ノリスケ |
男友だち? ゲイじゃない、友だちね。
普通に仲がいいよ。
ふるい友だち、いまだに仲いいよ。
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ジョージ |
でも、数少なくない?
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ノリスケ |
少ないね。すごく。
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つねさん |
あ〜。あんまりいなかったね。
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ノリスケ |
カミングアウトしてないで、仲いい人、
今、ひとりかふたりだな。
でも、カミングアウトしてないで仲いいのに、
ふつうの友だちよりも、
ずっと濃い、不思議な関係の友だちもいる。
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ジョージ |
僕もいるよ。すーごく仲いいのが。
高校のときから一緒なんだけど、
結婚して娘ひとりいるの。地元で。
で、たまに、電話掛かってきて、
「東京に行く」って言うんだよ。
で、
「何で? 何か用事があるんかー?」
って言ったら、
「いやー、急にお前の顔が
見たくなったから行きたい」
って言うんだよ。
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つねさん |
いやんっ。
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ノリスケ |
不思議な友情。わかるよ。
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ジョージ |
んで、うちの学年には、
オカマがふたりいたんだよ。
ん、もっといるんだけど……
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ノリスケ |
表立ってたのは二人?
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ジョージ |
そう。僕と、もうひとり。
で、そいつは、その両方とも友だちなの。
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ノリスケ |
ほー。
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ジョージ |
で、直接接点があったわけじゃないのに、
両方とも友だちなの。んで、
「俺はお前らふたりと一緒にいると、
ものすごく気が楽だ」
とまで、言うんだよ。
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ノリスケ |
不思議だね。
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ジョージ |
でね、だから僕、地元に帰るとそいつがね、
家に泊まれ泊まれってんで、そいつん家行くと、
奥さんが最初、適当にメシの準備するんだよね。
ところが、いなくなるんだよ、そのうち。
で、ふたりっきりになるの。
で、なんか、ドキドキしちゃってさ。
寝れないで、いや、帰るわ、
ホテル取ってあるから帰る、って。
んで、他の友だちに聞くと、
そんなことはないんだよ。
奥さんはものすごくフレンドリーで、
一緒に、話をするんだって。
で、この前、奥さんとふたりだけで
話をする機会があったの。そしたら、
奥さんから、いやー、家の主人と、
ジョージさんがふたりでいるところを見るとね、
なんか私……
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つねさん |
入れないって?
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ジョージ |
そう、入れない何かがあって、
気恥ずかしくなるから
出ていっちゃうんですよ、って言われて。
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ノリスケ |
ハハハハハ。恥ずかしくなっちゃうんだ。
二人の間にある、割って入れない何かを
感じるんだろうね。
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ジョージ |
何やこれはーって。
で、奥さんがいうには、
学年のもうひとりのゲイの、
×××君っていうんだけど、
×××さんがいらっしゃった時と、
おんなじような感じなんです、って言われて!
こーれは、こーの女房も、
なんかー、センサー付いとるぞ、みたいな。
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ノリスケ |
付いてるんだねー。センサー!
それはそうだね。
僕も、仲のいいノンケの男友だちの、
奥さんって、センサー付いてるよ。
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ジョージ |
付いてる。
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ノリスケ |
付いてる。××んちもそうだし。
××さんちもそうだ……。
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つねさん |
その本人は、わかんないの?
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ノリスケ |
鈍いんだよ〜。
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ジョージ |
本人はわかんないんだよ。
わかんないから、
一歩踏み出さずにそこに
とどまってるんだと思うんだよ。
んで、わかったら、踏み出すか逃げるか、
どっちかなんだよ。
で、彼の中には、あるの。
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つねさん |
あ、それ(ゲイを理解する何か)がね。
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ジョージ |
それが。
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つねさん |
ほんとは。
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ノリスケ |
ほんとはあるのか。
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ジョージ |
どゆの? 男が好きとかじゃなくって、
女と一緒にいるよりも男と一緒にいる方が、
気が楽で、自分が自分らしくなれるというものが
あるはずなんだよ。
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つねさん |
あと、もうひとつはたぶんその、
男だっていうよりは、
ジョージのことが好きっていうのが
あるんだと思うよ、たぶん。
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ノリスケ |
ああ、それはそうだね。
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ジョージ |
っつうか、僕「のような男」なんだと思うんだよ。
僕のような感性だったり、
感じ方だったり喋り方だったり。
で、何より、そいつの受け止め方っていう。
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ノリスケ |
あ、そうそうそう!
どう受け止めるか、というので、
その人の懐に、深く入ることができるんだよ。
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ジョージ |
その、スネて見せたり、
攻撃的になって見せたりするときに、
たとえば、男が男に対して攻撃的になると、
おんなじ攻撃を仕掛けるのに、
僕を攻撃しても、僕は、スルッと逃げるわけじゃない?
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つねさん |
うん、うん。
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ノリスケ |
あと、甘えてくるでしょ?
不思議なことに。
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ジョージ |
で、甘えてくると、
甘えさせてやるわけじゃん?
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ノリスケ |
うん、そうだよね。
僕らには、それができるんだよ。
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ジョージ |
だけど、甘えすぎると、
ピシッとやったりとかするんだよね。
そういう、‘あ・うん’が
あるんだろうと思うんだよね。
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つねさん |
手練手管だね。
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ジョージ |
いやー、そういうんじゃない。
お互いの呼吸だよね。
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つねさん |
ああー。
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ジョージ |
そういうのあるよね。
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ノリスケ |
あるっ。カミングアウトはしてない?
その人に?
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ジョージ |
うん、その人にはしてない。
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ノリスケ |
してない。それって、すごくよくわかるよ。
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ジョージ |
そいつには、してない。
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ノリスケ |
僕は、××くんがそうだよ。
知ってるよね?
あの人との関係がすごく近い。
友情、というのではくくれない気がする。
わかんない。
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つねさん |
でも、ノリさんの場合は、
××くんのこと、好きだったでしょ?
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ノリスケ |
好きっ。いや、いまでもじゅうぶん好き。
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つねさん |
あんたっ、××さんも好きだったもんね。
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ノリスケ |
好きよ(笑)。
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つねさん |
で、それをぜんぶ奥さんが分かってんだよ。
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ノリスケ |
そうなの、わかってんの!
どうかんがえても、わかってるのよ、
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ジョージ |
僕がいないところで、たとえば、
僕の地元では、けっこう同級生が
噂してると思うんだよ。
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つねさん |
あ〜。
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ノリスケ |
そうだろうね。
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ジョージ |
うーん。僕とか、そのもうひとりの子だとかを、
あいつらはおかしい、昔から何かおかしかった。
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ノリスケ |
酒のネタにね。
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ジョージ |
そう。言うんだよ。で、言ってるときに、
そいつはきっと、
「別にそうでもええやないか」
って言ってくれてるのが、わかるんだよね。
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ノリスケ |
うん、うん、うん、うん。
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ジョージ |
で、下手したら、
「お前も、おかしいんじゃないか?」
くらいも言われてるんじゃないかと思うんだよ。
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ノリスケ |
うん、うん。
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ジョージ |
そしたら、いや、別に、それでも、それこそ、
いいじゃないか、と言ってくれてるのが
分かるんだよね。んで、下手したら
奥さんかなんかに言う
変なやつらもいると思うんだよ。
で、そんときに、奥さんは奥さんで、
いや、うちの主人に限って
そういうことはないだろうと思うし、
もしそうだったとしても、
いいじゃないですか?
って言ってくれてると思う。
で、そういう感性は感じるよね。
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つねさん |
ああ。いいねー。いい友だちがいて。
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ジョージ |
ね。そういう友だちがいることはいいことだよ。
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(つづきます)