つねさん |
でーも、逆にさゲイってさ……
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ジョージ |
いつも若々しかったり、
よく言われるのが、社会的責任とか、
家族に対する責任を持ってないから、
ものすごく気楽だよね、って言われるんだよね。
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ノリスケ |
あ、なんか、それって、
単にいいよね、って言われることもあれば、
吐き捨てるように言われることもあるし。
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ジョージ |
そう。
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ノリスケ |
いいよな、お前らは。
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ジョージ |
だけど、それってね、なんだけど、
その逆にね、たとえば、
老後どうすればいいのか、とかね。
あるいは、好きな人と、一緒に……
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つねさん |
一生一緒にいれる……
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ジョージ |
あ、もう、僕の中で
いちばん羨ましい言葉って、
「一生添いとげる」っていう言葉?
これって、ないんだよね。
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ノリスケ |
ああ、羨ましいね……。
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ジョージ |
そう。
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つねさん |
紙切れ、ないからね。
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ノリスケ |
ハンコが押せないからね。
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ジョージ |
で、まあそういうこともあるんだけど、
でもね、でもね、やっぱりね、
嫉妬されることに無防備であるということはね、
どっかにすごい落とし穴を掘られて
自分で落ちちゃう可能性もあるかな? と思って。
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ノリスケ |
あっ、怖い。
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つねさん |
だから、最近、よく観察してるよね。
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ジョージ |
そう、僕けっこうあれだよ、
嫉妬されることの
シミュレーションとかするよ。
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ノリスケ |
え? どゆことどゆこと?
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ジョージ |
……鏡見ながら、
イヤッ、かわいい、
自分でも嫉妬するくらいかわいい、
と思いながら、んー、でもなんか、
こういうの見てヤダなーとか
思うやつもいるんだろーなーって。
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ノリスケ |
…………。
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つねさん |
……お前、もう、刺されろ。
刺されるか? もーっ。
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ノリスケ |
いっぺんねー。プスッて(冷)。
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ジョージ |
(聞いてない)でも、
そういう瞬間って幸せじゃないー?
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つねさん |
いやー、僕、分かんない(笑)。
鏡きらい。
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ジョージ |
冗談ばっかりでもないのよ。
そういうふうに思いながら、
自分を前向きに見ながら、
でもそういう自分を嫌いなやつも
いるんだろうな、って訓練してると、
ある日突然、ほんとに、
ヤなことって、やってくるんだよ。
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ノリスケ |
つまり、そのときにも、
心は準備できているってこと?
それって、体験的にあるの?
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ジョージ |
あるよ、いっぱいあるよ。
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ノリスケ |
たとえば?
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ジョージ |
たとえば、お仕事でね、
海外に行ってどうとかこうとかっていうことを
話すでしょう?
「世間を広げるために、
やっぱり経営者なんていうのは、
海外にもっと自由に出なきゃだめですよ」
って言うと……
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つねさん |
なかなか行けないんですよ、って?
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ジョージ |
そう。キミは、子供いなくて気軽だから、
自由でいいですよねーっ、って、
掃いて捨てるようだよ。
で、その裏っ側には、
女房も持たないで子供を育ててないやつは、
一人前の男の大人じゃないんだ、
っていうような、言い方をするのよー。
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ノリスケ |
裏がね。
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つねさん |
あ、でも、そういうのって、
たまに感じるときがある。
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ジョージ |
で、そういうのを感じても、へこまないの。
自分でそういう練習をしてると。
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ノリスケ |
うん、うん。
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ジョージ |
「そういう考え方もあるよね」
って思えるんだよね。
だけど、せっかく自分で一生懸命働いて
金稼いでいるのに、自分の好きなときに、
……その、毎日がそうじゃだめだよ?
だけど、1年に2、3回ぐらい、
自分が好きなときに、
女房子供を捨てて
海外旅行もできないような男なんて、
一人前じゃないよな、って思うんだよ。
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つねさん |
あー、すごーい。
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ジョージ |
で、それはね、やっぱりね、
(嫉妬される)シュミレーションしないと。
で、女の人なんかもそうじゃなかな?
と思うよね。あー、だから、嫉妬ってさ、
いろんな対象物があるじゃない?
恋愛。恋愛上の嫉妬って、
わりと楽な嫉妬なのかも知んない。
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ノリスケ |
そうかも。いま聞いてたら、
そういう気がしてきた。
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ジョージ |
ね。
で、いちばん辛い嫉妬って、
これは、これだけは
あきらめなきゃいけない
嫉妬ってあるんだよね。
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つねさん |
どういう?
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ジョージ |
年齢に対する嫉妬。
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つねさん |
あ〜。そうね。
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ノリスケ |
あ〜、若くていいね、とか?
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ジョージ |
そう。あのね、うちのお客さんでね、
40後半くらいなのかな?
で、お子さんが大学生になって、
すごいんだって、その、
もりもりメシを食うし、いつも元気だし、
はつらつとしてて。
羨ましいな羨ましいなって思いながら、
でも、どっかで心の片隅で、
いや、息子なんかには負けないって
思って生きてたんだって。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
そのお父さんが、
ある日、朝起きてトイレに行きました。
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つねさん |
ハイ。
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ジョージ |
そしたらね、息子が入ったトイレの後に入って、
トイレが流れてなかったんだって。
で、見たら、もんのすごい太くって
長いウンチが沈んでたらしいのね。
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つねさん |
「いいな」?
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ジョージ |
うん。それ見て、そのお父さん、
あ〜、こんな立派なクソは、
俺はもうできない、って思って、
もう嫉妬を越えて
「あきらめ」になったっていうの。
いい話でしょう?
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ノリスケ |
それ、いい話だわー。
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ジョージ |
でしょう? そんなもんよ。
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ノリスケ |
そんな父親、
息子にしてみると恰好良いじゃない?
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つねさん |
まあね。
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ジョージ |
年を取るということは、そういうこと。
ほんとに。
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ノリスケ |
は〜。
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ジョージ |
うちの会社もね、むかしあったんだよね、
若い女の子が入ってくると、
ババアがいじめるの。
で、その、いじめのほとんどっていうのが、
嫉妬なんだよ。で、若いから、なんだよね。
若いから未経験、でいじめるんなら、
まだいいんだよ。
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つねさん |
若さに対する?
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ジョージ |
そう。そのもので、言うんだよ。
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ノリスケ |
しょうがないじゃないねえ。
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ジョージ |
で、ふた言目には
「いいわよね〜、若いんだから」
って言うんだよ。
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ノリスケ |
ハハハ。
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つねさん |
な〜んか、安っぽいドラマみたいだね。
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ジョージ |
そう。でね、で、それを聞いて育った子が……
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ノリスケ |
また言うんだ。
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ジョージ |
そう、言われてきた側の子が、
ある日突然、
「いいわよねー、若いっていうのは」
って言いそうになって、
がく然とするって言うもん。
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つねさん |
なんか、体育会系のなんか、
部活のいじめみたいなもん?
新入部員来たらいじめて、って、
伝統になってるみたいな?
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ジョージ |
うーん、ちょっと違うの。
体育会系の世界っていうのは、
少なくとも4年とかのサイクルで
入れ替わっていくから、
これはゲームみたいなもんでいいんだろうけど、
でも「若いっていいわよねー」って
言い続けながら退職して
死んでゆくおばさんてどんなかしらー?
って思うのよ。
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(つづきます)