ジョージ |
そやって考えると、あれだね、
人間を商品にするというのは、
自分の目の届かないところにまで、
神経をいきわたらせる、
っていうことかも知んないね。
だって、男見るときに、
ノンケかゲイか、
いちばんよく分かるのって、うなじだもん。 |
ノリスケ |
そうでしょう? 僕もそう思う。
凶悪なまでに、演出されてる。 |
つねさん |
あ〜、そーね。 |
ジョージ |
うなじが、いつも、青々と…… |
つねさん |
小奇麗に。 |
ジョージ |
小奇麗になってんのは、
ぜったいそうだと思うよね。 |
つねさん |
8割ぐらいね。 |
ノリスケ |
それで、清潔、とかっていうのでは、
片づけられないね、何かがあるんだよ。 |
ジョージ |
そうね。 |
つねさん |
そうだよね。 |
ジョージ |
だって、ノンケの男っていうのは、
どんなにこざっぱりしてても、
例えば、鼻毛がちょっと、出てるとかって、
あるよね。 |
ノリスケ |
スキがあるのね。
そういうところが、僕らになくって、
かわいいんだけどー。んもう。 |
つねさん |
あるよね。
ヒゲが、ノビノビとか。 |
ジョージ |
それはね、自分の目の届かないところに、
がいきとどいてないの。 |
つねさん |
あ〜。 |
ノリスケ |
ふんふんふん。 |
ジョージ |
そういうの、ぜったいある。
だから、たぶん女も、
合わせ鏡しなくなったら、
女じゃなくなるんだろうね。 |
ノリスケ |
あーーー。そうねー。 |
ジョージ |
そやって考えると、
三面鏡がどんどんなくなってく、
今の日本の現状っていうのは、
みんなで女じゃなくなるっていうことでしょ? |
ノリスケ |
三面鏡ってウチにはないけど、
たまーにホテル泊まって、
あると、はっとするんだよね。 |
ジョージ |
はっとするよね。 |
ノリスケ |
こんなに情けない、横顔を(笑)とかって思って。 |
ジョージ |
ヌホホホホッ!! ……そうだよね。 |
ノリスケ |
ぞっとするんだよね。 |
ジョージ |
僕も、そう思うよ。 |
つねさん |
よくわかんなーい。 |
ノリスケ |
(笑)あんた、奇特だねえ。 |
ジョージ |
上から見ても横から見ても下から見ても
完全な球体だからかしら。 |
つねさん |
てゆーかー、鏡、嫌いだもん。 |
ノリスケ |
ハハハハハッ。なんで?
鏡が嫌いなゲイって、いたの?(笑) |
つねさん |
え、僕、首から下、鏡見たくないよ。 |
ノリスケ |
見たほうがいいわよ、いっぺん。
笑い事じゃないんだから。
三面鏡はね、ふだん見ておかないと、
人前に出るときに自信が出ないのよ。 |
ジョージ |
そだよ、だから、パーティに行くと、
色んな人の視線が、容赦なく、
360度から、降りそそいでくるんだよね。
だから、女は背中、って言うんだと思うんだ。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
背中にがゆきとどいている限りは…… |
つねさん |
他のとこにも…… |
ジョージ |
ゆきとどいてる。 |
つねさん |
はず。そだね。 |
ジョージ |
で、他人から見られることを
放棄した女性っていうのは、
背中を壁につけて、
壁の花になっちゃうんだよ。 |
ノリスケ |
なるほどねー。背中って、
自分で見えないから、
そこに自信があって、
どうだっ、ていうのは、相当じゃない? |
ジョージ |
そだよね。うん。 |
ノリスケ |
相当じゃないと。
だって、それこそさ、僕たちも、
忙しくて床屋いけないと、
外出したくなくなるもんね(笑)。
やだー、こんな顔で出られない! と思って。
こんな状態で出たくない、って。
そういうときだけ男成分を使ってさ、
「誰が見るわけじゃないからさ」
なんて言い訳を自分にしながらも、
ほんとのほんとは、ヤなんだよねー。 |
ジョージ |
わかった。ある意味、
いい女になりたい女性っていうのは、
ゲイの友だちを、
ひとり持つといいかも知んないよね。 |
ノリスケ |
ウン、おすすめっ。
僕も、女の子の友達、多いよ。 |
ジョージ |
パーティに呼ばれたら、
まずゲイの友だち家に呼んできて、
ちょっと背中見てちょうだい、って。 |
つねさん |
レクチャーしてもらうんだね。 |
ジョージ |
ついでにファスナーかなんか、
上げてもらっても大丈夫だしね。
あんた、だめよっ、腰曲がってるわよ、
とかって言われるの。 |
ノリスケ |
しゃんとしなさいよっ(笑)。ピシッ!
僕たち、そういうの、全然苦じゃないよね。
買い物だってつきあってあげられるし。 |
ジョージ |
絶対いいと思うよ。ほんとに。
で、それが無理ならば、
やっぱり自分でもって、
自分の背後まで、
責任を持つということだよね。
背中。明日から背筋の特訓よっ! |
ノリスケ |
背筋を伸ばす女の子が、
カバンの中には何を入れたらいいの? |
ジョージ |
うん。うん、それ大事よね。
空っぽで持ってるわけじゃないでしょう? |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
なに入れる? |
ノリスケ |
小銭。 |
ジョージ |
何よ辛気臭いわね。
女の武器よ。武器、武器、武器!
武器だけを持って、コロセウムに入っていくの! |
ノリスケ |
武器だけを……てことは? |
ジョージ |
余分なものは、いらないの。 |
ノリスケ |
そうだねー。 |
ノリスケ |
香水? |
ジョージ |
香水はいるね。 |
つねさん |
紅? |
ジョージ |
んー、口紅は微妙なとこだね。 |
つねさん |
鏡は? ちっちゃい。 |
ジョージ |
これも微妙なとこだね。
口紅は持っててもいいや。 |
ノリスケ |
鏡はバス・ルームに行けば、あるからね。 |
ジョージ |
バス・ルームに行けば、鏡はある。
人前で鏡を出すようなぶざまなことだけは、
やってはいけないですっ。
まあ、香水はひじょうにいいことだと思う。
だけど、パーティ会場における、香水のつけかた、
わかる? |
つねさん |
つけすぎず。 |
ノリスケ |
つけすぎず、だよね。 |
ジョージ |
つけすぎないようにつけるには、
どうすればいんでしょ? |
つねさん |
カラダの下の方につける? |
ジョージ |
体につけちゃいけないんだよ。 |
つねさん |
服? |
ジョージ |
ましてや、洋服にもつけちゃいけないの。
香りがこもるから。 |
ノリスケ |
体と洋服以外なら、髪の毛しかないじゃない? |
つねさん |
靴? ちがうよね。 |
ジョージ |
まず、洗面所に行きます。
洗面所でなくっても、人の目のとどかない、
通路でもどこでもいいです。
行って、カバンの中から香水のフラスコを出して。
右手に持って。右手をまっすぐ、
斜め上45度に伸ばします。 |
ノリスケ |
ああ、わかった! くぐるのね? |
ジョージ |
伸ばして、シューッてひと吹き。
その下をくぐるの。 |
つねさん |
ああ〜〜。 |
ノリスケ |
それ、いつも僕の恋人はそうしてる(笑)。 |
ジョージ |
うん。それはね、
パーティ会場でいちばんいい
匂いの香らせかたよ。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
で、できればそれを、
30分に1回。なんだよ。 |
つねさん |
すごいね。 |
ノリスケ |
それ、トワレだよね? |
ジョージ |
そうそうそうそう。
女性にとって、パーティ会場で
立ち上がるっていうのは、
ものすごく勇気のいることなの。
で、とても楽しいパーティっていうのは、
下手すると3時間続くの。
3時間も続いてお酒飲み続けたら、
オシッコに行かなきゃ
いけなくなっちゃうんだよ。
3時間、ずーっと椅子に
おとなしくに座ってて、
2時間45分目ぐらいに
我慢できなくなってトイレに立ったら、
あの人オシッコに行って
帰ってきたことになるんだよね。 |
つねさん |
うん。 |
ノリスケ |
そうね。 |
ジョージ |
うん。だったらね、30分おきに、
パタッて立ち上がって、
すいません、って言いながら。
パーティ会場のいろーんな人に
挨拶をしながら、ね?
ニコニコニコニコしながら、
お手洗いに行って、
シュッてくぐって帰ってくるの。
で、あの女性は、
30分おきくらいに立つけども、
色んな人に挨拶しながら、
帰ったらいい匂いをつけて帰ってくる。
あ、そっか、軽く化粧直しをするために、
30分に1回立ち上がってるんだー、
って思ったら、そんなかの1回ぐらい、
オシッコして帰ってきても分かんないんだよ。 |
ノリスケ |
ハハハッ、そうだね。毎回してたりして(笑)。 |
ジョージ |
それも、ありよ。それもあり。 |
ノリスケ |
木の葉を隠すのは森なのね。 |
ジョージ |
最悪のシナリオは、
30分に1回立ち上がるんだけど、
帰ってくるたんびにタバコ臭い女ね。 |
つねさん |
ああ〜。 |
ノリスケ |
あー。 |
ジョージ |
これは、だれも相手にしませんっ! |
つねさん |
そうねー。 |
ノリスケ |
やっぱタバコ、吸わないほうがいい?
タバコ吸ってもいい? |
ジョージ |
吸っちゃダメだね。 |
ノリスケ |
吸っちゃダメか。 |
ジョージ |
うん、吸っちゃダメだね。
でもね、個人的にはね、
タバコをほんっとに美味しそうに
吸える女の人って、格好いいなと思うよ。
でも、女の人がね、
タバコを吸って美味しそうに見える年齢って、
50歳以上だと思う。
例えばね、越路吹雪が吸ったタバコって、
奇麗だったろーなー、とかって思うもん。 |
ノリスケ |
女優さんは奇麗だよ。
一流の女優さんて。 |
ジョージ |
うん。 |
ノリスケ |
樋口さんタバコ吸ったら奇麗だもん。 |
ジョージ |
奇麗だろうなと思うよ。
それは、たぶん、
タバコを吸っている自分まで
商品だからだよね。 |
ノリスケ |
そうだね。 |
つねさん |
あー。そうね。 |
ジョージ |
で、タバコをね、例えば、
ニコチン中毒だから吸うような女っていうのは
最低でしょ? 手持ちぶさたで会話がないから、
タバコを口にするような女は、次に最低でしょ?
で、自分を意味あり気に
格好よく見せるためにタバコを吸う、
すべを知っている女だったらば、
だまされてもいいかな? とは思うよね。 |
ノリスケ |
と思う。ちゃーんとね。 |
ジョージ |
で、そこまで演出する自信がなければ、
タバコを吸っちゃダメです。 |
ノリスケ |
パーティ会場でね。 |
ジョージ |
ただ、女の人が持っている、
小ぶりで上質なライターっていうのは、
素敵なものかな、って思うよね。 |
ノリスケ |
ああ〜〜。そういうのが
ハンド・バッグにあったら、
それは、格好いいかな?
でも、吸わないのね。 |
ジョージ |
うん。何でもそうなんだけど、
女の人が手持ちぶさたにしているときに、
手で遊ぶものっていうのを
上質なもので固めると素敵だな、と思う。 |
つねさん |
うーん。 |
ジョージ |
例えば、今の若い女の子がやりがちなのは、
手持ちぶさたなときに携帯電話を出してきて、
携帯電話を遊ぶ? |
つねさん |
メールやる? |
ジョージ |
あるいは、携帯ストラップを
ジャラジャラ鳴らす。
あんまりやりたくないよね。
そうすると、女の人のその小っさいカバンから、
女の人の手に合わせた小さいこぶりのサイズの、
上質なボール・ペンだとか万年筆だとかが
転がりだしてきたとき…… |
ノリスケ |
ああ〜。 |
ジョージ |
で、それをテーブル・クロスの上で、
クルクルクルクル回して遊んでる?
ほーすと紳士は、その万年筆で、
その女の人の携帯電話の電話番号を
書いて欲しいな、って思うよね。 |
ノリスケ |
アハハハ……上等な駆け引きね。 |
ジョージ |
あるいは、ライターだね。
で、ライター別にタバコ吸うわけでもないのに、
ライター、ちっちゃいライター持ってて。
で、持ってるのにホステスに見えない。 |
ノリスケ |
うーん、そうなると難しいねー、ライターは。
もしタバコ吸うんでもさ、
ちゃんとケースに入ってて欲しいな、って。 |
ジョージ |
でも、ボッテガ・ベネタの
ちっちゃーいカバンの中から、
マルボロかなんかの、
くしゃくしゃの紙パックのタバコが出てきたら、
それはそれで、素敵かな?
とは思うけどね(笑)。 |
ノリスケ |
それは、格好いいかなー? そこまでいったらね。
でも、それは本当に上等のテクニックよ。 |
ジョージ |
しかも半分、中折れになったやつを、
ぴゅーって指で伸ばしながら、
口に、震える指先で、
こやって持ってくる、美人っていうのは(笑)…… |
ノリスケ |
それを、旨そーに吸うのね。 |
つねさん |
それ、ニコ中じゃんねー。 |
ジョージ |
なんか、すごい…… |
ノリスケ |
難しいことを(笑)。 |
つねさん |
それ、あの、ストーリー感じるよね。 |
ジョージ |
素敵さじゃなくって、
すごさを感じるよね(笑)。 |
ノリスケ |
そうね。物語を感じるからね。 |
ジョージ |
ほいで、一服つけた瞬間に、
手の震えが止まったりするとかって(笑)ね。
|
※このテーマはこれでおしまい。