ジョージ |
やなプレゼントってあった?
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ノリスケ |
オリジナルMDとか、や。
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つねさん |
あー、それも、
いちばんさいしょにMC付きとか?
やーっ(身悶え)。
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ジョージ |
でもねー、僕ね、消防士さんとはね、
何回も、やめるやめないやめるやめないがあって、
あー、これはもうダメだ、
って思ったきっかけが、
MDだったのよ、オリジナルの。
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つねさん |
ユーミンの?
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ジョージ |
ウン。もう別れる寸前だったの。
でね、やだなーとか思いながらも、
MDかけるわけ。入れたら、MDって、
いちばんさいしょにタイトルが
文字で表示されるでしょー?
彼が入力してるわけよ。
“今でも君を愛してる”……って!
そのとき、急に冷めた。
だめだこりゃ、って思って。
何でなんだろう? 何でなんだろう、
あれって。押しつけがましいからなのかな?
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つねさん |
あー、そうじゃないの?
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ノリスケ |
押しつけがましいよね、それは確かに。
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ジョージ |
ねぇ!……それで僕、
泣きながら粉々に砕いたもん、それ。
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ノリスケ |
あー、そこまでちゃんと
ドラマが完結してるじゃない!
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つねさん |
んごーい。
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ジョージ |
やだーっ、とか思って。
こんなの、うちのなかで……
こんなの、やだー!! って。
で、そのあとが、まだあるの。
ある日家に帰ったら、
完全に直立させたら150センチぐらいある、
クマのぬいぐるみが置いてあったの!
その子から。
んで、怖くって、捨てに行ったんだよ、すぐ。
でもぬいぐるみ捨てるのも
大人げなかったかなー、と思って、
30分くらいして、取りに行ったの。
そしたら、もういなかったの。
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ノリスケ |
誰か拾ってくれたの?
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ジョージ |
拾ってくれたんなら、いいんだけど、
もしそいつがそこにいて、
取ってったのかも知れない、
って思うぐらいに、濃密だったんだよ、
最後のほうは。
ないー? そういうふうに貰ってやだったもの。
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つねさん |
東京出てきたときに、こっちの友だちが、
「ウエルカム東京」って書いた、
オリジナルカセットテープをくれた。
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ノリスケ |
うーっ、きっつー。
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つねさん |
あとはね、手編みのセーターって、苦手かも。
なんか重いじゃん。
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ジョージ |
手編みのセーターといえば!!
編み物が大好きな子とつきあってたのよ。
Tちゃんって子なんだけど。
Tちゃんっつったって、年上だったんだよ。
で、もう、ほとんどボクのお家で
生活してたような子なんだよ。
家でずーっと編み物してたの。
どんどんどんどん編み上がってくるのよ、
クッションカバーとか、ベットカバーだとか、
どんどんどんどん……
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ノリスケ |
ベットカバーって、でかいよ。
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ジョージ |
それがね、すっごい早くて、上手なの!
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つねさん |
怖いっ。
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ジョージ |
で、それって、趣味であって、
プレゼントじゃないわけじゃん。ね?
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ノリスケ |
そらもー、違うよねー。
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ジョージ |
だけどねー、だけど、Tちゃんは
「パパ」って呼んでたの、僕のこと。
「パパの誕生日にー、Tちゃんが、
一世一代の素敵なやつ、
プレゼントしてあげるっ」
て編んでくれてたのね。
それで、年末にちょっと家に帰る、
実家に戻るから、って戻って……
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つねさん |
戻って帰ってきたら?
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ジョージ |
ちがうの。
実家で死んだの。脳梗塞で。
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ノリスケ |
ちょっと、待って……
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つねさん |
うぅわーーーきつー……
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ノリスケ |
ちょと待って、ちょと待って……
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ジョージ |
すごいでしょー?
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ノリスケ |
幾つだったの?
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ジョージ |
僕が32、3のころ、
その人が40歳ぐらいだったの。
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ノリスケ |
え、じゃ、ぜんぜん若いじゃん。
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ジョージ |
そー、それで、死んだのは、実家のほうから、
うちのTが亡くなりました、
手帳の住所録に、いちばん大きく
書いてあったので、とりあえずかけました、
って言われて。何ヶ月かたって、
ボク、お部屋の模様替えをしましょう、
まずクローゼットの中から整理しましょう、
っていろんなものを動かしてたら、
いちばん奥のほうから、紙袋がひとつ、
出てきて、見たら、
毛糸玉と編みかけのベストと編み棒が出てきて、
そのときには、もう……
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つねさん |
きつー。
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ジョージ |
ここにあったんだーーーーー、
うーーーーあったんだ、ここにーーーー!!!
僕はてっきり、Tちゃんは、実家に戻るときに、
編み物道具一式を持って帰ってると
思ってたんだよ。
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ノリスケ |
爆弾置いてったんだ、その人……
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つねさん |
時限爆弾だよ。
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ジョージ |
僕、供養したよ、それ。ほんっとに。
あんときは、驚いた。
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ノリスケ |
そうかー、死んじゃったかー(笑)。
笑っちゃいけないけど。
付き合った人が、死んだって経験ないね。
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つねさん |
僕もない。
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ジョージ |
厳しいよ、すごぉーく。
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ノリスケ |
別れた後に死んじゃった、
っていうならまだしも、
付き合ってるときに死なれたら、
ああ、考えただけでツライ。
そしたら、それはさすがに、
記念じゃないけど、
その日はずっと覚えていると思う。
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ジョージ |
僕ね、Tちゃんが死んだっていう電話もらって、
やらなきゃいいのに、何の気なしに
Tちゃんの部屋に電話かけたんだよ。
そしたら、留守番電話が入ってて、
まだそのままだった。
そのメッセージがね、
「もしもしっ、僕は、
だれも追いかけてこれないとこに、今います」
って入ってたの……。
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ノリスケ |
えっ? えっ?
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ジョージ |
前からね、なんか、
変なメッセージ入れるのが好きなひとだったの。
ちょっと、ロマンチック系の。
実家に戻るときは、いつも、
「だれも追いかけてこれないところに
僕は行ってます」
って吹き込んでたのね。
「もし、なにかメッセージがあったら、
入れて下さい、聞けたら聞きます、
聞けなかったら、ごめんなさい」
っていうのが入ってたの。
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つねさん |
怖いっ。
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ジョージ |
んでさーー、聞いた後に、聞くんじゃなかった、
なんで、オレはこんなとこ電話かけたんだよぉ、
ガチャン、だよ。
ああ、(悶絶)すんごーい素敵だった。
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ノリスケ |
ステキって! うわー。
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ジョージ |
もう、しゅらしゅしゅしゅ系でしょ?
もっと呑みましょう。
(店の人に)ワインをもうひとつ、いただきます。
でも、その体験……おもしろかったー……
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ノリスケ |
それって、おもしろいの?
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ジョージ |
自分の中で、ドキドキしちゃうの。
わーー、ううわーーー、
ここまでやられたぁーーーって思って。
プレゼントの演出としては、
これ以上のものはない。
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つねさん |
それ、もう、完璧だね。っていうか、
あなたがロマンティストだから……
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ジョージ |
そういうのを、呼んじゃうんだね。
でも、いちばんいいのは、
言葉のプレゼントだよね。
会いたいということ、ひとつ、伝えるんでも、
プレゼントだと思うんだよ。
相手を喜ばせようと思って、
自分の気持ちを表現するのが
プレゼントだとしたら、
言葉は最高のプレゼント。
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ノリスケ |
僕ねー、今の人と付き合うのに、
正直なはなしすると、
そんなに大好きってわけじゃなかったの。
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つねさん |
いてててて(笑)。
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ノリスケ |
そう。ほんとに。
ずっと追いかけるほうだったんだけど、
追いかけられて戸惑っちゃったの。
でも、まあ、寂しいし、いーかな、とか、
打算的に思ってたときに、
ひじょうに彼、機械が苦手なんだけど、
アメリカ・オンライン始めたの。
友達に設定してもらって。
それで、メールをくれるようになったの。
それが、キーボードが打てないもんだから、
ひじょうにたどたどしく下手なわけよ。
ひらがなしかなくて、文章もめちゃくちゃ。
あなたの、改行、ことが、改行、
いつもいつも、三行アキ……みたいな。
もうねー、それにうたれたの。
いまでも、胸が、あつくなるわ。
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ジョージ |
僕がね、今までいちばん長く付き合ったのが、
中国人だったの。で、日本に来て、
まだ間がなかったの。
だから、片言の日本語なんだよ。
いいもんだよー、片言でねー、
語る愛っていうのはね、素晴らしい!
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ノリスケ |
それは、僕、よくわかる。
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ジョージ |
だから、僕のお父さんが
韓国娘にはまるの、わかる。
要は、教え合わなけりゃいけないわけじゃん?
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ノリスケ |
いっしょけんめい伝えるからね。
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ジョージ |
それでね、3ヶ月も付き合ったころに、
その中国人の彼が、うちのお袋と会ったの。
お袋はお袋で、気つかうわけだ。
恋人とは思ってないわけでしょう? 最初は。
「いつもお世話になってまして、
この子、我が儘に育てたから、
大変でしょう?」
って言ったら、何っつったと思う?
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、
ちょっと、おフテなだけ」
って。
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つねさん |
ウハハハハハハ。そんなおネエ言葉。
学習能力、高かったのね。
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ジョージ |
そお。すんごい高かった。
で、「えっ? おふて?」って。
いやいや、この人、まだ日本語変だから、って。
「ごめんごめんごめん、まちがえた、
いけず?」。またかい。
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つねさん |
けっこ、可愛いんだよね。
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ジョージ |
でも、ケチなんだよ。
僕、あの人から、プレゼント、
いっかいも貰ったことない。
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つねさん |
すーごい金持ちなんだよ。
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ジョージ |
台湾のね、東京でいうと、銀座みたいな所に、
お父さんが、ビルを20何本持ってる人なの。
で、子供が6人いて、みんなで3本ずつ分けたの。
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ノリスケ |
ビルを、ボンだって、本。
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ジョージ |
その人ね、日本のオトコノコと遊びたくて
よく来るんだけど、ほら、台湾ってさー、
デブがあんまりいないから、
デブ専には受難なわけよ。
で、来んのに、安ーいチケットが欲しいわけよ。
やっぱり何回も来なきゃいけないから。
そんで、安いチケット買うっていったら、
ふつう、どうする?
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ノリスケ |
今だったら、インターネットで格安航空券……
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ジョージ |
でしょ? そんな程度でしょ?
その人ねえ、旅行代理店買ったの(笑)。
某米国系航空会社と特約店契約まで交わして。
金持ちってね、わかんないのよ、ほんとに。
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ノリスケ |
あなたが言うんだから、
そうなんでしょうねぇ。
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ジョージ |
わかんない、僕。
あいつのことは、未だに、わかんない。
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ノリスケ |
金持ちにも、いろいろあるんでしょう?
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ジョージ |
ボクん家はねえ、やっぱりね、
一生懸命金持ちになろうと思って、
なった金持ちなの。
で、彼は、金持ちじゃないことが
解らない金持ちなんだよ。
だから、なんか変なの。おもしろいけどね。
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