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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

涙。その6
武器としての涙? 最低よ。

ジョージ ベッドの中でね、
泣いて落とす、っていう子がいるのよ。
ノリスケ ベッドの中に入った状態にまで、
もってってから?
ジョージ そう。
つねさん あ、そうなの? つまり……
ジョージ ことに及ぶじゃない?
ノリスケ うん、それは、まあ。
ジョージ 甘く、激しく。ね?
ノリスケ うん。
ジョージ そうするとね、急に、
「ウッ……」とかって。
ノリスケ 吐くの?
つねさん 泣くのよっ!
ノリスケ わかってるわよっ!
ジョージ で、「どうしたの?」って言ったら……
ノリスケ 言ったら?
ジョージ 「幸せだから」。
ノリスケ ぎゃ〜〜〜〜っ! ほんとに?
ジョージ 言うんだよー。
「僕、今まで、あんまり幸せじゃなかったんだ」
とかって言うの。おいおいおい。
つねさん どはー。
ジョージ それがね……ちょっとはまっちゃたのね。
だってさ、そんな状況で、そんなこと言われたら、
かわいいな〜、って思いながら、
はまっちゃうわけよ。
でもね、いざ深くつき合ってみると、
どーも違うぞっ!? ってなるの。
で、こいつの中に涙が流れるっていう回路は、
絶対ないはずだ、って思うんだよね。
で、思いながら、その子のことを、
別のお友だちと話してたの。
「最近、あいつとちょっと、
 つき合おうかな? と思ってるんだよ」
って言ったら、いきなり、
「泣いた?」って言われたの。
「えっ? なに、それ?」
「泣いたでしょう?」
「うん」
「やってる最中じゃなかった?」
って言われて。
「おえっ!? なんで知ってんの」
「僕のときもそうだったよ」って。
「それ、有名だよ」とかって。
きゃ〜っ! すっげ〜〜っ、て感じ。
ノリスケ それは、すごいわ。
つねさん でも、幸せな人だね、
なんかね、自己完結が(笑)。
ジョージ でも、そんな安い涙にだまされた私っていうのは、
情けないよね。
つねさん いや、安い涙って、わかんないんだよ、
けっこう。その安さって。
ジョージ あー、そっかー。
つねさん その時には。
ノリスケ わかんないよね。
つねさん わかんない、わかんない。
ノリスケ 一対一だし。なにしろ。
つねさん そうそうそう。
ノリスケ ましてや、
そんなシチュエーションじゃあさあ。
ねえ?(笑)
つねさん 絶妙のタイミングだったんでしょう?
ジョージ いや、それがねえ、そう、
クリクリした目から、ボロッとねぇ……
ノリスケ そういう生存の方法を
身につけてるんだろうね(笑)。
ジョージ そうそう。ボロッ。
で、僕、てっきり年下だと思ったら、
年上だったんだよー!
ノリスケ ハハハハハハッ。
ジョージ 年上なの。しかも結婚してて、
子どもまでいるのー。
特殊技能だよね。
むおう、ほんっとに、
いろんな涙ってあるなー、って思うよー。
つねさん 三角関係になって、
元彼が来たからって帰んなきゃいけなくって、
車ん中で泣いたことがあるの。
これは絶対もう、俺の方に
向いてくれるに違いないって思ったのに、
だめだった。涙って安かったのね、って(笑)。
ジョージ ま、悦に入ってる涙は、安いのよ。
でも、大の男の涙は、いいわよお。
むかぁーし、視察旅行で、
経営者のお父さんたちを連れて
エコノミー・クラスで安い旅行、っていうのを
したことがあるのね。10人ぐらい。
だからひとかたまりに並んで
「炎のランナー」観てたんだよ。
僕、後ろの方にいてね、それを見てたの。
その、おじさんばっかりなわけじゃない?
経営者だよ? みんなね。
立派な会社の経営者、の、
肩が震え始めるんだよ。
ノリスケ おー。
ジョージ あ〜、泣いてるんだー、って(笑)。
でもなんか、自分も泣きそう?
ん〜〜、どうしよっかなー? って思ったときに、
ちょっとトイレ行きたくなって、
前歩きながら、見たら、みんな、
デァーッて泣いてんの。
あ〜、い〜ぞ〜、って思うよね、
そういうのって(笑)。
ノリスケ ハハハハハッ、それいいな。素敵。
そんな大の男が固まって
泣いてる風景、お金払っても見れないわ!
大人の男で、泣く機会って……
ジョージ 僕、酔っぱらって、けっこう泣くよ。
ノリスケ あなたが大の男かどうかは……
ま、経営者としてのあなたはね。
ジョージ クラブとか、行くじゃない? ねえ?
ノリスケ クラブって、ねえちゃんがいるほうの? 仕事で?
ジョージ そうそうそう。それで、その、
お客さんなんかと、一緒に飲んで大騒ぎして。
嬉しいの、なんか。
しかも、変なシチュエーションじゃない?
オカマの私が、おねえちゃんのいるクラブで、
おねえちゃんに肩まわして、
お触りするまではいかないけど、
なんか、酒飲みながら、超盛り上がりって……。
一緒に行ってるお客さんなんかは、
僕がゲイだってこと知ってるのよ。
だから、僕が居させてもらってるの。
それがとってもうれしくてね、
も、それでね、なんかね、泣けちゃうの。
ノリスケ むむむ……(笑)で、泣くの?
ジョージ ウォーーーッ!! とかって、
泣いちゃうのよ。
ノリスケ それ、おねえちゃんのいる
クラブで泣いちゃうの?
ジョージ そ!
ノリスケ それは……(笑)どう思われるの?
ジョージ おねえちゃんなんかは、
いいわーっ、男の友情!
とかって言うのね。
仲間と一緒に、飲んで、
素直に泣ける、この人はすごいって、
わたしの男が上がるのよ。
ほんとはオカマが上がってるんだけど(笑)、
男が上がるのっ。
つねさん いいや〜(笑)
ジョージ んで、そん次から行くと、
男気のあるオカマじゃないんだけど、
男気のある男、みたいなかんじで。
ノリスケ そういうの……ない。
その状況におかれて泣くか? っていったら、
泣かないよね、きっとね。
それは、自分のビジネスで
なってるからじゃないの?
あるいは、男の世界に
すごい憧れがあるとか?
ジョージ うん、男の世界で、
ああやって号泣するっていうのは、
すごい素敵かな? って思うよ。
「俺たちの朝」的世界?
夕日に向ってランニングできる世界の、
どゆのかな? それこそあれだよ、
普通のサラリーマンにしても経営者にしても
幹部社員にしても、
社会で生きてるっていうことは、
戦後のどさくさ生きているのと
似たようなもんだよね。
どこにも味方がなくって、
みんな敵だと思わないといけないようなとこで、
一生懸命頑張ってる人たちが、
たまたま一晩、なんか、あの、
鎧を下ろして? 裸になって。
つねさん 休戦しましょう。
ジョージ そう。呑みました、
あ゛ーっ、ていうのは、
ある世界だと思うなー。
それはね、絶対ね、二丁目にはないのよ。
ノリスケ ないよね。
ジョージ 二丁目にはないよー。
だって、二丁目で泣いてるの、
ウソ泣きばっかりだもん。
それこそ、
武器で泣いてるような女ばっかりだよね。
つねさん そうね。
ジョージ 別れて捨てられましたーっ。
悲しいんだったら家で泣けば?
って思うんだけど、
家に帰っても泣かないような子が、
泣いている自分を人に見せるために飲み屋に来て、
べーべーべーべー泣きながら、
特にタイプの男が横に座ったりなんかすると、
よけい泣くの。あんたの涙は営業よ、みたいな。
つねさん 2・3人、顔が浮かんだんですけど。
ジョージ でしょう? 浮かぶでしょう?
2・3人浮かんだってことは、
ゴキブリといっしょで200人ぐらいいます。
ほんっと、ああいうのだけは見苦しいから、
ぜーったいやっちゃダメよ。
(気をつけます。つづきます)

2001-08-26-SUN
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