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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

賢いレストラン その5
美味しいもの食べさせて光線キラキラッ!

ノリスケ すっごーく基本的なこと訊いていい?
ナプキンを広げるタイミング。
テーブルの上に最初っからあるじゃない?
レストランによっては、
かけてくれるとこ、あるよね。
ジョージ 基本的には、座って食前酒を注文したら、
もうナプキンは、ひざの上にね。
ノリスケ あれさ、三角形にするもの?
つねさん べつに、いんじゃないの?
ジョージ あー、それはね、
いろんなスタイルがあるんだけど、
いちばんいいのは……
つねさん 四角?
ジョージ そう。正方形を、横半分に折って膝の上。
それで、折り目を、向こう側。
つねさん ああ、そう? 逆にしてた。
ノリスケ 手前で、こう、拭いて、隠せるから?
ジョージ そう。で、ナプキンが何であるかっていうと、
グラスであるとか食器であるとかを、
不必要に汚さないためにあるんだよね。
これは、ほんとに、
エチケットのためにあるの。
で、食べるでしょ? ちょっと食べて、
口が脂っこくなったなと思ったら、まず拭くの。
一口食べたら拭く。で、ワインを飲めば、
グラスが脂っぽくならないの。
で、女の人は、できれば、んー、
今日、いいイタリア料理屋さんとか
フランス料理屋さん行って、
ワインを飲むかも知れないな、と思ったら、
口紅を軽くティッシュで押さえて、
半ば拭き取っといたほうがいいね。
つねさん もしくは、付かない口紅にするとか。
ジョージ んー、そうね。昔、僕、仕事でね、女の人は、
いったい、どういう風に食事をしてるんだろう、
っていうのを体験しようというので……
つねさん ハッハッハ! 口紅をつけたの?
ジョージ 口紅をつけ、つけ爪をつけ、
で、胸を搾って? ウエストぜんぶ締めて、
それで食べたことあるもん。
つねさん ハート・オブ・ウーマン?
ジョージ んー、そんなもんだよねー。
でさ、味、変わるんだよ!
つねさん つけ爪ってさ、すっごい食べづらいよ!
ノリスケ やったことあるんかい!
つねさん ふふ。
ジョージ 爪が長いとナイフ・フォークが使えない。
硬いお肉が切れない。
でね、いちばんびっくりしたのはね、口紅。
パスタと焼き鳥の味が、ものすごく変わる。
女の人って!
つねさん あー、そうなの?
食品によって、変わるんだ。
ジョージ うん。唇で口の中に
たぐりよせないといけないものの味が、
すごく変わるの。
美味しくないんだよー。
だから、あの、口紅がギトギトついてる女が
メシ食って、ああ美味しい、っていうのは、
信用しないことにしてるの。
もう、テレビ見てても、
ぜーんぶ、こいつらウソついてんだろうと思う。
でね、グラスについた口紅を、
ナプキンでもって自ら拭い取るぐらいに
見苦しい女はいないわ。
ノリスケ あーっ! いるねー。
ジョージ いるでしょ。キュッ、キュッ、キュッ、て。
そんなのは、ウエイターにさせなさい。
あんた、チップ欲しいの? って思っちゃう。
だめよ、そんなことしちゃ。
つねさん ハハハハハハッ。
ノリスケ それは、マナーの勘違いなのね。
でも、ついちゃったらどうするの?
ジョージ ほんとにベタッとついたら、
呼んで変えてもらっていいの。
でも、その前につかない工夫をね。
……あとはテーブル・マナーに従って、だよね。
でも、あんまり堅苦しく考えなくっていいのよ。
ノリスケ でもねー、じつは、メニューを決める、
っていうことがさ、けっこう大きくない?
ジョージ うん。迷ってると、何度も何度も、
ウエイターが来たりとかするものね。
もう、お決まりになりましたか? って。
つねさん ああ。困る!
ジョージ もう、どんどん言いなさいよ。ね。
つねさん あー、何を? どんどん、って?
ジョージ もう少し待って下さい。
まだ決まりませんっ。
つねさん それは、OKなの?
ジョージ 大丈夫。
ノリスケ そうだよねえ、だって、
メニューを決めるのって、
かなり楽しい時間なはずなんだよ。
その時間ていうのは。
つねさん そうだねー。
ジョージ 一般的なお店だと、前菜があって
メイン・ディッシュがあって、
前菜とメイン・ディッシュを
一時に決めなきゃいけない、
と思い込んじゃってるけど、
べつに、とりあえず前菜だけ頼んで、
でそのあとメニュー持ってきてもらって、
「あの前菜に合わせて
 メインはどれにすればいいのかな?」
って聞いてもいいしね。
つねさん は〜。
ジョージ 前菜、ちょっと違った感じだったんで、
って言ってもいいし。
つねさん あ、そういうのOKなんだ。
ジョージ うん。
ノリスケ そうね。最初に頼みすぎちゃって、
途中で、やっぱり、もうパスタはいいです、
っていうのも、失礼だしな。
ジョージ ただね、いちばん最初に、
一度に注文することの良さっていうのもあるの。
それは、比較的短時間でもって
食事を終えるっていうことだけだからね。
でも、今日はべつに3時間晩ご飯食べてもいいや、
って思ったら、もう、悩むだけ悩んで!
食べたいものだけ注文して。
足りなかったら、また追加注文をして、
っていうんで、ぜんぜん大丈夫。
つねさん 日本ぐらいだもんね、
あんな早い時間で食べてしまうのって。
ジョージ んー、そうだよね。そうだよね。そうなんだよ。
あとはシチュエーションに応じた
バリエーションで、何軒か確保しておく。
で、そこで訓練をすることよ!
つねさん 徐々に馴らしていったらいいわけでしょ?
それこそさっきの予約のやつだって、
外国でいきなりは出来ないから、
最初日本のやつでそういうことやって、
試してみて、で、向こうでやったらいいのね。
要領って、おんなじだもんね。
ジョージ そ。ただ、それを日本語で
言わなくちゃいけないか、
英語で言わなきゃいけないか、だから。
コンシェルジェにお願いするときもね、
日本で予約しなれてれば、
日本で予約をするときに言うようなこと、
あらかじめ書いて、コンシェルジェに渡すの。
で、これ、伝えて下さい、って言えばいい。
ノリスケ うん、うん。
つねさん で、そんときに、上目遣いに、おねが〜い(笑)。
ノリスケ かわいく(笑)。目はハート!
つねさん いいよねー、この人、40だよ? 40。
ハッハッハ。
ジョージ でも、あれだよね、レストランとか行っても、
よく憶えてもらえるよ。
つねさん そうなのよねえ……(笑)。
ノリスケ あ〜、あ〜。そりゃ、憶えられるでしょ、
あんたたちみたいな、濃ゆいのは。
ジョージ ちがうわよっ、プリティなお客さま、っていう(笑)。
つねさん でもさ、新宿にあるうどん居酒屋でも、
まいどっ! って言われる……
たいして行ってないのに……
ジョージ 3、4回行くと、もう、
自分の店になるようなものよ。
ノリスケ 強気……。
得だね、それ。
憶えてもらえない、っていうのは、
悲しいよね。
ジョージ 大切なのは、つぶらな瞳! キラキラッ!
ノリスケ ……べつにさあ、上目遣いになんなくても。
ジョージ だめよ。やっぱりね、
光線出さなきゃいけないんだよ。
つねさん ああ、あの、あまえた光線。
ビビビッ!
ジョージ だってさ、高級ブランド・ショップで必要なのは、
背筋なわけじゃない?
つねさん あ〜。
ジョージ それで、ご挨拶でしょ?
だけど、レストランでは、
美味しいもの食べたい光線!
つねさん あ〜っ。
ノリスケ 期待に満ちた!
ジョージ そうそうそう。
ノリスケ 食べさせてーっ、て?
つねさん あと、これがいちばん得なんだけど、
美味しいものを食べたときは、
ちゃんと感動をあらわすよね。
ジョージ 美味しい、すっごーい美味しいーっ!! て言う。
ノリスケ 感動の大騒ぎをするの?
ジョージ そう。
つねさん 感動の大騒ぎ、して、店の人に聞こえるように。
ジョージ (全身をうちふるわせて)
バタバタバタバタッ、てするんだよね。
これはね、必要!
ノリさんも、やってるはずよ。
だって、こないだ一緒に行ったレストランの
オーナー、あなたのこと憶えてたわよ。
「あの、キュートなお友達、
 また連れてきてね」
って。
ノリスケ あら、やだ…………でもまあ、たしかにそうよね。
前にベルギーの、
田舎のレストランで驚かれたもん。
日本人いっぱい来たけど、
あなたほど美味しそうに食べる人は、
はじめてよ、って、
店のおばちゃんに言われて。喜んでもらえた。
ジョージ そう。美味しそうに食べるのって、大切よ!
(つづきまーす)

2001-07-05-THU

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