ノリスケ |
(バーで、ピアノを弾いている人を見ながら)
ああ、ピアノを習わなかったことを悔やむわ。
弾ける人がうらやましい。
うちね、習わせてくれなかったの、
習いたいって言ったのに。
でも普通の男の子って、
ピアノやりたいって思うのかな?
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ジョージ |
あ、あのね、うちの会社の男の子で、
ピアノ習い始めた子がいるよ。
その子はー、彼女を落とすために、
ピアノ弾けたほうがいいと思ってるの。
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ノリスケ |
あー、なるほどね。
弾き語りをしながら、彼女を落としたい、
っていうのがあるんだ。
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ジョージ |
そう。しかも、すごい続いてるの。
続いてる理由聞いたら・・・
ピアノの先生が、すごい美人なんですって。
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つねさん |
確かに、ぼくも、
(先生が)熊さんだったら、やる。
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ノリスケ |
そりゃ、もう、命がけね。
僕ね、英会話行ってるのね。
で、学校自体はいいんだけど、
先生、いい先生なんだけど・・・
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つねさん |
可愛いくないんでしょう?
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ノリスケ |
らくだみたいなの。
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つねさん |
あー・・・
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ノリスケ |
怖いのっ。あれでルックスがよければなあ。
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ジョージ |
習い事はー、
自分の意志で自分のお金でやる習い事と、
自分の意志で他人のお金でやる習い事と、
自分の意志はないのに、
他人に強要されて、他人のお金でやる習い事?
三種類あるわね。
ねえ、お稽古好きの、親って、
厄介じゃない? お稽古させ好きの。
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つねさん |
僕、剣道はやらされたよ。
やりたくないのに、いとこがやってたから。
同い年の。あんたもやりなさい、って。
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ノリスケ |
僕はね、逆にねー、習字行かされて、
知らないうちに行かされたんだけど、
好きだったんだよ。行き始めたら。
ところが、成績がね、
多少上がったり下ったりするじゃない?
ずっと上がるわけじゃないんだから。
なのに、成績がちょっと落ちたら、
辞めさせられちゃったの。
自分で選べないのが、やだった。
いま字が上手だったら、ちょっとくらい人生、
変わってたかもしれないのに。
変な父親! いまだに理解できない。
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ジョージ |
僕はー、小学校の頃、
ピアノやって、声楽やってー・・・
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つねさん |
声楽やってたんだ。
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ノリスケ |
小学校で声楽って、すごいね。
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つねさん |
だから声がいいの?
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ジョージ |
そー。わかんないけど。
それでー、英会話やってー、
家庭教師の先生2人ついてて・・・
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ノリスケ |
それ英会話の他に?
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ジョージ |
うん、理系の先生と文系の先生がいて。
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ノリスケ |
すごーい。
お坊ちゃんだとは思ってたけど。
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ジョージ |
忙しかったよ、すーごい忙しかった。
でもー、でも、
僕はすっごいやりたいことがあったの。
うちねー、商店街の中の四階建のビルの
一番上が家だったの。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
それで、台所から外を見ると、
外にね、三階建のビルがあって、
その三階建のビルの屋上に、
プレハブが建ち始めたんだよ。
何が建つんだろー、と思ってたら、
バレエ教室が出来たの!
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つねさん |
リトル・ダンサーみたい。
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ジョージ |
それでー、何かねー、そのー、
いいんだよー、バレエって。
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ノリスケ |
ほーっ・・・
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ジョージ |
習いたいとか思わないのね。
だけど、いいなー、と思って。
女の子だったら、僕はこういうところに、
お母さんに言って、行くんだろうになー、
と思ってたら、それからしばらくして、
台所から表を見ちゃいけないっていう
おふれが出たの、家で。
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ノリスケ |
あんた、そんなに憧れのまなざしで
見てたの?
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ジョージ |
そうじゃないの。母が気持ち悪がって。
あの、男の先生のモッコシが
あんまり激しかったんで。
そのー、娘達にそういうのを見せたら、
教育上良くないんじゃないかっていうんで。
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つねさん |
娘ってあんた?
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ジョージ |
うちの妹よっ。
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つねさん |
女の子が踊ってるのを見て、
家の息子が色気づくとか
そういうんでもなかったの?
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ジョージ |
そういうんじゃなかったと思う。
でも、声楽はねー、
毎日音楽コンクールの、二位になったの。
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ノリスケ |
何歳の時? 小学生? 中学生?
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ジョージ |
中学校の二年のとき。
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ノリスケ |
ピアノは、今でもちょっとした趣味として
弾けるくらいは、習った?
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ジョージ |
ん、でもぜんぜんピアノは弾けない。
あ、でもねー、好きだったんだよ、
ピアノはすーごい大好きだった。
でも、辞めたの。
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ノリスケ |
なんで辞めたの?
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ジョージ |
辞めた理由は、先生なの。
ピアノの先生が、
ある大学の教授だったんだけど、
この子は筋がいいからって、
いろんな人からたらい回しになって、
その人のとこに行ったの。
んで、ピアノと声楽、
両方習ってたんだよ。
で、行きました。
こーやって弾いてたら、
なんか、腕に、当たるの。なんか。
見たら、先生が股間を押しつけてるんだよ。
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つねさん |
あたたたたたああー・・・
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ジョージ |
あー、やだー・・・と思って。
まだその頃、は、ねー・・・
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ノリスケ |
分かんないよね。
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ジョージ |
そ。
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つねさん |
タイプじゃなかったの?
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ジョージ |
タイプじゃなかったし。ガリガリで。
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ノリスケ |
いま思っても。
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ジョージ |
そー。いま思ってもね。
で、こんど、歌いましょう、って、
立ち上がって。で、声出して下さいな、
あー、って、
もっとお腹の方から出すんですよー、って。
触るんだよ。お腹の下のほう。
それが、やだったの。
んで、あるとき、
先生、そこはお腹じゃありません、
って言ったら、
明日から来なくていいです、って、言われたの。
それからね、ピアノがすーごい嫌いになったの。
トラウマよ、トラウマ。
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つねさん |
すーごーい。そういう話ってほんとにあるの。
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ジョージ |
トラウマ。だからねー、
子供を稽古に出すときにはー、
気を付けなきゃダメっ。
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ノリスケ |
男の子のお母さん、
男色家の先生には気を付けてくださいっ。
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つねさん |
すーごいねー。
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ジョージ |
そう。皆さん、そうですよ。
特に、ふつうの女の人たち!
お母さんになったらね。
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つねさん |
僕の先生は、ジジババだったから、
ぜーんぜん、そんな。
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ノリスケ |
僕もおじいちゃんだったから。
そーいうのは、なかったなあ。
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つねさん |
だよねー。だって、なんか、
僕の知ってる人でー、初体験の相手が、
なんかー、英語の家庭教師っていうのがいたもの。
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ジョージ |
・・・・・・。
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ノリスケ |
ドラマみたーい。ドラマじゃないの?
なんか、映画みたいな話!
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つねさん |
小学校の時だったらしいよ。
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ノリスケ |
ええっ!?
ジョージさんの知ってる人?
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ジョージ |
ふがっ(鼻が鳴った音)。
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ノリスケ |
え、まさか、それって・・・???
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つねさん |
そうなのよー。白状しちゃえば?
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ジョージ |
・・・はい。それは、わたくしです。
いやーん、初体験の話するのー?
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ノリスケ |
えええええええええええええええッ!?!?
聞かせてッ!
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(つづきます)