APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

デートのマナー その5
デザートにご注意。

ジョージ さあて、気合いの入ったデートで
食べちゃダメなデザートは何でしょう?
ノリスケ わかった。
つねさん はい。なんでしょう?
ノリスケ ミルフィーユ。
つねさん ピンポーン。
ジョージ そう。一にミルフィーユ。
二にシュークリーム。
ノリスケ あ、シュークリームも大変だ(笑)。
一見ね、ミルフィーユやシュークリームって、
馴染みがあるお菓子だから、
頼んじゃうんだよー。
つねさん ミルフィーユ、どゆふうにしたら、
すごいきれいにさばけるか。
ジョージ まずね、上に乗ってるイチゴを取って、
フルーツを取って。
パタンッと向こう側へ倒して。
で、手前にフォークを添えて、
直角に、ナイフを入れて、パサンと切る。
ノリスケ はいはいはい、要するに、真横に。
横から切る、と。
ジョージ ぜーったい、どんなことがあっても・・・
つねさん 上から・・・
ジョージ 立てたまんま、上から切ったら・・・
ノリスケ メリメリメリッて、左右が持ち上がってきて。
ジョージ あるいは、切りづらいだろうからって、
一枚一枚、パイの層を外しちゃダメよ。
という話をしながら、
そのカップルを見てたら・・・
ノリスケ ミルフィーユが来たー!?
ジョージ そう。ミルフィーユが来たんだよー、
ミルフィーユがー・・・ああ・・・
つねさん ウハハハハッ!! それも、それも・・・
ジョージ しかもね、何がすごいってね、
中に、シャーベットが入ったミルフィーユで。
こんな切りづらいものは、ないの。
ノリスケ きりづらいですねー。
圧力をかければかけるほど、
たわんでしまう。
ジョージ ビヨンビヨン。
ノリスケ 外れてしまうわけですね。
ジョージ ビヨンビヨンビヨン。
つねさん そうそう(笑)。
ジョージ それで、どっちに行くんだろう?
やっぱり、おやじなんだろうか?
と思ったら・・・
つねさん 案の定・・・
ジョージ おとうさんだった。
ノリスケ ハハハハハッ。
ジョージ で、くつろいでるわけじゃん?
デザートが来るわけだから。
さんざんロブスターで格闘したあとで。
ノリスケ んー、もうね。もう、大丈夫だろう、って。
ジョージ も、タバコをプカプカ吹かしながら。
で、いいぞ、いいぞー、って思って。
やって来たものを、目にしたとたん、
止まったね、おとうさんの、タバコを吸う手が。
つねさん また、まる子になったよね。
ジョージ やったー、やったー、と思って。
ノリスケ もう、応援してるのか、意地悪なんだか。
ジョージ でね、上っかわに乗ってる、パイを外して。
ノリスケ 一枚一枚方式!?
ジョージ そう。で、シャーベットだけ、
スプーンですくい取って。
また外して。
(笑)シャーベットすくい取って。
ノリスケ やーん。
それを、向かいで見てる、
気のある女の子の、気持ちも・・・
ジョージ だよ〜〜。でも、気のある女の子は、
途中でね、トイレに行ったー。
つねさん そう。あれ、も、ダメなんでしょう?
ジョージ ん、でも、でもね・・・
食事が終わって、デザートが出たあとで、
トイレに行ったじゃない?
あれはね、けっこうねー、
女の子的には、いいマナーなんだよ。
つねさん あー。
ジョージ 女の人は、いいお店に行ったら、
男がクレジット・カードで勘定する
きっかけを作ってあげて下さいっ。
つねさん なるほどね。
ジョージ で、あのおじさんは、
その場面でクレジット・カード出せば、
すごい格好良かったのに、
ずーっとタバコ吸ってんの。
目が虚ろなんだよ。
次の一手は、どうしよう?
ということで、頭がいっぱいで。
ノリスケ つまり、もう、お勘定は来てる状態?
ジョージ うん、来てるんだよ。
ノリスケ だよね。なのに、ほっといてある。
ジョージ そう。ほっといてあるんだー。
ノリスケ 気になって、しょうがないよね、女の子はね。
ジョージ もう、僕が代わりに払ってやっても、いいかな?
っていうぐらい、だったんだけど、
いいや、あの女のもんだからっ。
失礼しちゃうわっ、て感じ。
でも、楽しかったよね。
ほんとに、マナーの教科書を、学んで、
目の前で復習した、みたいな感じ。
でもね、デートでやっちゃいけないことって、
いっぱいあるね。
つねさん うん。
ジョージ で、知らない間に、踏んでく地雷って、
あるじゃんね。
自分で撒きビシを撒いて、
踏んでっちゃうことって。
ノリスケ 自分で蒔いた毒を自分で飲む。
ジョージ けっこう、ある。
つねさん たとえば? ほかには。
ジョージ んー、まず、お店の選び方から、
そうだよね。
今日、ここのお店って、どんな?
(註:銀座のワインバーです)
ノリスケ カジュアル。居心地がいい。
ましてや、こんな席にしてもらって。
いちばん隅っこの大きなテーブル。
話しやすいね。
つねさん うん。
ジョージ そーね。ここって、
ぜったい今晩セックスしようと思ってる、
男の子と女の子が来ちゃダメだよね。
つねさん あー。
ノリスケ うん、来ちゃダメだし、
まあ、そういう感じじゃないよねぇ。
つねさん 家庭料理っぽいよね。
ノリスケ っていうかね・・・
ノリスケ ワインバーだけど、
蕎麦屋、焼肉屋のノリね。
つねさん ほー。
ジョージ うん、実質的だしね。
つねさん ああ。
ジョージ それとね、何よりね、ここが、時間を楽しむ、
ここに居ることそのものを楽しむお店だから。
そすっと、もし、僕が誰かと
デートしてるとするじゃん。
そうすると、今日一日、これから先の中で、
ここで食事をして飲んだことが、
いちばん楽しい思い出になるから、
この後、どんなに心を尽くしてエッチをしても、
その日のエッチは、
いちばん楽しい思い出にならないんだよ。
エッチっていうのは、
命を懸けなきゃいけないもんでしょ?
つねさん うん。
ノリスケ 命と交換ね。
ジョージ で、男ってさー、男って言っても、
僕、男じゃないから、よく分かんないけど。
つねさん いや、いちおう・・・
いちおう、ってすごいね(笑)。
ジョージ 男ってー、女に言われて、
いちばん傷付くのってー、
「あなた、セックス下手」とか、
「今日のエッチは、良くなかった」
って言われることでしょう?
つねさん そーかー。
ノリスケ つまり? なんての?
生命を継ぐ者として、資格がない、
みたいに言われてるようなもんだよね。
ジョージ そう。それでね、ほとんどの男ってね、
それをね、
「誰それに比べて、
 良くなかったんじゃないか?」
っていうふうに思うんだよ。
ノリスケ あ〜。
つねさん 前彼とか。
ジョージ だけど、僕らって、
エッチするときに、
誰かと比べてどうこうとかって、
考えるー?
ノリスケ ない。絶対ない。
ジョージ ないよね。で、絶対そうなんだよー。
つねさん ふんふんふん。
ジョージ で、女も、絶対そうで、
女が失望するのは、
今日一日の思い出の中で、
このセックスよりも、
もっと楽しい思い出があったときには、
そのセックスは良くなかったことになるんだよ。
ノリスケ あー、そっか。
つねさん あー、あー、あー。
ジョージ で、今日一日、好きな人と一緒にいて、
色々楽しかったけれども、
エッチがいちばん良くって楽しかった、
ていう一日に、エッチをしないといけないの。
つねさん あ〜。
ジョージ だから、こういうところで、
んー、一緒に酒飲んだあと、
どんなにエッチしようとしても、ダメなんだよね。
ノリスケ それは、なあに?
アマンに行くとか、そういうこと?
つねさん は〜。
ジョージ そう。ああいうとこだと、
ぜんぜんエッチしても仕方がないんだよ。
ノリスケ そうなのね。色気なし。でも、もう、
心から満足してるんだよ。
ジョージ あのね、どゆのかな?
手をつないでキスをすることで、十分。
ノリスケ そっ! その通ーり。
ジョージ ね?
ノリスケ 大賛成ー!!
つねさん エッチなし?
ジョージ 一回、手をつなぐ、イコール、
限りなく、一回の射精といっしょ。
ほいで、キスが・・・
世界中に見られてるみたいな、
ゴージャスなキスなんだよね。
ノリスケ そう。なんてロマンティックなんだろう。
つねさん すいません、僕、行ってないもんでー。
ジョージ 9月、しましょうね。
つねさん あー! ねー。エッチもしよー?
ノリスケ どこ行くの?
どこ行くの?
どこ行くの?
つねさん エッチも(笑)・・・
ノリスケ うるさいっ。
どこ行くのよ。
ジョージ アマヌサに決まってるじゃないの。
ノリスケ あんた、アマヌサ、好きだもんね。
ジョージ うん。大好き。
ノリスケ ハハハハ。
ジョージ それで、だからね、だから、
今日はエッチで決めよう、
というときに、行くべき食事処って、
二ヶ所しかないの。
ノリスケ ん、それは、なぁに?

(つづきます)

2001-05-07-MON

BACK
戻る