ノリスケ |
自分でお洋服買いに行くっていうのってさ、
僕は、いろんなお店を回って、
気に入ったものをひとつひとつ探して
少しずつそろえていく、
っていうのが楽しいのね。
去年買ったあのシャツに、
合いそうなくつした見つけた! とかね。
でさ、ずっと入ったことなかったんだけど、
セレクト・ショップってあるじゃない?
あれってさ、その中間にあるのね、
自分で買いに行くのがめんどくさい、
でも、ファッションのことは
「勉強」しなくちゃいけないって思ってる人が、
そこに行けば全部、きれーに
最新のものが揃うじゃない?
あれって、ぼく、どうしてもなじめないの。
なにか、違和感があるの。
どう思う?
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ジョージ |
んー、ただ、あれだよ、
日本のセレクト・ショップは、
ほんとの意味での
セレクト・ショップじゃないと思うな。
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ノリスケ |
ほんとのセレクト・ショップって、
どういうのなの?
バーニーズ・ニューヨークのこと?
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ジョージ |
あれは、セレクト・ショップなのかも知れない。
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ノリスケ |
そうなのよね、自分でうまく説明できないんだけど
あれはいいと思うのよ。不思議なの。
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ジョージ |
ノリさんがいやなのって、
たとえばね、エディフィスとか
ビームスとかユナイテッド・アローズとかでしょ?
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ノリスケ |
そうそうそう! そうなの。
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ジョージ |
あれはね、セレクト・ショップじゃなくて
コーディネーション・ショップなんだよ。
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ノリスケ |
あー!
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ジョージ |
あそこに行って、
どのフロアにあるどれを買っても、
一応どの組み合わせをしても
コーディネートとして
おかしくないものが揃ってるだけであって、
あれは店を選んだだけで、
店に置いてあるものを選ぶ知識が
必要ないんだよね。
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ノリスケ |
そうだねー。
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ジョージ |
だけど、
バーニーズ・ニューヨークあたりに行くと、
少なくとも20代の子が選べるものは
何一つ無いし、30代以降で?
で、しかも田舎に住んでる人には
必要ないものばかりなの。
ちょっと特殊なの。
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ノリスケ |
うんうん。
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ジョージ |
都会に住んでいて、
オフ感覚で仕事をする人が、
あそこに行けば選ぶ楽しみがある、
っていうところで、
“お客さんのために選んであげる”のが
セレクト・ショップじゃなくって、
“お客さんが楽しく選べる”ように
しといてあげるのが
セレクト・ショップだと思うんだよ。
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ノリスケ |
ふんふん。
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ジョージ |
それの究極の姿がエルメスだから、
エルメスはセレクト・ショップなの。
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ノリスケ |
なるほどねっ!! すっきりした。
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つねさん |
ふふっ。
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ジョージ |
あそこには、サン・ルイもあれば、んーと……
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ノリスケ |
あと、靴のジョン・ロブもあるよね。
そうだそうだ。
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ジョージ |
あって、で、それは、
お客さんのために選んであげたんじゃなくって、
お客さんがせっかくエルメスの世界に来たらば、
靴も選べたほうが楽しいでしょう?
食器も選べたほうが楽しいじゃないですか?
っていうんで、できたんだもん。
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ノリスケ |
なるほどね。そうかっ。
僕は、ビームスとアローズと
エディフィスに抱いている嫌な感じって、
それで説明できた。
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つねさん |
ハハハハハッ。
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ジョージ |
押しつけがましいの。
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ノリスケ |
ねっ。やなの。
ジャーナル・スタンダードはね、
ギリギリ大丈夫だったりする。
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ジョージ |
ギリギリだね。
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ノリスケ |
いいな、と思うことある。
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ジョージ |
だから、先の3店舗っていうのは、
あんたたち、どうせ選べないんでしょう?
私たちが選んどいてあげたから、
何でも買ってってちょうだい、
失敗はないわよ、ふふっ、
っていう感じだよね。
ねえねえねえ、それよかさ、
こないだの「ブルータス」かな?
いい会社、悪い会社。ていう特集。
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ノリスケ |
はいはい。
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ジョージ |
あれでね、ソニーの井出さんにたいする
50の質問っていうのがあって。
格好良かったよ、その問答が。
なかでもね、んーとね、
あなたのライフ・スタイルにとっての
こだわりは何ですか? って言われたときの答え。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
おいしいものを仲のいい人たちと食べること、
っていうの。これって、オフだよね。
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ノリスケ |
オフ、オフ。
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ジョージ |
けして接待ではなく、
しかも、家族の長としてでもなく、
気の合う仲間と、旨いものを食うんだよ。
で、そういう答えができる上司、が、
いるかいっ? って感じだよね。
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ノリスケ |
そうなんだよね。
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ジョージ |
そうだよ。それで、んとー、
あなたが美味しいと思うものは何ですか?
っていう答えも、
……6月のインタビューなんだよ?
6月だったらば、って言うの。
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つねさん |
は〜。
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ジョージ |
言い方で、6月だったらば、
フランスに行って、メロン、
ホワイト・アスパラガスとフォアグラに、
ハチミツを添えて、
白ワインを飲むこと、なんだよ。
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つねさん |
おわっ。
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ノリスケ |
格好いいっ!
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ジョージ |
格好いいべーっ。
でね、これはね、やっぱりね、
オフのない人には言えない。
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ノリスケ |
そういう上司(笑)ステキねえ。
言えない。勉強しても言えない。
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つねさん |
言えないよ。
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ジョージ |
あー、こいつ、ほんとに好きで
食ってるんだろうな、って思うよね。
あるいは、先週食ってきたかな?
って思うよね。だから、まあ、オフ、
んーとね、オフを使いこなすことが
できる人っていうのは、
ほんとの意味でメリハリの効いた
オンが使えるんだろうね。
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ノリスケ |
ふんふん。
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ジョージ |
で、ん、中途半端な人っていうのは、
オンだけじゃだめだ、
オフもなんとかしなきゃ、って、
オフに振り回されちゃう。
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ノリスケ |
そうだねー。
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ジョージ |
うん。そうすると、
オンとオフがいつまでたっても
噛み合わなくって、
だから、……趣味人とかって呼ばれるのって、
格好悪いじゃん?
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ノリスケ |
やね(笑)。
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ジョージ |
あの人は、仕事も一生懸命だけど、
趣味も一生懸命やってます……いやん。
趣味って、一生懸命やるもんなのかー?
って思うよね。
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ノリスケ |
最初から一生懸命を目指すんではなくて、
心ならずも、熱中してしまうものよね。
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ジョージ |
なんか、毎週土曜日の何時から何時までは
必ず、オフ、とかってのは、
オフじゃないじゃん!!
オンPART2、じゃないの?
とかって思うよね。
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ノリスケ |
ハハハハ。も1個のオンね。
それ、倒れる(笑)。
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ジョージ |
オフという言葉に、たぶん、
すごい悪ーい意味があると思うんだよ。
それこそ、電源で言うと、
スイッチが入ってない状態じゃん。
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ノリスケ |
うん。オフにね。
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ジョージ |
ね? いい加減さだとか、無目的だとか、
非生産的だとか、だらしなさだとか。
ただ、そういう、オフのもっている
悪い部分っていうのが、
ある意味、大切にすれば、
オンが引き立つわけだから。
……でも、今、オフの悪いところ言ってると、
みんなオカマの悪いとこみたい!
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ノリスケ |
ハッハッハッハッハ、ハハハハッ。
やだわ、やだわ、その通りだわ。
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ジョージ |
無責任、無目的、だらしなくって、
わがままで、独りよがりで……
うわーっ、オカマって、オフだったんだー。
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ノリスケ |
だったんだね(笑)。
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ジョージ |
やっぱり。
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ノリスケ |
人生が……
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つねさん |
オフ子さん。
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ジョージ |
オフ子さんたち。いやー、すごーい。
んで、行方不明になって。
行方不明がゆきすぎて、遭難。
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