ノリスケ |
すっごーく基本的なこと訊いていい?
ナプキンを広げるタイミング。
テーブルの上に最初っからあるじゃない?
レストランによっては、
かけてくれるとこ、あるよね。
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ジョージ |
基本的には、座って食前酒を注文したら、
もうナプキンは、ひざの上にね。
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ノリスケ |
あれさ、三角形にするもの?
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つねさん |
べつに、いんじゃないの?
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ジョージ |
あー、それはね、
いろんなスタイルがあるんだけど、
いちばんいいのは……
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つねさん |
四角?
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ジョージ |
そう。正方形を、横半分に折って膝の上。
それで、折り目を、向こう側。
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つねさん |
ああ、そう? 逆にしてた。
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ノリスケ |
手前で、こう、拭いて、隠せるから?
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ジョージ |
そう。で、ナプキンが何であるかっていうと、
グラスであるとか食器であるとかを、
不必要に汚さないためにあるんだよね。
これは、ほんとに、
エチケットのためにあるの。
で、食べるでしょ? ちょっと食べて、
口が脂っこくなったなと思ったら、まず拭くの。
一口食べたら拭く。で、ワインを飲めば、
グラスが脂っぽくならないの。
で、女の人は、できれば、んー、
今日、いいイタリア料理屋さんとか
フランス料理屋さん行って、
ワインを飲むかも知れないな、と思ったら、
口紅を軽くティッシュで押さえて、
半ば拭き取っといたほうがいいね。
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つねさん |
もしくは、付かない口紅にするとか。
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ジョージ |
んー、そうね。昔、僕、仕事でね、女の人は、
いったい、どういう風に食事をしてるんだろう、
っていうのを体験しようというので……
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つねさん |
ハッハッハ! 口紅をつけたの?
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ジョージ |
口紅をつけ、つけ爪をつけ、
で、胸を搾って? ウエストぜんぶ締めて、
それで食べたことあるもん。
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つねさん |
ハート・オブ・ウーマン?
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ジョージ |
んー、そんなもんだよねー。
でさ、味、変わるんだよ!
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つねさん |
つけ爪ってさ、すっごい食べづらいよ!
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ノリスケ |
やったことあるんかい!
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つねさん |
ふふ。
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ジョージ |
爪が長いとナイフ・フォークが使えない。
硬いお肉が切れない。
でね、いちばんびっくりしたのはね、口紅。
パスタと焼き鳥の味が、ものすごく変わる。
女の人って!
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つねさん |
あー、そうなの?
食品によって、変わるんだ。
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ジョージ |
うん。唇で口の中に
たぐりよせないといけないものの味が、
すごく変わるの。
美味しくないんだよー。
だから、あの、口紅がギトギトついてる女が
メシ食って、ああ美味しい、っていうのは、
信用しないことにしてるの。
もう、テレビ見てても、
ぜーんぶ、こいつらウソついてんだろうと思う。
でね、グラスについた口紅を、
ナプキンでもって自ら拭い取るぐらいに
見苦しい女はいないわ。
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ノリスケ |
あーっ! いるねー。
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ジョージ |
いるでしょ。キュッ、キュッ、キュッ、て。
そんなのは、ウエイターにさせなさい。
あんた、チップ欲しいの? って思っちゃう。
だめよ、そんなことしちゃ。
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つねさん |
ハハハハハハッ。
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ノリスケ |
それは、マナーの勘違いなのね。
でも、ついちゃったらどうするの?
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ジョージ |
ほんとにベタッとついたら、
呼んで変えてもらっていいの。
でも、その前につかない工夫をね。
……あとはテーブル・マナーに従って、だよね。
でも、あんまり堅苦しく考えなくっていいのよ。
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ノリスケ |
でもねー、じつは、メニューを決める、
っていうことがさ、けっこう大きくない?
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ジョージ |
うん。迷ってると、何度も何度も、
ウエイターが来たりとかするものね。
もう、お決まりになりましたか? って。
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つねさん |
ああ。困る!
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ジョージ |
もう、どんどん言いなさいよ。ね。
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つねさん |
あー、何を? どんどん、って?
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ジョージ |
もう少し待って下さい。
まだ決まりませんっ。
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つねさん |
それは、OKなの?
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ジョージ |
大丈夫。
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ノリスケ |
そうだよねえ、だって、
メニューを決めるのって、
かなり楽しい時間なはずなんだよ。
その時間ていうのは。
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つねさん |
そうだねー。
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ジョージ |
一般的なお店だと、前菜があって
メイン・ディッシュがあって、
前菜とメイン・ディッシュを
一時に決めなきゃいけない、
と思い込んじゃってるけど、
べつに、とりあえず前菜だけ頼んで、
でそのあとメニュー持ってきてもらって、
「あの前菜に合わせて
メインはどれにすればいいのかな?」
って聞いてもいいしね。
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つねさん |
は〜。
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ジョージ |
前菜、ちょっと違った感じだったんで、
って言ってもいいし。
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つねさん |
あ、そういうのOKなんだ。
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ジョージ |
うん。
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ノリスケ |
そうね。最初に頼みすぎちゃって、
途中で、やっぱり、もうパスタはいいです、
っていうのも、失礼だしな。
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ジョージ |
ただね、いちばん最初に、
一度に注文することの良さっていうのもあるの。
それは、比較的短時間でもって
食事を終えるっていうことだけだからね。
でも、今日はべつに3時間晩ご飯食べてもいいや、
って思ったら、もう、悩むだけ悩んで!
食べたいものだけ注文して。
足りなかったら、また追加注文をして、
っていうんで、ぜんぜん大丈夫。
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つねさん |
日本ぐらいだもんね、
あんな早い時間で食べてしまうのって。
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ジョージ |
んー、そうだよね。そうだよね。そうなんだよ。
あとはシチュエーションに応じた
バリエーションで、何軒か確保しておく。
で、そこで訓練をすることよ!
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つねさん |
徐々に馴らしていったらいいわけでしょ?
それこそさっきの予約のやつだって、
外国でいきなりは出来ないから、
最初日本のやつでそういうことやって、
試してみて、で、向こうでやったらいいのね。
要領って、おんなじだもんね。
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ジョージ |
そ。ただ、それを日本語で
言わなくちゃいけないか、
英語で言わなきゃいけないか、だから。
コンシェルジェにお願いするときもね、
日本で予約しなれてれば、
日本で予約をするときに言うようなこと、
あらかじめ書いて、コンシェルジェに渡すの。
で、これ、伝えて下さい、って言えばいい。
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ノリスケ |
うん、うん。
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つねさん |
で、そんときに、上目遣いに、おねが〜い(笑)。
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ノリスケ |
かわいく(笑)。目はハート!
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つねさん |
いいよねー、この人、40だよ? 40。
ハッハッハ。
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ジョージ |
でも、あれだよね、レストランとか行っても、
よく憶えてもらえるよ。
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つねさん |
そうなのよねえ……(笑)。
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ノリスケ |
あ〜、あ〜。そりゃ、憶えられるでしょ、
あんたたちみたいな、濃ゆいのは。
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ジョージ |
ちがうわよっ、プリティなお客さま、っていう(笑)。
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つねさん |
でもさ、新宿にあるうどん居酒屋でも、
まいどっ! って言われる……
たいして行ってないのに……
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ジョージ |
3、4回行くと、もう、
自分の店になるようなものよ。
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ノリスケ |
強気……。
得だね、それ。
憶えてもらえない、っていうのは、
悲しいよね。
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ジョージ |
大切なのは、つぶらな瞳! キラキラッ!
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ノリスケ |
……べつにさあ、上目遣いになんなくても。
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ジョージ |
だめよ。やっぱりね、
光線出さなきゃいけないんだよ。
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つねさん |
ああ、あの、あまえた光線。
ビビビッ!
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ジョージ |
だってさ、高級ブランド・ショップで必要なのは、
背筋なわけじゃない?
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
それで、ご挨拶でしょ?
だけど、レストランでは、
美味しいもの食べたい光線!
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つねさん |
あ〜っ。
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ノリスケ |
期待に満ちた!
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ジョージ |
そうそうそう。
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ノリスケ |
食べさせてーっ、て?
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つねさん |
あと、これがいちばん得なんだけど、
美味しいものを食べたときは、
ちゃんと感動をあらわすよね。
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ジョージ |
美味しい、すっごーい美味しいーっ!! て言う。
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ノリスケ |
感動の大騒ぎをするの?
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ジョージ |
そう。
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つねさん |
感動の大騒ぎ、して、店の人に聞こえるように。
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ジョージ |
(全身をうちふるわせて)
バタバタバタバタッ、てするんだよね。
これはね、必要!
ノリさんも、やってるはずよ。
だって、こないだ一緒に行ったレストランの
オーナー、あなたのこと憶えてたわよ。
「あの、キュートなお友達、
また連れてきてね」
って。
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ノリスケ |
あら、やだ…………でもまあ、たしかにそうよね。
前にベルギーの、
田舎のレストランで驚かれたもん。
日本人いっぱい来たけど、
あなたほど美味しそうに食べる人は、
はじめてよ、って、
店のおばちゃんに言われて。喜んでもらえた。
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ジョージ |
そう。美味しそうに食べるのって、大切よ!
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(つづきまーす)