ジョージ |
レストランによって、
エレガントを目標としてるところと、
粋を目標としてるとこって違うじゃない? |
ノリスケ |
お〜。 |
ジョージ |
で、粋に食べなきゃいけないところで、
エレガントに食べようとするのも妙よ(笑)。
寿司屋で、じっくりじっくり時間をかけて、
味わいながら頂いては、ダメよ。
寿司屋、天ぷら屋、蕎麦屋。
これは、30分から40分で、
食って出なきゃ、ダメよね。
女の人で、どうだろう?
程度のいい馴染みのお寿司屋さんを
一件、持っておくっていうのは? |
ノリスケ |
かっこいいと思う!
いいお寿司屋さんの
6時半から7時半ぐらいの間って、
あんまり混んでないんで。 |
つねさん |
へええ。
銀座あたりの有名なお店でも? |
ジョージ |
大丈夫よ。
予約もなんにもしなくていいから。
入って、
「すいません、こういうところ
慣れてないんですけれども、
今日は美味しいのを
お任せでちょうだいしたいので」
って、丁寧に言います。 |
つねさん |
予算は? お任せって怖くない? |
ジョージ |
ううん、そう言えば、向こうがね、
「予算これぐらいになってますけど、
それでいいですか?」って言うよ。 |
つねさん |
ああ、言ってくれるんだ。 |
ジョージ |
で、言わなかったら、
そのお店はあんまり信用できないな、
と思っていい。ま、二度と行かなきゃいいわけで。 |
つねさん |
それも、じゃあ、お勉強なんだ。 |
ジョージ |
そう。で、じゃあ握るね、
って言ってくれたら必ず、
「あんまり時間もないもので、
せかせるようで申し訳ないんですけれども、
30分くらいでお願いできませんか?」
って言うの。そうすると、
「このねえちゃん、分かってる!」
って、思われるよ。 |
ノリスケ |
1時間いちゃ、いけないの? |
ジョージ |
だって、おねえちゃん座ってるその1席、
1時間いられちゃったら、
1万5千円、2万円払ってくれるお客さんが
後で来たとき入れない。
だから、30分なら、いいっ、
ってことになるの。 |
つねさん |
は〜。 |
ジョージ |
そうするとね、ふつう、ここ座ったら
1万円かかるんだけど、
7千円で帰してやろうじゃないか、
って、なると思う。 |
ノリスケ |
おお〜、粋だねー。 |
つねさん |
お寿司屋って、
けっこうそういうとこあるよね、なんかねー。 |
ジョージ |
うん。それで、適当につまんでね。
たぶんお腹いっぱいになんないよ。
お腹いっぱいになんなかったら、
帰り駅の立ち食いそば食えばいいの。
それで、そういうのをね、
そのお店は気持ちがいいなーって思ったら、
1ヶ月に1回、自己投資だと思って行けばいい。
銀座に寿司の馴染みのお店を
1軒持っているOLって、
かっこいいよー、かっこいい! |
ノリスケ |
かっこいいーっ!! |
ジョージ |
それで、そのうちね、
自分の上司かなんかがね、
困った困ったって言うんだよ。
「困った困ったー、今度、会社の接待で、
寿司屋探したいんだけど、高いしなー」 |
ノリスケ |
(声色変えて)
「課長、私ちょっとお馴染のお店が1軒あるんで……」 |
つねさん |
うわーっ(笑)。 |
ノリスケ |
かっこいいー! |
ジョージ |
電話してあげるのよ。
「すいません、私の上司なんですけど」
「ああ、いいよ」
それで予約がとれたら、
女が上がるってもんだよね。 |
ノリスケ |
上がるっ! |
つねさん |
あ〜。かっこいいね。 |
ジョージ |
フランス料理のお馴染のお店、
1軒持ってるのとは意味が違うから。
んで、銀座で店を構えてる
オヤジさんっていうのはね、
すーごい色んなこと知ってるの。 |
ノリスケ |
ああ、そう。 |
ジョージ |
うん。んーと、たとえば、
鰻を食うんだったら、あそこが美味いとか、
天ぷらだったら、あそこがいいとかね。
それと、んーと、名のある寿司屋さんだったら、
それこそ、フランス料理屋のオヤジさんが、
定休日にどこそこのメシに行こう、ていう、
いいフランス料理屋知ってたりとかするんだよね。
で、その板前さんに色んなこと聞いて、
紹介状書いてもらって、
あるいは電話入れてもらって、
いろんなところに行けばいい。 |
ノリスケ |
世界が広がりそう! |
つねさん |
そしたら、芋づる式で。 |
ジョージ |
そうそうそう、ぜんぶいただき! |
ノリスケ |
雑誌ではない情報収集ができるね。 |
ジョージ |
うん、そうなんだよね。 |
つねさん |
は〜。 |
ジョージ |
それで、そうやって人間関係を作ってるのが、
うちの(会社の)お嬢さんに、いるの。実際。
うちの秘書に1人、そういうのがいるの。
東京のスター・シェフを
みんな芋づるで抱えているって女がいる。 |
ノリスケ |
すっげー。
会ったことないけど、
かっこいいにちがいない。 |
つねさん |
ぼく会ったことある。
あのひと、脇屋さんを
「ワッキー」て呼んでるよね。 |
ジョージ |
そう。トゥーランドットの。 |
つねさん |
あと、なんだったっけ?
ニュー・ヨークのノブが取れる女。 |
ジョージ |
そう、ノブさんも、
日本に来ると必ず会って帰る。 |
ノリスケ |
恐ろしい女。
それ、自分で開拓したんだ? |
ジョージ |
そう、自分でやったんだよ。
開店してから店が忙しくなる前か、
あるいは昼飯時の終わりかけ。
ほんの一時を狙って、行くの。 |
ノリスケ |
最初、勇気いるよね。
雑誌とかの情報で、
えいやっ、って入るわけでしょう?
それも、ひとりで! |
ジョージ |
うん。ガラガラガラって開けると、
最初、あ、女がこの時間に入ってきたー、
と思って、すっごいイヤな顔されるよ。 |
ノリスケ |
それに負けずに? |
ジョージ |
負けずに入って。
たとえばランチの終りかけだったら、
「昼ご飯を食べそこなったもんですから。
ただこの後、どうしてもすぐ、
帰らないといけないんで、
30分しか時間がないんですけども、
適当にお任せで」って言って。
あ、ねえちゃん、分かってるじゃないの、と。
おいらも早く昼休みが取りたいんだよ、
じゃ、すぐ帰ってくれるんだったら、
まあ、残った、こんなところの
中落ちのいい部分と、
ま、ウニもちょこっと入れたろうかなー、
とかって思いながら、食べさせてくれるのよ。 |
つねさん |
すごいねー(笑)。 |
ジョージ |
で、2、3回続けると、3回目ぐらいに、
あ、このねえちゃん、確信犯だな、
って思うんだよね(笑)。 |
つねさん |
でも、それはそれで、向こうも、
なんかもう…… |
ジョージ |
うん、ま、いっか、
かわいいじゃないの、って。 |
ノリスケ |
俺も、だまされちゃったな、って(笑)? |
ジョージ |
そうそうそうそう。
そしたら、そのオヤジさんって、
店終わって銀座の飲み屋かなんかで
飲んでるときに、
「いやー、うちの店に
変わったねえちゃん最近来るんだよ。
今度、おめーんち紹介するから、
よろしくね」っていうことになるのよ。 |
つねさん |
そういう人、ふえるといいね。 |
ノリスケ |
でもねえ、なかなかね、
実際にやるって人は、
そんなに多くないのかも。 |
ジョージ |
うん、でも、そういう人が
いっぱい増えたほうが、
変な雑誌かなんかに出るお店ばっかりを信じてる、
みたいな状況が変わって、いいと思う。
だいたいね、飲食店で
1ヶ月も2ヶ月も予約が取れないっていうのは、
変なんだよね。
で、そういうお店を作っちゃう風潮よりは、
ずっといいと思うんだ。
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(このテーマはこれにておしまい。