APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

お買い物のエチケット その5
賢いハワイ。

ノリスケ お客さんとしてこうありたい、
っていうことでいうと、
ほかにはどんなことがある?
ジョージ うーん、そうね、名前を呼ばれないような
買い物の仕方をしちゃいけない、かな?
つねさん あー、ミスなんとか、
ミスターなんとかって呼ばれて……
ジョージ そうそうそうそう。つまりね、
名前を呼ばれないような
レストランのお客さまになっちゃダメ、
っていうのといっしょなの。
なんでレストランに行くのに
予約をするんだ? っていうと、
忙しいお店のテーブルをキープするために
予約をする、と思ってるでしょう?
ノリスケ あ〜。そう思ってました。
ジョージ だけど、絶対ちがうんだよ。
だって、あ、ちょっと話が
横のほうに行くけど、いい?
ノリスケ いいよ、いい。
ジョージ 昔、ハワイでね、
ちょっといいホテルに泊まってて。
ハワイ島のほうなんだけど、
どんないいホテルでも1週間ぐらいもいると、
ホテルのレストランに飽きちゃうんだよね。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ で、近所のホテルのレストランを、
ちょっと覗きに行きましょうと思って、
車に乗ってリッツ・カールトンに行ったの。
今は、リッツ・カールトンじゃなくて
別のホテルになってるけど。
レストランがけっこういい、っていうんで。
で、レストランに直接行ったら、
「予約をしてるのか?」って言われたのね。
してない、って言ったら、
じゃあ、フロントのほうで予約をしてきて下さい、
でないと、予約をしないお客さんは
入れられないから、って。
ノリスケ そんなに混んでる人気店なの?
ジョージ そうじゃないの。見たら、ガラガラなんだよね。
ガラガラなのに、なんでー?!
と思いながらフロントに行って、
名前を言ったの。男性2人と女性2人、
4人です、って。そしたら、
「食事の目的は?」って訊かれたのね。
ノリスケ その質問、困る……。
つねさん 「おなかすいたから」じゃダメ?
ノリスケ ちがうんじゃなーい?
何て答えたの?
ジョージ 「ハワイに来て、ちょっと飽きたんで、
 ここは夜景が奇麗だと思って来ました。
 べつに特別なパーティじゃないですけど」
って、言ったの。そしたら、あ、分かりました。
3分後に向こうのほうにテーブルの
用意が出来てるから行って下さい。って。
フロントからレストランの間ってさ、
20歩ぐらいしかないんだよ?
ノリスケ ハハハハハ。
ジョージ で、3分、時間潰して、
ほんでレストランの方へ行ったらば、
入り口のところに、
女の子が2人立って待ってくれて
「お待ちしておりました、ジョージさま」
って言うんだよ!
つねさん ほ〜(笑)。
ジョージ そーか、なぜ予約をさせたのか、わかった。
名前を呼びたかったんだー、と思って。
で、行ったらば、
夕日がいちばん奇麗に見えるテーブルでね、
で、しかも、女2人に海が見えるように、
男2人には、その、夕日を背に受けて
座るようにセッティングされてて。
ノリスケ お〜。演出。
ジョージ で、食器もナイフ・フォークも、
女は女用、男は男用になってるの。
ノリスケ 素敵。
つねさん お〜、すご〜い。
ジョージ で、それから2時間ぐらいの夕食の間中、
近づく従業員は、みんな名前を呼ぶの。
ノリスケ お〜。
ジョージ 「いかがですか?」
「そろそろ夕日が奇麗に見える頃です、
 ジョージさま」って言って、
女の子たちが見るわけじゃん?
……うちの母もいたんだけどね。
ノリスケ ハハッ、女の子。
ジョージ ま、身内ですけど。でも、彼女らが言うには、
「いや〜、2人とも、
 すごくりりしい顔に見える!」って。
ノリスケ そうなんだと思った!
夕日を背に、男性が座るということは、
どういうことなのかな?
って、今、考えながら聞いてたの。
ジョージ マネージャーみたいな男の人が言うには、
「実は、このテーブルっていうのは、
 男性が女性に尊敬を集めるテーブルなんです、
 特に今の時間は」だって。
つねさん すごいね〜。
ジョージ あー、これが予約をすることなんだ、
って思うんだよね。で、ほじゃね、
ブランドのお店に行って、
名前を呼ばれるっていうことは
いったい、どういうことなのか? っていうと。
ノリスケ 別に予約して行くわけじゃないし……
ジョージ ……あのね、べつに、最初は、
名前呼ばれなくっても、いいのよ。
ひとりの人が最後まで責任を持って、
売ってくれる、っていうことを、
してもらいましょう、ってことなの。
ノリスケ うん、うんうん。
ジョージ それと、まあ、クレジット・カードのひとつも
サインしたらば、その瞬間から必ず
名前を呼んでくれるような
買い物の仕方っていうこと?
ノリスケ うん、そうだ、それまでは
名前聞かれないんだよね。
ジョージ 椅子に座んなきゃいけないしね。で、
「どうもありがとうございました、○○さま」
って言って、見送ってくれるか。
名前をいちばん最後に呼んでくれて、
お店の外まで従業員が出てきてくれたらば、
自分の今日の買い物は、大成功だった、
と思えばいいんだよ。
その瞬間までね、訓練に訓練を重ねるの。
で、1回それを経験したらね、
2度目からは大丈夫だよ。
それが再現され続けるから。
ノリスケ ああ、それは素敵な買い物の仕方だろうな。
ってことは、そのブランド店のハシゴ、
みたいな、さっきジョージさんが言ってたような
タイプのハシゴではなくてですね、
「これっ、下さいっ! ハイっ、ありがとっ」
バンッ(ドアを閉めるしぐさ)! つって、
はい、次っ、っつって、
「今日1日6軒まわんなきゃいけないんだからっ」
みたいな(笑)、買い物、やっぱり、違うよね。
ジョージ そうだよね。「買い物をする」んじゃなくって、
「買い物を楽し」まなきゃいけないんだよね。
で、そうすると、例えばハワイなんかで、
カラカウワ通りとか、アラモアナ・
ショッピング・センターとか、
もう1軒おきにブランドの
お店なわけじゃない?
で、それを、例えば
4日間ぐらいのステイだとしたら……、
ハワイに着くよね、早朝着いちゃうじゃん。
そしたらば、ホテルの、まあ、
ダイレクト・チェック・インなら
まだいいんだけど、
チェック・インできなかったら、
ホテルに荷物を置くだけで、
着替えもできずに放り出されるんだよね。
ノリスケ うん、そうかー。
ジョージ それこそ、いいチャンスなんだよ。
着替えをしてないっていうことは、
飛行機に乗ってバカにされない
格好をしているわけだから、
そしたらまず、リゾート・ウエアに着替える前に、
それじゃあ、ブランドのお店をちょっと、
見て歩きましょう、っていうのに、
ぴったりの格好なわけよ。
つねさん そうかー!
ジョージ それで、まずルイ・ヴィトンから始まって
クリスチャン・ディオールとかね。
それから、ま、こっち側に行くと
ブルガリがあって、その横にシャネルがあって、
とかっていうのを、
まずは買い物をする気持ちじゃなくって、
お店を見に行くの。
ノリスケ ゆったりね。
ジョージ そう。で、あ、ここのお店の従業員の人たちは
こういう格好してる、
あ、バカな買い物客がいっぱいいる、
どうしたんだろう? こういうお店だったら、
私はこういう格好をして来るのが
おしゃれだと思うなー、とかって
思いながら歩くの。
ノリスケ もう余裕ね。
つねさん すごいね〜。
ジョージ そいで、たとえばブルガリとかに入ると、
「いや、ここは入っちゃダメなんだ」
とか、考えるの。
私は呼ばれてないんだー、
あー、ダメだダメだ……というのも、大事です。
んで、行ったり来たりしながら、
いちばん外れにエルメスがあったり、
その先にグッチがあったりとかするんだよ。
そうすると、あ、けっこうここのエルメスって、
なんか面白いおみやげ物、
タオルとかいっぱいあるじゃーん。
で、グッチのほう行くと、
あ、ここはわりとサンダル履きで
来てもいいような感じのお店なんだー、
とかって思いながら、昼ご飯に行くの。
つねさん はぁ〜。
ジョージ そうするとね、今回のお買い物の攻略マップ、
あるいは、攻略スタイルっていうのが、
自分の中で出来るんだよね。
したら、たとえばエルメスとかっていうのは、
ちょっとドレス・アップしなきゃいけないなー、
そしたら晩ご飯どこそこで食べる予定だから、
晩ご飯食べるときに当然
ドレス・アップするだろうから、
晩ご飯食べる前にちょっと覗こう、とかね。
で、一挙にぜんぶ見て回るんじゃなくて、
どうせ近いところにバラバラあるんだったらば、
こういう格好しているときにあそこに行こう、
それは明後日の何時ぐらいだー、
とかって思いながら、時間の使い方を、
自分でプロデュースするの。
と、すーごい賢いハワイになるの。
(つづきますよ)

2001-06-22-FRI

BACK
戻る