つねさん |
仕事で僕、よく言われるけど、
好きなことができていいですよね、って。
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ノリスケ |
冗談じゃないよね(笑)。
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つねさん |
じゃあ、あんた、やったらいいじゃん、って。
あなた、好きなこと、ひとつはあるでしょう?
それやろうとしないで、人のとこだけ、
上っ面見て、「いいですよね」。
それ、ぜーったいおかしいもん。
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ノリスケ |
それ、時々突きつけられるんだけどさ。
ほんとに俺はそれが好きでやってるんだろうか?
とかさ(笑)。考えるよ。
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ジョージ |
でも、その自問自答は、絶えずないとだめだよね。
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ノリスケ |
絶えずあるよ。言われると気がつくんだよ。
いいねー、好きなことがやれて、ってー。
ムカッと腹が立つんだよね、そういう意味で。
なんだけど、もう1回かえってきて、
ほんとに好きかー? 俺? っていうね、
気分も常に、同時に半分ぐらいあるよ。
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つねさん |
だって、好きなだけで仕事できないじゃん。
どっかでいろんなことを、
自分の気持ちとかも
犠牲にしないといけないわけだし。
仕事としてするときには。
だから、それは好きなものをアレンジすることで、
流すこともあるわけだし?
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ノリスケ |
好きな人と仕事をしたいと思うけどね。
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つねさん |
ああ、それはいいね。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
あと、それじゃあ、嫌になる、
自分が自分で嫌になることとかって、ある?
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ノリスケ |
あるよ、いっぱい。
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つねさん |
ああ。
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ノリスケ |
いちばん、ずーっと、ずーっとあるのは、
あの、何だろうなー? たとえば、
自分がその器じゃないから、まだ、
出来ないことがいっぱいあること。
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ジョージ |
うん。今の自分には出来ないこと?
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ノリスケ |
うん、とても好きな人と、
物理的に一緒に仕事をすることがあっても、
それが、僕が向こうを必要なだけで
向こうは僕を必要としているわけじゃない、
っていう意味で、対等な仕事ではない、
ということって、あるの。
そういうときって、自分の器を、
つきつけられる思いがするの。
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ジョージ |
それって、自己嫌悪なの?
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ノリスケ |
自己嫌悪じゃないよ。
自己嫌悪? 自己嫌悪って、ただ嫌いなだけ?
それがなれるようになることが、
目標でもあるから。
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ジョージ |
うん、僕がたまに思うのは、
んー、ほんっとにたまにね、
んーと、どうせ自分はゲイだから、って
甘える自分がいることがあるよ。
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
たとえば、一生結婚もしないで、
子供もつくらないんだから、
気楽で生きていける、って思うと
色んなことが甘ーくなるんだよ。
すーんごい。
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ノリスケ |
あるねー。
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ジョージ |
で、そうするとね、んーと、その時に、
ふつうに結婚してふつうに子供をつくって、
子供を一生育ててめんどうを見るという
責任を持ってる、ふつうの子たちに対して、
ものすごい罪悪感を感じるの。
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ノリスケ |
それはね、ある。
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ジョージ |
それとか、んとー、経営者やってるとね、
定年退職がないから、って思うんだよ。
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ノリスケ |
あ〜。
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ジョージ |
そうするとね、一生うちの会社から
給料もらえるかも知れない、って思うんだよ。
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ノリスケ |
それは、僕は、ぜんぜんないけど。
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つねさん |
僕も、フリーランスだから、ない。
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ノリスケ |
ないことの怖さは、かかえているけど。
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ジョージ |
ほとんどの人たちって、
たとえばサラリーマンだったら、
経営者は経営者でね、
お前らは経営者じゃなくって
サラリーマンだから気楽だな、って言うの。
だけど、サラリーマンの人は、
いつか定年退職があるから、
定年退職した後の蓄えをしなきゃいけないんだよ。
で、そういうサラリーマンから経営者見ると、
あんたたちは一生金がもらえるつもりで気楽だねー、
って言われるの。で、そういうのですっごい
自己嫌悪に陥ることもあるよ。
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ノリスケ |
そっか、経営者のことは、
具体的に「わかる」とは言えないけど……
僕なりの、そういう不安はあるよ。
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ジョージ |
これはね、いろんな人が持ってるの。
女の子は女の子で、私は女の子だから、
っていうのがあるんだよね。
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つねさん |
逃げ口にしたいんだろうね。
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ノリスケ |
とくにゲイ、カミングアウトして
仕事してるでしょう?
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つねさん |
ああ、ある意味ね。楽だからって?
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ノリスケ |
でね、それってね、自分の中にも、
ジョージさんと同じものがあるし、
周りから見る目に、甘い膜(まく)がいっこ、
かかるんだよね。
フィルターって意味だけど。
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つねさん |
ああ、あの人は、そうだからって?
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ノリスケ |
うん、だからいいよね、っていう。
それは、いいこともあるし、
でも、ちょっと待て、ちょっと待て、
って思うことも、よくあるよ。
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
でもね、みんなに膜かかってるんだよ。
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ノリスケ |
そっか。
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ジョージ |
独身の女の子には独身の女の子の、
甘やかな膜がかかってて。
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ノリスケ |
今、女の子たちと僕たちって、
共通だなと思ったけど。
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ジョージ |
男にも、男の膜がかかってるんだよ。
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ノリスケ |
あるんだ。
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つねさん |
若い男だから、とか?
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ジョージ |
うん。人それぞれ。
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ノリスケ |
そうだね。
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ジョージ |
そういう、他人が勝手にかけた膜を、
なんとか自分で剥がなきゃ、って、
それだけ考えて仕事する人いるんだよね。
それ、辛いなー、と思うね。
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ノリスケ |
そうね。
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ジョージ |
たとえば、あらゆるリブの運動は、
そうだね。
「どうせあなたは、私のこと○○だからって
思ってるでしょう?」っていうのがある。
ゲイでいうと、
「どうせあんたたちは、
私たちのことオカマだから、
って思ってるでしょう?」てことね。
そんなの、いろんな立場の人が、
みんながそう言いたいんだよ。
どうせお前は俺のことを、
ノンケの男だと思ってるんだろう?
言い始めたら、何も始まらないよね。
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(つづきます)