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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

嫉妬。その3
嫉妬されてもへこまない。

つねさん でーも、逆にさゲイってさ……
ジョージ いつも若々しかったり、
よく言われるのが、社会的責任とか、
家族に対する責任を持ってないから、
ものすごく気楽だよね、って言われるんだよね。
ノリスケ あ、なんか、それって、
単にいいよね、って言われることもあれば、
吐き捨てるように言われることもあるし。
ジョージ そう。
ノリスケ いいよな、お前らは。
ジョージ だけど、それってね、なんだけど、
その逆にね、たとえば、
老後どうすればいいのか、とかね。
あるいは、好きな人と、一緒に……
つねさん 一生一緒にいれる……
ジョージ あ、もう、僕の中で
いちばん羨ましい言葉って、
「一生添いとげる」っていう言葉?
これって、ないんだよね。
ノリスケ ああ、羨ましいね……。
ジョージ そう。
つねさん 紙切れ、ないからね。
ノリスケ ハンコが押せないからね。
ジョージ で、まあそういうこともあるんだけど、
でもね、でもね、やっぱりね、
嫉妬されることに無防備であるということはね、
どっかにすごい落とし穴を掘られて
自分で落ちちゃう可能性もあるかな? と思って。
ノリスケ あっ、怖い。
つねさん だから、最近、よく観察してるよね。
ジョージ そう、僕けっこうあれだよ、
嫉妬されることの
シミュレーションとかするよ。
ノリスケ え? どゆことどゆこと?
ジョージ ……鏡見ながら、
イヤッ、かわいい、
自分でも嫉妬するくらいかわいい、
と思いながら、んー、でもなんか、
こういうの見てヤダなーとか
思うやつもいるんだろーなーって。
ノリスケ …………。
つねさん ……お前、もう、刺されろ。
刺されるか? もーっ。
ノリスケ いっぺんねー。プスッて(冷)。
ジョージ (聞いてない)でも、
そういう瞬間って幸せじゃないー?
つねさん いやー、僕、分かんない(笑)。
鏡きらい。
ジョージ 冗談ばっかりでもないのよ。
そういうふうに思いながら、
自分を前向きに見ながら、
でもそういう自分を嫌いなやつも
いるんだろうな、って訓練してると、
ある日突然、ほんとに、
ヤなことって、やってくるんだよ。
ノリスケ つまり、そのときにも、
心は準備できているってこと?
それって、体験的にあるの?
ジョージ あるよ、いっぱいあるよ。
ノリスケ たとえば?
ジョージ たとえば、お仕事でね、
海外に行ってどうとかこうとかっていうことを
話すでしょう?
「世間を広げるために、
 やっぱり経営者なんていうのは、
 海外にもっと自由に出なきゃだめですよ」
って言うと……
つねさん なかなか行けないんですよ、って?
ジョージ そう。キミは、子供いなくて気軽だから、
自由でいいですよねーっ、って、
掃いて捨てるようだよ。
で、その裏っ側には、
女房も持たないで子供を育ててないやつは、
一人前の男の大人じゃないんだ、
っていうような、言い方をするのよー。
ノリスケ 裏がね。
つねさん あ、でも、そういうのって、
たまに感じるときがある。
ジョージ で、そういうのを感じても、へこまないの。
自分でそういう練習をしてると。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ 「そういう考え方もあるよね」
って思えるんだよね。
だけど、せっかく自分で一生懸命働いて
金稼いでいるのに、自分の好きなときに、
……その、毎日がそうじゃだめだよ?
だけど、1年に2、3回ぐらい、
自分が好きなときに、
女房子供を捨てて
海外旅行もできないような男なんて、
一人前じゃないよな、って思うんだよ。
つねさん あー、すごーい。
ジョージ で、それはね、やっぱりね、
(嫉妬される)シュミレーションしないと。
で、女の人なんかもそうじゃなかな?
と思うよね。あー、だから、嫉妬ってさ、
いろんな対象物があるじゃない?
恋愛。恋愛上の嫉妬って、
わりと楽な嫉妬なのかも知んない。
ノリスケ そうかも。いま聞いてたら、
そういう気がしてきた。
ジョージ ね。
で、いちばん辛い嫉妬って、
これは、これだけは
あきらめなきゃいけない
嫉妬ってあるんだよね。
つねさん どういう?
ジョージ 年齢に対する嫉妬。
つねさん あ〜。そうね。
ノリスケ あ〜、若くていいね、とか?
ジョージ そう。あのね、うちのお客さんでね、
40後半くらいなのかな?
で、お子さんが大学生になって、
すごいんだって、その、
もりもりメシを食うし、いつも元気だし、
はつらつとしてて。
羨ましいな羨ましいなって思いながら、
でも、どっかで心の片隅で、
いや、息子なんかには負けないって
思って生きてたんだって。
ノリスケ うん。
ジョージ そのお父さんが、
ある日、朝起きてトイレに行きました。
つねさん ハイ。
ジョージ そしたらね、息子が入ったトイレの後に入って、
トイレが流れてなかったんだって。
で、見たら、もんのすごい太くって
長いウンチが沈んでたらしいのね。
つねさん 「いいな」?
ジョージ うん。それ見て、そのお父さん、
あ〜、こんな立派なクソは、
俺はもうできない、って思って、
もう嫉妬を越えて
「あきらめ」になったっていうの。
いい話でしょう?
ノリスケ それ、いい話だわー。
ジョージ でしょう? そんなもんよ。
ノリスケ そんな父親、
息子にしてみると恰好良いじゃない?
つねさん まあね。
ジョージ 年を取るということは、そういうこと。
ほんとに。
ノリスケ は〜。
ジョージ うちの会社もね、むかしあったんだよね、
若い女の子が入ってくると、
ババアがいじめるの。
で、その、いじめのほとんどっていうのが、
嫉妬なんだよ。で、若いから、なんだよね。
若いから未経験、でいじめるんなら、
まだいいんだよ。
つねさん 若さに対する?
ジョージ そう。そのもので、言うんだよ。
ノリスケ しょうがないじゃないねえ。
ジョージ で、ふた言目には
「いいわよね〜、若いんだから」
って言うんだよ。
ノリスケ ハハハ。
つねさん な〜んか、安っぽいドラマみたいだね。
ジョージ そう。でね、で、それを聞いて育った子が……
ノリスケ また言うんだ。
ジョージ そう、言われてきた側の子が、
ある日突然、
「いいわよねー、若いっていうのは」
って言いそうになって、
がく然とするって言うもん。
つねさん なんか、体育会系のなんか、
部活のいじめみたいなもん?
新入部員来たらいじめて、って、
伝統になってるみたいな?
ジョージ うーん、ちょっと違うの。
体育会系の世界っていうのは、
少なくとも4年とかのサイクルで
入れ替わっていくから、
これはゲームみたいなもんでいいんだろうけど、
でも「若いっていいわよねー」って
言い続けながら退職して
死んでゆくおばさんてどんなかしらー?
って思うのよ。
(つづきます)

2001-07-24-TUE

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