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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

恋愛の話しましょ。 その5
百万分の、一。

ノリスケ ゲイの恋愛で、努力しても無駄なこと?
……そうだね、たとえば、どんなに努力しても、
振り向いてくれない人を
振り向かせることは、できないね……。
ジョージ

うん。例えば、100人の女の子の目の前に、
スラッとして身なりのしっかりした、
育ちの良さそうな白い歯の男の子が、
ポルシェの鍵を持って、
立っているとするでしょ?
そうすっと少なくとも80人ぐらいは、
いいな、と思うよね?
でも、同んなじような男の子が、
ホモ100人の前に立っても、
多分10人ぐらいの子しか、
いいな、って思わないんだよね。
僕たちっていうのは、
最初っから小さなマーケット、
しかもそのなかの小さなカテゴリー、
マイノリティのなかのマイノリティしか、
対象としてないんだよ。

ノリスケ そうだね。
ジョージ ね? っていうことは、
僕のことを、いい、って
言ってくれている人は……
つねさん 奇特な人なわけ?
ジョージ 百万分の一、なのかもしれないんだよ。
ノリスケ そうだよね。
ジョージ だから、もーう必死だよね。
だけど、そういう意味では、
女の子たちっていうのは、
愛されることに無防備かな、って思うのね。
つねさん あー、だから、そうね。
ジョージ ん、だって、んーと、女の子でね、
23歳で、ピチピチでおっぱいプルンで、
矯正下着なんか着なくってもすむような子は、
ほかのほとんどの女を見て、
「私の方がぜったいもてるんだ」
って思ってるはずだもん。
だけど、もしかしたら、
そうじゃないかもしれないの。
眼鏡だろうが39歳だろうが
小太りだろうがおばさんだろうが、
いいんだよ、って世界が、あるの。
ちょっと想像してね。
自分が絶対的に優れた生きものである、
っていうことを前提で
物事を考えちゃいけない、
って思うよね。
ノリスケ うーん。
ジョージ そうしないと、努力しなくなるよ。
努力しなくなると思うなー。
ノリスケ 努力しなくなった女の子ってね、
見てて切ないんだよね。
もったいないなと思うし。
ジョージ ね。そうなんだよね。あとは、どゆのかな?
必要ない努力を、過剰に積み重ねる人?
ノリスケ ハッハッハッハッハッハ。
例えば?
ジョージ ディテールばっかりにこだわるの。
髪の毛の色だとか、爪の形だとか。
ノリスケ ブランドのバッグだけ、とか?
ジョージ うーん。あとね、男なんていうのは、
女の口紅は取ってしまうためのもんだと思ってる、
その口紅の色ばっかり、だとか。ね?
ノリスケ そうよ。表に見える
ディテールだけじゃないよね。
ジョージ そうなんだよね。
男にとって、若い女を見るときに、
若い女の子がこだわっている、
ありとあらゆるものは、必要悪なんだよ。
例えば洋服、例えば下着、例えばお化粧、
そんなのはぜーんぶ取っ払って、
なくしたものが最大の価値なんだもの。
ノリスケ うん。うん。
ジョージ ねー、そしたら、なんで、なんで、
必要悪なものばっかりにこだわるのかしら、
と思うよね。
そういうのぜんぶ取っ払ったあとのものに、
投資をすればいいのにな。
ま、でも、男の子も同じよね。
脱いだ自分が、
中身空っぽ、じゃあ、
抱いてても、抱かれていても、
仕方がないかも知んないね。
ノリスケ フフフフフフフ。お互いに?
ジョージ お互いに。お互いにね。
でも……うふふ、中身空っぽだけど、
気持ちのいいのもいるのよね〜(笑)。
世の中にはね。フカフカしてるのが。
つねさん うふふふ。あはは。
ノリスケ あは。それもノロケ?
つねさん (笑)ま、どっちにしろ、あれだよ、
好かれたいって思うんだったら、
努力をしなさい、ってことだよね。色んな。
ノリスケ そね。
別れることがあっても、
次へのステップにしないとね。
ジョージ 僕がいちばん長くつきあってた人の話、していい?
中国の人だったんだけど
あの人との別れぐらいに、
素敵な別れはなかったよ。
ノリスケ なーに、それは(笑)。
ジョージ っていうのが、物理的な距離で
別れてしまったわけであって、
心が離れたわけではないんだよ。
ノリスケ うん?
ジョージ あのね、んーとね、
「このまんま一緒にいてもいいんだけど、
 一緒にいると、
 それぞれがダメになってしまうかもしれない」
とか、
「一緒にいても、これ以上楽しくない」
「惰性的な繰り返ししかない」
と思って別れることって、
たまにあるでしょ?
ノリスケ うん。
ジョージ それって、すごい発展的に
別れることなんだよね。
で、発展的な別れの繰り返しっていうのは、
発展的な恋愛につながっていくから、
いいことだと思うの。
そういう意味で、
ものすごい発展的な別れだった。
僕は東京に住んでなきゃいけなくって、
その人はロス・アンジェルスに
戻んなきゃいけなかったから。
それでもね、最初の1年ぐらいは、
つきあってたんだよ。
で、どっちかがどっちかの所を
訪ねてって、
訪ねられないときには中間地点の
ハワイかなんかで会ってたりしたんだけど、
それでもやっぱり、
別々になったほうがいいね、
っていうので別れて。
だから今でも、よく会うよ。
僕がずーっと長いあいだ、ひとりでいて、
決まった人と一緒にいないとね、
いちばん心配してくれるんだよ。
なんでひとりなの? って。
で、この人に決めた、って思うのができると、
必ず会わせるの。
で、消防士さんに会わせたの。
そのときに、
「いい人だけど、たぶんダメだと思うよ」
って言われて(笑)。
つねさん そうなの?
ジョージ そう。
ノリスケ いきなりかい(笑)。
ジョージ で、やっぱり、ダメになったんだよね。
で、後で、「何でそういうふうに言ったの?」
って訊いたら、
消防士さんが僕のことを想ってる分量の方が、
僕がその人を想ってる分量よりも、
大きかったから、って。
ノリスケ ほ〜。
ジョージ しかも、絶対的に大きそうに見えたから。
だって、僕が喋ってるとき、
ずーっと僕の顔しか見ないんだって。
ノリスケ あらま。それってノロケじゃ……
ジョージ そんなぐらい、いい別れが、ありましたっ。
そうですっ、ちょっとノロケてみましたっ。
ノリスケ ハッハッハ。
ジョージ で、でね、それはね、やっぱり、
いい別れをするためには、
いいおつきあいが、
7年間続いたからだと思うんだよね。
けっこう価値観も合って。
生活感も合って、ね。
だから、けっこう、やることも全部、
いちおう、好きでしたっ(笑)。
あー、なんで別れた男のことを
ノロケてるのかしらねえ……?
(このテーマはこれにておしまい。
 次回は
 「ブランドショップで買い物をするということ」
 について、ですよ。お楽しみに〜!)

2001-06-15-FRI

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