ジョージ |
みんな、デートっていったら、
必死になるのかなぁ? |
つねさん |
だから、それはほら、落とすための手段だもん。
付き合ってからのお出かけは
デートじゃないでしょ? |
ジョージ |
じゃ、デートのカタルシスっていうのは、
エッチなわけ? |
ノリスケ |
っていうか、思い入れそのもの、
みたいなことなんじゃないの? |
ジョージ |
っていうふうに考えるとー、
エッチに至る障害が、大きければ大きいほど、
デートの果たす役割は、大きいわけだよね? |
ノリスケ |
そうだよね。 |
ジョージ |
女の子的には、これだけ周到な準備をしてくれて、
楽しいデートをプレゼントしてくれたから、
どうもありがとうパッカン、なわけでしょ?
そすっと、こっち側の世界には、
ぜったいデートっていう概念は、
ありえないと思うよ。 |
ノリスケ |
ないねー。 |
つねさん |
たまにいるじゃん? |
ジョージ |
だってそういう子は、最初っから、開いてるもん。 |
ノリスケ |
まあねー、駆け引きとしてはね。
そーいえば、そーだなー、
僕も、ちゃんと付き合ってからって、
デートしてないなー。デートなんて、
思いもよらない。 |
つねさん |
最初っから家に行ったもん、俺ねー。 |
ジョージ |
そうだよ、最初っから家だもん。
バス停の前でさ、うふふ。 |
つねさん |
バス停の前で、待ってたもんね。
二人とも半ズボンだったんだよね。えへ。 |
ジョージ |
えへへ。 |
ノリスケ |
……夏だったのね(冷静)、
家いくのが、嬉しいってのが、
あるんじゃないの? |
つねさん |
僕はー、好きよ。 |
ジョージ |
デート用にできてるお店とかって
いうの、あるの? |
ノリスケ |
東京いい店やれる店、ってこと? |
つねさん |
ホテルの近くの? |
ジョージ |
ホテルで、よくいうのが、
最上階にラウンジのあるホテルは、
ラブホテルだ、っていうの。 |
つねさん |
あー、パーク・ハイアットみたいに? |
ノリスケ |
パーク・ハイアットも、そうだ。 |
ジョージ |
要は、エレベーターに乗ってて、
知ってる人がエレベーターに乗ってきたときに、
奥さんじゃないひと連れてて、
いちばん上にラウンジがあったら、
ラウンジに行くんです、って言えるの。 |
ノリスケ |
にゃあるほど。 |
ジョージ |
だけど、いちばん上にラウンジがなかったら、
客室にいくしかないわけだから、
言い訳ができない。
デート用にできてる店、美味しいだけじゃ
だめなんだよね。 |
つねさん |
実用を兼ねてないとダメなんでしょ? |
ジョージ |
そ。エッチな感じになるように。 |
ノリスケ |
そうそうそう、気分をそそらないと
ダメなんじゃない? |
ジョージ |
だってー、高いお金使えば、
女の子が転がるとしたら、
料亭に連れてくのが、いいってことになるでしょ。 |
ノリスケ |
でも料亭じゃ、だめだよねー。 |
ジョージ |
そう、料亭に連れてって、おんな口説くのは、
政治家くらいだからね。 |
ノリスケ |
ムードみたいなもの? |
つねさん |
そうそう。 |
ジョージ |
ムードって、たぶん、あれだよ、
まわりがみんなアベックってやつだよ。 |
ノリスケ |
そのー、つがってる雰囲気みたいなこと? |
ジョージ |
ビジネスマンのあいだに、アベックだけが、
ひと組ポコーンといたら・・・ |
ノリスケ |
かえって、肩身がせまいよね。 |
ジョージ |
ダメだよね。そーすると、
テーブルが20あったら、
20のうちの19までがアベック、
っていう店がいいんだよね。 |
つねさん |
同伴喫茶とか? |
ジョージ |
なははは。同伴喫茶って、行ったことある? |
つねさん |
ない。ある? あ、あるみたいだね。 |
ジョージ |
僕、ある。 |
ノリスケ |
なんでもあるねー(笑)。 |
つねさん |
あんた、すごいねー。なに? どっ、どっちと? |
ジョージ |
女と。 |
つねさん |
女と? |
ジョージ |
すっごい怖かった!! |
ノリスケ |
連れ込まれたの? |
つねさん |
食われるかと思った? |
ジョージ |
いやー、あんねー、同伴喫茶を科学する、
っていう仕事を、一時期、
ちょっと受けてたことあって。 |
つねさん |
いろんな仕事があるのねえ(笑)。 |
ジョージ |
だって、飲食店って、付加価値が命でしょう?
要は、100円で仕入れた原料を、
1000円で売るか500円で売るかの
世界なわけじゃん。
そしたら、たった10円しか
原料のかかってないコーヒーを、
1500円で売るお店があるとしたら、
行かなきゃいけないわけさ、って行ったの。
すーーごい、嫌だった。
あ、でも、二丁目のそういう店は、
行って使ったことある。 |
ノリスケ |
使った・・・(笑)。 |
ジョージ |
みじめよー、でも。
ああいうとこでやるエッチって。 |
つねさん |
あー・・・。あんまり、やってないな。 |
ノリスケ |
あんまり、かい? |
ジョージ |
で、そんときにー、貧乏なジジイとは、
ぜったい恋に落ちないと誓ったわ。 |
ノリスケ |
みじめな感じはねー・・・。 |
ジョージ |
みじめなデートっていうの、あるよね。 |
つねさん |
みじめな・・・たとえば? |
ジョージ |
たとえば、バカみたいなクリスマス・イヴに、
男ふたりで、まぎれ込んでしまった夜、とかね。
でも、それはそれでまた、得難いから、いっか。
クリスマスに、どこにも行くあてがなくて、
ふたりでただただ、表参道をさまよい歩いた、
とかっていうのもあるけど、
あれはけっこう良かったよ。 |
ノリスケ |
まだ、イルミネーションがあったころの、表参道? |
ジョージ |
うん、あったころ。すごい良かった。 |
ジョージ |
思い出した。
上昇志向の強い、生意気な若い男の子を
落とすための散歩コース、っていうのは、あった。 |
ノリスケ |
モデルコースが? |
ジョージ |
うん。あのね、コンセプトは、すべての場所で、
「お久しぶりでございました、ジョージ様」
って呼ばれるのよ。
まず、日比谷のエルメスから始まって、
その手のブティックを何軒かはしごして、
で、昼飯は、あそこで食べて、
晩飯はパーク・ハイアットだよね。 |
ノリスケ |
昼飯、どこ? |
ジョージ |
昼飯は、野田岩さんで鰻重をたべるか、
それとも、どこだろう? ニュー・オータニ。
トレーダー・ディクス。
あれも、なかなか重宝したね。 |
ノリスケ |
そりゃ、落ちるわよね。 |
つねさん |
そこまでしなくても、落ちるじゃん。 |
ジョージ |
宙ぶらりんなのを、奈落の底まで、落とすのよ! |
ジョージ |
でも、デートの醍醐味って、それだよね。 |
ノリスケ |
それ、デートだね、確かにね。 |
ジョージ |
で、デートっていうのは、ぜったい、
仕掛ける側と仕掛けられる側の、
あ・うんの呼吸なんだよ。 |
つねさん |
あ、じゃ、俺、仕掛ける側、まわったことないや。 |
ジョージ |
あー。 |
ノリスケ |
いや、それは、実は仕掛けてるのかも知れないよ。 |
つねさん |
いやいや。 |
ノリスケ |
相手が仕掛けるように、仕掛けたんじゃないの? |
ジョージ |
あー、そうそうそうそう。
基本的に、仕掛け上手の人っていうのは、
さいしょに仕掛けられるんだよね。
仕掛けられた上で、気が付いたら、
仕掛けた方が、仕掛けられてるの。 |
ノリスケ |
俺も、そう思うな。 |
ジョージ |
ぜったい。だって、高校生とかじゃないんだから、
男がぐいぐいぐいぐい引っ張るのが、
デートじゃないわけでしょ?
さいしょは、彼女の意見を聞いて、
彼女の行きたいとこ行きたいとこ行くんだけど、
たとえば、彼女が終電の時間直前に帰ろう、
と思ってるときに、10時ちょうどぐらいに、
男が自分の仕掛けの中に、女を放り込むんだよ。 |
つねさん |
あー。 |
ジョージ |
で、そこが上手かどうかで、
食えるか食えないかだと思うよ。
でも、女の子に、どーかなー?
もう終電の時間がなくなるかも知れない、
って言わせたらおしまいなんだろうね。
終電が出る、小一時間前に連れてかれたところが、
入ったとたんに、あっ、これは、私は、今日は、
帰っちゃいけないんだ、って思わせるところに
連れてかないと、デートは成功しないよ。
だから、そういう場所を、
どれだけ持ってるか、だよね。 |
つねさん |
室井滋みたいに? つけてんの? |
ジョージ |
いいねー。罠ノート。 |
ノリスケ |
このごろデートしてなーい。
車で遠出すると、デートって気になる? |
つねさん |
たとえば、お台場行くとか、
幕張行くとかー。 |
ノリスケ |
そうだねー。 |
ジョージ |
お台場行くときの、レインボー・ブリッジを
越えるときの景色っていうのは、
すーごいデートにふさわしい景色だよね。うん。
でも、あの景色を見せるんだったら、
ぜったい左ハンドルじゃ、ダメだよね。 |
ノリスケ |
(笑)。 |
ジョージ |
こー行ったときの、右側がきれいだから。 |
つねさん |
あ、そうなんだ。 |
ジョージ |
うん。で、しかも、車高が低いと見えないから。 |
ノリスケ |
ってことは、スポーツタイプは、ダメってこと? |
ジョージ |
ダメってこと。 |
ノリスケ |
レンジ・ローバーは? |
ジョージ |
レンジ・ローバー。んでっ、運転しながら、
「そろそろ左のほう、見てごらん」
とかって言うと、ちょうど、こーいうふうに、
景色が上がってくるから、きれいだよ。 |
つねさん |
へー、そなの? 何回やった? |
ジョージ |
ぬーほほほほほほ・・・そんなにやんなかった。
僕の場合は、ほら、運転しないで、
タクシーの後ろっかわで・・・。 |
ノリスケ |
タクシーの後ろ、か(笑)。
それも、いいような・・・
免許、取らなかったの? 取る気なかったの? |
ジョージ |
車は、乗せてもらうもんなの。
でもまあ、そういう特殊な状況はさておき、
デートって、やっぱり、無縁なのね、僕たち。 |
ノリスケ |
実は無縁だ、ってことが、わかってよかった。
なんか、幻想として、あるような気がしてた。
導きだす結果みたいなものが、まず、違うしー。 |
つねさん |
そうそう。ま、それだから、
落とすとか落とさないとか、
っていうとこにいないじゃん、みんな。 |
ジョージ |
だって、デートクラブって、ないでしょう? |
つねさん |
あるじゃん。外人のエスコートとか。 |
ノリスケ |
エスコートは、意味ちがうよ。 |
ジョージ |
だって、あれは、売り専だもん。
だってさー、だって、だって、通常の世界には、
叶姉妹は成立するわけでしょ? 職業として。
寝ないで、エスコートして、お金もらえるんだよ。
だけど、こっち側の世界に、
寝ないで金もらえるエスコートって、
ナンセンスだもん。 |
ノリスケ |
ないねー。 |
ジョージ |
ね?
パーティーに行かなきゃいけないとき
僕らに必要なエスコートは、
レズの女の子であって、
どんなにかっこいい男の子だってさー、
寝ないんじゃ、連れてたって、仕方がない。
あと、あれだね、
僕らに難点があるとしたらば、・・・ |
ノリスケ |
ん? 難点があるとしたら? |
ジョージ |
どんなに気合い入れて、デートのつもりで
出かけていっても、
まわりの人はデートって思わないの。 |
つねさん |
あー! |
ジョージ |
だってさー、あー、あの2人デートなんだー、
と思われないデートぐらい、
つまんないものはないもん。 |
ノリスケ |
そうだよねー。そうだねー。 |
ジョージ |
だから、二丁目かなんかにー、
ホモのデート専用の
オシャレでおいしいレストランとかがあると、
いいのにね。 |
ノリスケ |
あー、そこに行き着くよね。 |
ジョージ |
けっこう気合い入れてね、
デートするんだと思うよ。
2人で、お揃いの蝶ネクタイかなんかして。
プレゼントの交換しあうの。
ぜーえったい、ぜったいねー、
やっぱり、社交の場がないんだよー。
で、デートっていうのはー、
ものすごい親密でプライベートな、
社交の場だもの。けして、2人だけで、
こっそりやることは、デートじゃないもん。 |
ノリスケ |
そうだよね。 |
つねさん |
手もつなげないしね。 |
ジョージ |
ねーっ。 |
つねさん |
日本でじゃ。 |
ジョージ |
プレゼント交換したあとで、
チュッとか、したいんだよ。 |
ノリスケ |
そこに行き着くなー。 |
ジョージ |
うん。
(この回、了)
|