ジョージ |
ダブリュー。
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ノリスケ |
ダブリューってホテルなんだ。
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ジョージ |
そんなに高くないんだよ。
1泊、一番安い部屋で195ドルくらいで、
高いジュニアスイートで450ドルくらい。
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ツネさん |
ジュニアで!?
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ノリスケ |
ええ、安いじゃなーい。
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ツネさん |
すごくいいホテルなの。
じゃあ、東京にそういう場所があるかっていうと、
ないんだよね。
だから、ゲイの人たちっていうのは、
本来ノンケの人たちができない
ゴージャスな生活が
できるはずなのに、させてくれない。
やらないしさせてくれない。
ワシら一緒にメシを食いに行ったって
心苦しい店が多いもんね。
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ノリスケ |
あんたたち目立つからねー(笑)。
また特に(笑)。
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ジョージ |
だって「ジョージさんのお連れする相手って
いつも身体が大きい人ばっかりー」
とか言われるの(笑)。
「もうみんなよくお召し上がりになるのー。
あら、みなさんひげはやしておられるのかしら」
おいおいおいおい、みたいなね(笑)。
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ノリスケ |
あのねー、友人のゲイカップルが
ちょっと前に家買ったじゃない?
それ聞いたとき、えっ? って思ったんだけど、
今は理解できるような気がするの。
これからどんどんそうなって
いくのかもしれないね。
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ジョージ |
うん。アメリカだって税法上、
同性でも配偶者扱いになるし、
それに何より銀行ね。
日本の銀行で彼が連帯保証人になって
お金を借りることはまず無理なのよ。
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ノリスケ |
ああ、他人だからね。
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ジョージ |
法人ならばだいじょうぶなんだけど、
個人としてはダメなの。
でも、アメリカでは全然平気。
で、そういうアメリカのノウハウを持って
ぜったい日本で誰か銀行をつくるのよ。
そうすると借りられるようになる。
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ノリスケ |
そういう世の中に生きてるうちに
なって欲しいなあ。
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ジョージ |
あのー、サンフランシスコに
1970年半ばくらいからはやったのが
あそこタウンハウスが多いでしょ。
細い間口の。
そこの2軒並びの表はそのまんまにして
リビングルームとダイニングルームだけ
改築して壁を抜いて、一緒にするの。
ゲイっていうのは、
フリーランスとビジネスマンがけっこう多いの。
デザイナーとか。
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ノリスケ |
多いね。
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ジョージ |
そうすると、1階をオフィスに使って、
オフィスの部分は別で
2階のプライベートな部分は
ひと部屋っていうのがすごく多いの。
で、そういうユニットをいっぱい売ったのが、
ポークストリートだったので、
それまではゲイと言えば、カストロだったのに、
ポークストリートに移ちゃったの。
なんか、僕、アメリカゲイの歴史家みたい(笑)。
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ツネさん |
ほんと。
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ノリスケ |
ほんとにすごいよく知ってるね。
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ジョージ |
だって、昔住もうと思ってたんだもん。
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ノリスケ |
アメリカ人になろうとしたことある?
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ジョージ |
僕、グリーンカードのアプライはしたことあるよ。
で、最終の選考まで行って、
出頭すればもらえたんだろうけど、
もらわなかった。
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ノリスケ |
なんで?
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ジョージ |
もらったら日本人やめるのがわかっていたから。
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ツネさん |
だから、ある意味踏みとどまったわけね。
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ジョージ |
やっぱり日本人は日本人でしかないんだよ。
日本人が好きなアメリカ人はいるけど、
それはマイノリティーのマイノリティーの
マイノリティーなのよねえ。
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