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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

お買い物のエチケット その7
がんばったご褒美に。

ノリスケ こないだね、女のひとから、
「30歳になる記念に、
 がんばって働いてきたご褒美に、
 自分に何かちゃんとしたものを
 買いたいと思うんだけれど、
 何を買ったらいいと思う?」
って、訊かれたの。
ジョージ ちゃんとしたものかー。
あ、僕ね、ま、いま自分が欲しくて
探してるっていうのもあるんだけど、
働いている女の人であれば、ある。
ノリスケ なあに?
ジョージ 名刺入れの、いいもの。
ノリスケ おお!
ジョージ 僕ね、うちの会社の女の子達には、
30歳になると、必ず名刺入れ、あげるの。
っていうのが、働いてる女の人で
20代から決別して30代になるっていうことは、
それまではずっと、
匿名の人間として働いているわけじゃない?
ノリスケ うん。
ジョージ だけど、30になっても
働き続けるっていうことは、
匿名ではなくって
自分自身として働かなくっちゃいけなくって、
で、仕事の上で自分を証明する
唯一のものが名刺なんだよ。
で、自分の名刺を
大切に扱うということからも、名刺入れ。
で、あと、当然、30過ぎてくると、
女の人でもお客さんと名刺交換をする
機会が増えるでしょう?
そのときに名刺交換する相手っていうのは、
20代の女の子の名刺交換……
例えば合コンの男の子とは違う話なのね。
ノリスケ うん(笑)。
ジョージ そうすると、頂いた自分よりも
ずーっとキャリアの長い男の人、女の人の、
名刺を大切に扱わせて頂くという意味でも、
品の良い、上質の名刺入れをひとつ。
で、その名刺入れに合わせて、小物?
たとえば、ま、ルイ・ヴィトンばっかりの
話が出ちゃうけど、
ルイ・ヴィトンではおんなじシリーズで
名刺入れと筆箱と、それから、メモ・パッド、
手帳ケースでしょ? そういうものが揃ってるから。
ノリスケ ステーショナリーが。
ジョージ うん。で、そういう類いのものを、
ちょっとまとめ買いをするといいと思うよ。
で、お店の人に頼んで、
すいません、これギフトなんです、って言って、
ギフト・ボックス入れてもらうの。
ノリスケ 素敵。
つねさん あー、いいなー。
ジョージ リボンをかけて。で、持って帰る。
つねさん で、おうちで……
ジョージ そう、開けるんだよね。
でね、いいお店のギフト・ボックスっていうのは、
すーごくしっかり出来てるから。
ノリスケ それ自体が?
ジョージ それ自体が。たとえば、便箋入れとか、
あるいは大切な手紙入れとかに使えるよ。
スカーフとかを入れておくのにも、
すごくいい箱だから。
ギフト・ボックスに入れて、持って帰る。
これ、お勧めです。
ノリスケ いいと思う!
つねさん ほ〜、なかなか、良さげ。
ジョージ ねっ?
ノリスケくんはどういうものが
いいと思う?
ノリスケ 時計。たまたま、いま僕、時計欲しいからだけど。
時計って高いから、
理由が必要でしょう?
30歳になったから、とかっていうのは
良い理由だと思うの。
ジョージさん、どういうときに
時計買ってきたの?
ジョージ 僕は、やっぱり、
自分のイメージを変えたいとき。
決心するとき。
つねさん あ、そうなの?
ジョージ うん、そうだよ。
つねさん 何を決心したの?
ジョージ んーとね、ちなみにこの時計の決心はですね……
ノリスケ パテック・フィリップなのね(笑)。
ちなみに、ステンレス・スティールで、
パテック・フィリップらしくない、
カジュアルな印象ですっ。
ジョージ (笑)ずーっと、ほら、あの、
金むくの超高級系だったでしょ?
ノリスケ ブランパンだったわよね(笑)。限定品。
つねさん 車が1台、買えちゃいそう。
ジョージ あれって、自分の中でも
背伸びがあったんだよ。
ノリスケ あれはねぇ、ま、あれを見ちゃったら、
ジョージ 引くでしょ〜?
ノリスケ 引いた。
すごい強かったもの。
「どうだっ!」っていう、強気オーラ。
つねさん 僕、よく分かんなかった(笑)。
ジョージ でね、そのー、引かせて喜ぶ
自分とかがいるんだよね。
押し、だよ。で、その、押さないといけない、
心の片隅には、弱い部分があって、
その克服のためなんだよ。
だけど、もう40も過ぎてね、
そろそろ押さなくっても……
ノリスケ (笑)
つねさん もう、じゅうぶん押しがきく、と。
ジョージ そう。なんか、ほっといても、
顔で押しがきいたりとかするように
なっちゃったし。
まわりの人たちが、押してくれてるんだよ、僕を。
だから僕は、引かないことには、
ポーンと押し出されて、
1人で前へ出るような感じになっちゃうから。
つねさん そしたら、まわりの子は育たないし。
ノリスケ だれもついて来なくなっちゃうね。
ジョージ うん。洋服も、なんか、
エルメスを中心としたフレンチ・シックみたいな、
けっこう派手やかなものから、
ちょっとイタリア系に。
つねさん ゼニアとか?
ジョージ そう、黒が中心で。
ノリスケ 気分としては、労働着だね。
ジョージ そう。っていうのに、なり始めると、
なんか、腕時計も、金色よりもこんな方が、
いいかなっ? っていう。
これは多分4、5年続くと思うよ。
でも5年ぐらいたったら、
もいっかい狂ったように買うかも。
それはそれで面白いかなー?と思って。
つねさん いんじゃないの。
ジョージ 腕時計っていうのは、
男にとっての唯一のアクセサリーじゃない?
ノリスケ そうよねえ、外見男だからねえ。
腕時計って、他の何にも……
結婚指輪をしない人でも、するから。
つねさん するよね。
ジョージ だからこそ、どゆのかなー?
自己表現をする? しかも、
他人に対して表現するだけでなくって、
時間を見るっていう日常的な行為のなかで、
絶えず確認をするわけでしょ?
ノリスケ うん。
ジョージ で、自分が決めた自分のイメージを、
自分で確認するものが腕時計だとしたら、
そこに価値も持てないっていうのは、
なんか、自分の生き方に、
ぜんぜん価値を持ってないって
感じがするんだよね。
ノリスケ うん。
ジョージ だから、女の人だったら、
自分がつきあってる男の子を
イメージ・チェンジさせたいっていうふうに、
ぜったい思うと思うんだよ。
で、イメージ・チェンジっていうと、
なんか知んないけど、こう、洋服を買ってみたり?
あるいは、男の子のワード・ローブを
勝手にいじって、自分が気に入らないのを
捨てさせてみたりとか、ね?
ノリスケ (笑)。
ジョージ で、ネクタイ、プレゼントしたりとか
するんだけど、そういうのって、なんか、
一瞬にしてほどけちゃうんだよ。
ネクタイ外したら終わりだし。
ノリスケ うん、そうだね。
ジョージ スーツ買ったって、
着たきりスズメになるわけにいかないし。
で、少々高くったって、ほんとに、
この人としばらくつき合っていこうと思ったら、
2人でもって相談して、
ちょっといい腕時計をね、
2人で、買ってみるとかね。
そういうプレゼントの仕方っていうのも、
面白いかな? と思うよ。
ノリスケ なるほどね〜〜!
つねさん 勉強に、なりましたっ。
ジョージ ……それで、ちょっと話が変わるけど、
どういう時計を買うつもりだったの?
ノリスケくんは。
ノリスケ それがねえ……
ぼく、欲しいものができると
そのことばっかり考えちゃうのね。
今回も、カタログや時計雑誌、
いっぱい見てたんだけど、
だんだんゲップが出てきちゃった……。
つねさん あはは、わかる。
ノリスケ カタログだけじゃなーって、
お店もいろいろ回って、
「試しにつけてみる」ということをしてみた結果、
がーん。ほしいものがはっきりしてしまいました。
とっても高い時計と、目が合っちゃったの。
それ以外はほしくない……。
すべてが色あせて見える……。
でもね、絶対に、買えないの、その時計は、
今の僕には。
もちろんお金もないんだけど、
もしあったとしても、
それを買う自分では、まだ、ないの。
悲しー。
ジョージ そんなものよね。
良くわかる、その気持ち。
僕も20代の頃は、色んなモノをみて
店に行って身に付けてみたりして
それでも買う自信がなくて
カタログの写真をノートに貼って我慢してたよ。
つねさん 最初からお金があったわけじゃないのね。
ジョージ ウン。僕の場合は
我慢の20代、
欲望の30代、
整理の40代…って具合になってたような気がする。
振りかえってみるとね。
つねさん てことは、30代では買いまくりだったのね。
ジョージ そうなの。30の時に、ある程度、
お金の自由が出来たりしたもんだから、
買った、買った、買った、買った。
もうげっぷが出るぐらい買ったよ。
凄かった。
店に行って2つ、3つ、みて、
どれにしよう、って迷ったら
取り敢えず買ってみる…とかって
買いかたしてたから。
ノリスケ なにか、追われているみたい。
それか、なにかの免罪みたい。
満足した?
ジョージ それがね、不思議なのが、
そうやって買っていくと
「自分の買える範囲のモノ」は
もう欲しくなくなってくるの。
例えば時計にしても、もう欲しいなって思える物は
100万円台の前半じゃなくて後半、
つまり四捨五入すると
1000万円の時計になってきちゃったの。
もうそうなると大変で、
スーツだって四捨五入で100万円台。
つまり「四捨五入で一桁上」の欲望になっちゃうのよ。
ノリスケ ぎょえ〜〜〜〜!
つねさん はー(溜息)。
ジョージ その時、チョッと悩んだの。
どう悩んだか? って言うと、
「自分の好きな物も自由に買えない
 自分が不憫だ、不自由だ」
って思っちゃうようになった。
自己嫌悪だよね。
ノリスケ あーあ。
レベルが、凄すぎるわよ。
ジョージ で、そんな繰り返しの中でこう思うようにしたの。
「自分の意識だけが
 一クラス上に到達しただけなんだ」って。
そうすると楽になって、
「身のほど」の生活が楽しくなってきたよ。
そんなこんなで、
金無垢限定販売物ブランパンを棄て、
ステンレスツチールの
パテック・フィリップこんにちは、って
具合になったわけ。
だから、いま、とても、快適っ。
ノリスケ その境地は、遠いわー。
目指してんのか、って言われても
わからないくらいだわ。
でもなあ、難しい、時計選ぶのって。
人生観を問われているような気がして。
とりあえず、その欲しい高い時計は
「とっとく」ことにするね。
ジョージ そうするといいと思うよ。
でも、買える時にはもう
他の物が欲しくなってるんだけどね(笑)。
つねさん ふえ〜〜。
ノリスケ 気分は仕切り直し!
ジョージ そう、人生は、仕切り直しの連続よ。
そう言えばボクも、
最近、買いたいものが
向こうからやって来たんだけど、
チョッと高かったんで、未だに買えずにいる…
そんな経験をしたんだよ。
ノリスケ それは何?
ジョージ ふふふ。
つねさん ふふふ、て! 言いなさい!
ジョージ あのね…………バリ島のホテルっ。
つねさん
&ノリスケ
ほーてーるーーー!?!?
ジョージ アマヌサと同じ設えでね、
ビラばっかり20棟なの。
全棟プール付き、敷地二万坪で6億円だって。
誰か買う人いないかなー。
買ってくれたらボクが
キッチリ管理してあげるのになー!
(……。このテーマはこれにておしまい!
 次回もお楽しみにねー!)

2001-06-25-MON

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