ノリスケ |
恋愛をしない女の人っていうの、
何人か見てきたよ。
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つねさん |
超忙しくってー?
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ノリスケ |
理想が高いの。
それをずっと言っているんだけど、
結局、ずーっと誰とも長続きせずに、
歳をとってしまって、
ひどいことになってる。
ひどいことっていうのは、
惨めだって、周りから見ると
思える人になっちゃった。
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ジョージ |
あー。
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つねさん |
それは、なんか……
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ノリスケ |
選んでひとりでいるんじゃない、っていう、
なんかね、なんだろう?
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ジョージ |
でも、あれだよ、人と、
他人といっしょにいるってね、訓練だよ。
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つねさん |
うん。
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ジョージ |
努力しないでは……
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ノリスケ |
いれないね。
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ジョージ |
だって、人を好きになるっていうのも、
努力のたまもので、訓練だもの。
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ノリスケ |
うん。そっか。
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ジョージ |
で、いい訓練を、自らすすんで積まないと、
ぜったいチャンスがやってきても、
つかめないよね。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
むかし、よくね、始まりがあるから
終わりがあるんであって、
始まらなかったら終わらない、
って言ってたことがあるんだよ。
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つねさん |
宝くじみたいなもんだね。
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ノリスケ |
買わなきゃ当たらない(笑)。
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ジョージ |
で、つきあい始めるから、
おつきあいが終わるわけであって。
だから、つきあい始めなければ、
終わることもない。って。
これって、いわゆるあの、
セク・フレ感覚であったり、
あるいは、私は恋人はいないの、
ボーイフレンドがいればいいの、
友だちがいれば、それでいいの。
で、下手すると、友情だって
始まってしまえば終わってしまうから、
友情もいらないの、
とかってのといっしょなんだろうと思うのね。
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ノリスケ |
ああ。ああ。
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ジョージ |
だけど、なんでも終わりは来るんだろうと
思うんだよね。だけど、終わりが、
すべて悪いことではないの。
終わりも自分の糧にしていくことが、
できる自信があればね。
だから、たぶんね、あるていど年取ってから、
恋愛ができない人っていうのは、
ろくでもない別れ方を、
ずーっとしてるんだと思うよ。
あの、終わりだけは、しっかりしようと思うもん。
わりと若いころって、
諦めてしまうことが、
終わりの始まりだったりとか
することが多かったんだよね。
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ノリスケ |
はぁー。
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ジョージ |
諦めが、終わりの理由ではないからね。
諦めて終わるぐらいだったら、
憎しみ合って終わったほうが、
まだ学習機能が働くわけだよ。
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つねさん |
ああ。僕、諦めてたから。
学習してなかった。
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ノリスケ |
諦めるにもさ、いい終わらせ方って、
やっぱりあるじゃない?
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ジョージ |
あるね。
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つねさん |
僕は、何が怖かったかって、
疎遠になっても、ふっと会って、
お? 久しぶりー、って言えることあると思うけど、
けっこう別れたら、
もうそれで終わりっていう人って、多いじゃん?
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ジョージ |
そーね。
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つねさん |
そうなるのが、やだったりとかしたからね。
だから、少なくとも僕は、
その人のこと、すごく好きだった時期があるから、
忘れたくないわけよ。
もちろん憶えてはいるんだけど、
たとえば、それが継続して、
たとえば、それが友情に変わるのであれば、
すごく、それはいいことかなー?
って、思ってた時期はあった。
結局、深手を負う前に? なんか、
こっちから身を引いたら、
僕のほうが、そういうふうに接しやすいじゃん?
うん。っていうんで、なんか、
ものわかり良く、
別れ話を出してた時期はあったよ。
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ジョージ |
んー。そうだね。あとは、
色々ひとりで考えすぎて、
めんどくさくなって止めちゃったことはあるな。
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つねさん |
ああ。
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ジョージ |
つきあい始めてね、軌道に乗りはじめるとね、
その人といっしょにしたいこととかね、
いっぱい出てくるんだよ。
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ノリスケ |
くるね。
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ジョージ |
うん。それでね、なんでもっと前から、
知りあってなかったのかしら? って。
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ノリスケ |
ハハハハハハ。
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ジョージ |
と思うんだよね。
んで、あんなこともしたくって、
こんなこともしたくって、
でも、そういうことっていうのは、
1年にひとつずつくらいしか、潰せなくって。
そしたら今、20あるっていうことは、
20年いっしょにいないとダメなの?
とかって思ったんだよ。
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ノリスケ |
ハッハッハッハッ。
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ジョージ |
で、じゃあ、20年後の僕って、
どうなんだろう? と思ったら、
えーッ?! めんどくさいなー、とかって思って。
んで、やめにしましょっ! って。
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ノリスケ |
やめちゃったんだ。
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ジョージ |
けっこう昔の話だけどね。
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ノリスケ |
今だったら、それ、違うでしょ?
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ジョージ |
今は我慢できるね。
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ノリスケ |
ねえ? 楽しみにさえ、なる。
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ジョージ |
でも、すーんごいいっぱい、
したいことあるんだけど。
やっぱり、ねぇ? いろんな手前があって、
できなかったりとかもするでしょ。
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ノリスケ |
だって、旅行だってさ、
1年に1回か2回、
行ければいいほうなわけだからさ。
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ジョージ |
そう、行きたいところはね、
世界中に、やっぱ4、50はある。
そうすっと、40年かかるぞー、
とかって思うとね。
で、そのうち増えてくるわけでしょう?
行きたいところが。
おー、80歳になっちゃうじゃん、ってね。
お気に入りのところにも、
何回も行きたいしね。
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ノリスケ |
それって、一生かけても行けないよね。
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つねさん |
あ〜、確かにそうだね。
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ジョージ |
あとね、つきあう努力でいうとさ、
役割分担てこと考える。
あのさ、僕らのつきあいっていうのは、
あんまり役割分担を
はっきりさせないおつきあいでしょ?
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ノリスケ |
うん、うん。させてないね。
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つねさん |
それこそ、ほら、子供とかいないから、
お父さんである必要がなかったり、
お母さんである必要がなかったりとかするから。
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ノリスケ |
得意なことは、自分でやるけど、
みたいな感じはあるけど。
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つねさん |
うーん。例えば、彼のために料理を作る、
あなたがいたりとかー。
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ノリスケ |
自分で作ったものが、
いちばん美味しいと思ってるから(笑)。
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つねさん |
だから、好きなことをすすんで、
分担してやるっていうのは、あるよね。
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ジョージ |
逆にそれが、男の人と女の人の関係では、
難しいのかもしんないよね。
女だからこれをやれ、男はこれをやれ。
社会的にいわれている役割分担を、
演じ続けるということは、
自分たちなりのおつきあいじゃなくて、
社会が求めるおつきあいを演じているわけだから、
疲れるだろうね。
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ノリスケ |
きっとね。
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ジョージ |
だから、おつきあいしながら、
自分がほんとうにしたいのは、これです、
あなたがほんとうにしたいのは、何なの?
でも、好きなことばっかりやってたら、
両方がしないことが
いっぱい増えてくるわけだから、
やっぱり、両方が好きでもない、
得意でもないことを、
どうやって分担すればいいのでしょうか?
っていうことを考えればいいのかもしんないね。
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ノリスケ |
ああ……そういう努力、僕、30代になってから、
やっと、できるようになった。
話がちょっと飛んじゃうかもしんないんだけど、
僕、20代の10年間ってさ、
ほとんどさ、恋愛らしい恋愛はしてないの。
とても忙しい会社にいて、
そこで忙しくしていることで
ごまかしてたのね、色んなことを。
出張も多かったから、
四六時中一緒にいるような恋愛は、
できないもん、って。
で、その間にしてた恋愛っていうのは、
……恋愛と言えるかどうかわからないけど、
「誰かを好きになること」でしかなかったの。
ああ、だから、みんながさ、
もうとうに昔にやってたことを、
20代にやってたわけだよ。
ノンケを、……友達を好きになって、
その「好き」という気持ちだけが
僕の支えだったの。
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ジョージ |
あ〜〜、苦し〜。
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ノリスケ |
で、何にもできないじゃない?
とにかくできることは、
お友達になることぐらいなんだよね。
恋人にはなれないわけだから。
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ジョージ |
苦しい〜〜〜。
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ノリスケ |
他にはありえないような、
いい友だち関係になろうと思って、
そのために努力をしたんだけど、
それにはとても時間がかかったの。
恋愛感情をなるべく押さえて、
友だちとして接して。
向こうにも、大事な友だちだと思わせるような、
努力って、とっても大変だったんだよね。
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ジョージ |
あ〜ん、苦し〜〜〜。
不倫以上に苦しい。
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ノリスケ |
とっても大変だったんだけど、
それをね、二丁目に飲みに行くようになったときに、
ああ、いままでの10年って
無駄だったのかな? と、思っちゃった。
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つねさん |
それ、無駄じゃないよ。
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ノリスケ |
もったいないとは思う?
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ジョージ |
無駄ではないけど、
ちょっともったいないかなー。
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ノリスケ |
無駄じゃないよね。そう言ってほしい。
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つねさん |
無駄じゃないけど、空回り?
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ノリスケ |
ほーんと、空回りだよね(笑)。
あれは、何だったんだろう?
あの10年は(笑)。
じゃあ、でも、もっと早く
そういう世界に出てたら
何か変わったのかな? と思うと、
……まあ、変わったんだろうけど。
もうちょっと上手に恋愛してたのかな?(笑)
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ジョージ |
そうだねー。
でも、この世界くらい、
残酷な世界はないかも知んないよね。
ゲイの世界に関しては、
どんなに努力したって
無駄なことがいっぱいあるんだよ。 |
(つづきます)