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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

ゴージャスって何? その4
お母様、お父様

ジョージ でもさ、私たちの「ゴージャスな生き方」って
どういう生き方なんだろう?
ノリスケ 生き方としては、
裕次郎みたいなのがゴージャスよね。
でも、現実的にその生き方を目標にはしてないわ。
ツネさん モトが違うもん。
ノリスケ 僕はそこそこのものを望んでいるのよ。
ちっとも贅沢じゃないわ。
好きなときに海外旅行に行けたり……
ツネさん 好きなものが買えてね。
ノリスケ そうそうそう。
可処分所得を使いきるのよ!
誰にも残すアテはないしね。
ジョージ そしたら案外、自分が稼いだものを
誰かに引き渡そうとか思っている人は
ゴージャスな人生送れないのかもしれないわね。
自分の子供たちのことを考えたら、
たとえば、僕が一生かかって
5億円の金を稼ぐとするじゃない。
ノリスケ あらあんたそんなに稼ぐの?
ジョージ たとえ話してるのよ!
でね、その5億円の中から、
子供たちにいくら渡してやれるんだろうって
ことをお父さんだったら一生懸命考えるわけよね。
お母さんも、お父さんが稼いだお金を搾取しつつ、
その中からどれだけ可愛い息子に、
教育をほどこしてやったり、
家を残してやったりって考えるわけでしょ?
そうすると、「ゴージャス」はぜったい、ない。
小林旭にしても、美空ひばりにしても、
石原裕次郎にしても、
もう次の人間のことはどうでもいいわけよ。
「いいじゃーん。僕一人で人生終わるんだから」
って。
そうすると、一生かかって稼いだ5億円を
まるまる使って死ねるから、
その人なりの考えられるゴージャスが
できるのよね。
ノリスケ そうよねえ……
ジョージ ツネさんってさ、いまゴージャスな人生よねえ。
あとさき考えず。
「G4CUBE」が出たといえば、買ってさ。
ツネさん だって仕事で使うんだもーん。
ジョージ 「シネマ・ディスプレイ」がいいといえば、
それを買い。
ノリスケ えっ? 信じられない! 45万よ!
あんたさっき「買いたいもの買えない」って!
ジョージ ウソなのよー、それ。
しかも、今度プリンターまで買おうとしてるのよ。
ツネさん だって今度仕事で使うんだもん。
ジョージ ちょっと、どんどんこき使ってやってよ!
ノリスケ 任せといて! 働かせるわ!
でもね、ツネさん、いっぱいモノを
買ったりすればゴージャスってわけじゃないのよ。
アクセサリーぎらぎらは、
ゴージャスじゃないでしょ。
ジョージ 品格の問題よね。
たとえば街でいうと、大阪っていうのは、
世界で一番ゴージャスが似合わない街よね。
ギンギラギンではあるんだけど(笑)。
ツネさん 派手とゴージャスは違うわけでしょ?
ジョージ 違うわね。
ちょうど、おととい大阪に泊ったの。
まあ、一応いま大阪で
高級と言われているところだったの。
そのフロアは会員制で、
専用のチェックインカウンターっていうのが
あって、お茶の時間にはお茶がただで飲めて、
朝食もちゃんとあてがわれて・・・
そういうホテルのそういうフロアに泊るのは
ゴージャスかもしれないんだけど、
翌朝、チェックアウトしようと思って
そのクラブハウスに行きました。
すると、テーブルいっぱいに
パンだとか、みそ汁だとか、山盛りにして
ガツガツ食っているババアと
ババアの娘と思われる女と
そのババアの娘の子供だと思われる子がいたの!
音立ててガツガツよ!
ノリスケ 下品! 代々下品!
ジョージ それって素晴らしくゴージャスじゃないよね。
“ゴージャスな空間の
反ゴージャスな要素”っていうの?
ノリスケ ゴージャスなところへ行けば、
ゴージャスになれるかってそうじゃないのにね。
ジョージ ゴージャスなところであるが故に、
逆にゴージャスじゃなさが際立つってことは
けっこうある。
ノリスケ ワタシね、「細雪」の世界はゴージャスで
あこがれる。
ジョージ あの時代はね。
ツネさん やっぱり時代っていうのもあるのかも。
ジョージ 「細雪」ねえー。
うちの母も「細雪」の世界に
すごい憧れてたのよ。
「細雪」の中で、娘さんに母親と4人で着物を着て
写真屋さんで写真を撮ってもらうシーンがあるの。
母が冬の着物、そんで長女から
春夏秋っていうふうに、
おんなじ友禅なんだけど織りが違う、
っていうのがあったのね。
うちの母親はそれを読んで、
うちの親父と結婚し、一時期は極めたわけ。
加賀友禅にお願いして、
細雪とおんなじ絵柄のヤツを4棹作ったの。
自分が冬の着物を取り、
僕の下には2人妹がいるんだけど、
長女は春をあてがい、
次女に夏を着せて、僕に嫁さんが来たら
秋を着るように、っていうんで、僕が結婚したら
4人で写真を撮るっていうのを
すっごい心待ちにしてたの!
ノリスケ できないじゃないの。
ジョージ そうなのよ。
そんで、僕はカミングアウトしましょう、って、
母にも父にも事実を言ったのね。
ノリスケ へえー。カミングアウトしたんだー。
ジョージ そしたらよ! 親父もおふくろも第一声が
「そうじゃないかと思ってた」
って(笑)!!! でね、
しばらくしてから、母がボソッと
「まさか、あんたに着物着せるわけには
 いかないもんねえ・・・」
って言うのよおー(笑)。
そんで形見分けの話になって、妹2人呼んで、
長女には冬の着物を、次女には秋の着物を
あげることにして
「お兄ちゃんは、こういうわけなんだから、
 あんたたち2人で分けなさい」
だって(笑)。
それはそれで、なんか悲しかったわ。
ノリスケ ははははははっ
ゴージャスな話よ、それ!
ツネさん お母さんの話だったら、ほら、
あれもあるじゃない。
発表会の・・・・
ジョージ ああー。
うちの母は、
いまジャズを一生懸命がんばっていて・・・
ノリスケ ジャズの何をやっているの?
ジョージ ボーカル。
で、だいたい年に2回くらい
リサイタルをするのよ。
最初は六本木あたりの小さなライブハウス
だったんだけど、
今年はじめてシアターサンモールに
進出しまして・・・
ノリスケ なんでシアターサンモールなの?(笑)
ワハハの梅ちゃんがやるとこじゃないの!
ジョージ 僕もなんでいきなりサンモール?
って思ったんだけど、
とにかくシアターサンモールでやりまして、
それで、ワタシに切符売ってこいって言うのよ。
割当100枚! 3500円の。
ノリスケ リサイタルは1人で?
ジョージ 1人よ。リサイタルだもの。
で、自分1人じゃもたないから、
一緒にレッスンを受けている友達を連れてきて、
前座で歌わせるの。
ノリスケ 前座までつけて!(笑)
ツネさん しかも、ちゃんとお抱えのバックバンドが
いるのよ!
ノリスケ それはいったいどういう暮らしなの!?
ジョージ 問題よねえ、あの人。
でも、うちの母のふだん着なんか見たら、
ツネさんきっと心変わりしちゃうわ。
ツネさん 一度見たことあるよ。
ジョージ どこで見たっけ?
ツネさん 車に乗ってたとき。
ノリスケ 彼を、紹介はしてないの?
ツネさん 日陰の身なの(笑)!
ジョージ でも、うちの母は、僕が
こういうの(くまひげ)が好きなのは知ってるの。
ここまでデブだとは思ってないかもしれないけど、
クマさんぽいのが好きだと知ってるんで、
ハワイとか一緒に行くと、
ショッピングセンターとか歩いているとき、
クマさん系が通るたびに、
「あんた、イケルでしょ〜、
 あんた、イケルでしょ〜」
って連発するの(笑)!
もぉ!!!
ノリスケ やだ、そんなお母さん〜〜。
ジョージ 1回なんて、説教されたもん。
「あんた男が好きなのはかまわないけど、
 どうせ好きになるなら、
 あんなクマ系じゃなくて
 もっと可愛い子好きになりなさい」
って(笑)。
ノリスケ 自分の好みで言ってるのね(笑)。
ジョージ 「ワタシならこんなのがいいわ」とか言うの。
みーんなジャニ系なの。
そんで、僕が、誰かのことをいいと言うと、
「ワタシ、ヤダわ!」
って、だからあんたの好みはどうでもいいって、
って感じ(笑)。
ツネさん でも、お母さんはジョージみたいなのと
結婚してるじゃない。
毛深くって・・・・(笑)
ジョージ ああ、うちの父?
「騙された」って言ってるわよ。
ノリスケ やーん、じゃ、あたしがもらうわよ!
ジョージ お父様!!(笑)

(この回、了)

2000-10-31-TUE

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