ジョージ |
自分が1人っきりになったとき、
どうやって時間つぶすんだろうてことを
考えるのもいいんじゃないかな。
時間つぶしって、オフだよね。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
で、そいういうの、
自問自答すればいいんじゃないのかな。
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ノリスケ |
周りで、そういうふうにジョージさんに言われて、
へー、変わってきたな、っていう人って、いる?
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ジョージ |
ん〜、そうだね、わりとあるよ。
たいていね、旅行をきっかけにするの。
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つねさん |
ふんふんふん。
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ノリスケ |
ひとりで行きなさい、って感じ?
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ジョージ |
ううん、ひとりで行きなさい、
って言うと……
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ノリスケ |
女房を説得するのが大変とか?
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ジョージ |
んー、それもあるしね、
ひとりで行くために一生懸命になっちゃう。
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ノリスケ |
あーっ。
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ジョージ |
で、一生懸命はぜったいいけないのよ。
それってオフじゃないでしょう?
オフって、一生懸命がないからね。
だから、とりあえず4・5人で行くの。
で、「ノー・スケジュールだからね」
っていうのを徹底するの。
口酸っぱくして言ってね。
でも野たれ死んでちゃ、困るんで、
晩飯いっしょか朝いっしょ、
ていうのだけ、決める。
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ノリスケ |
あなたがツアー・コンダクターみたいになって
みんなを、連れてくわけだ。
オフ体感ツアー。
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ジョージ |
そう。で、何にもしないの。
何にもしない、という状況に置かれるとね、
けっこう人間って、工夫するよ。
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つねさん |
ツアーとかでさ、
行きっぱなしって、あるじゃない?
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ノリスケ |
行き帰りだけあって、
ホテルが付いてるやつでしょ?
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つねさん |
そう、そのほかのスケジュールは
フリーとかって。
そういうので行くのも手だろうね。
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ジョージ |
そうね。
面白いよ。最初の何日かは、
いっしょに朝ご飯食べるたんびに、
「今日はどうするんですか!?」
って聞かれるの!
で、邪魔臭いから、
「もう朝会うのはやめようっ」。
「ど、ど、どうするんですか?」
って言われたら、
「うん、僕は何にもしないよ」
「えーっ!? 何にもしないんですか?」
「何にもしないために来たんだよ」
って言うんだよね。
そうするとね、そのうち
「僕はゴルフしたいなー」とかって言い出すの。
「あ、いいじゃない? じゃ、すれば?」
「どうすればいいんですか?」
「したいんだったらすればいいじゃない!?
もう、フロントでもどこでも行って、
したいんですっ、ゴルフがしたいんですっ。
どうすればいいんですか?
って、聞けばいいじゃない!
考えればいいじゃない?」
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ノリスケ |
フフフフフフフッ。
乱暴だけど、いちばん効果的な
強制的オフ。
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つねさん |
やっぱ、ふだん、考えてないんだろうね。
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ジョージ |
そう。でね、もう邪魔臭いからね、
「朝ご飯なしっ、なしっ、なしっ、ダメっ。
晩飯にしようっ」って。
で、晩ご飯に会うでしょう? そするとね、
「明日はどうしましょう?」って(笑)。
やーっぱりおんなじじゃーん、って。
じゃあね、これから最後の3日間、
絶対に、会わないことにしますっ、
てことに、してみたのよ。
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ノリスケ |
うん。ああ、いいねー。
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ジョージ |
って言うとね、なーんとかしてるよ。
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ノリスケ |
そのぐらい、こう、強硬手段用いないと、
おとっつぁんたち、わかんないんだな。
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ジョージ |
とね、どゆんかな?
いっしょに行ったやつとね、
仲悪いやつがいたんだよ。
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ノリスケ |
その、同僚の2人が?
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ジョージ |
そう。2人が。で、その2人が、
一緒に行動しないと、他のやつらは、
もう、ひとりづつになっちゃってたの。
そしたらね、その残った2人で行動してね、
なんかね、仲良くなって帰ってきたりとか、
するんだよ。
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ノリスケ |
ハハハハッ、いいねえ。
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ジョージ |
「良かったじゃーん。
お前ら、話するのも
嫌なんじゃなかったっけ?」
「んー、けっこうね、いいやつかな?
って思いました」とかって、言うんだよ。
「ほー、良かったじゃん」、って。
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ノリスケ |
あんた、いい上司ね〜。
いいねー。そういうことしてたんだ。
よく、会社の何人かと
旅行に行くって言ってたから、
なーにをしてんだろう? って。
そういうことしてたんだねー。
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ジョージ |
そ。
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つねさん |
すごいね。
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ノリスケ |
そーれは、すごい、すごい。
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つねさん |
面倒見がいいというか、なんか。
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ノリスケ |
いや、それは、うん、面倒見っていうか、
きっと、オフもとれないような人を
使うのって、たいへんなんじゃないかしら。
経営者は。想像だけど。
でも、それって、リゾートの話でしょ?
都会では、できないのかしら。
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ジョージ |
いや、やるよ。
たとえば、ニューヨーク行っても、
4日いるとするでしょう?
そすっと、最初の1日と2日目の半日ぐらいは、
いちおう地下鉄の切符の買い方だとか、
行っちゃいけないとこだとか
街の構造だとかどうだらかーだらを、
勉強しないといけないんで、
一緒にいろんなとこ行くのね。
で、そしたらもう、残り2日間ぐらいは、
ハイッ、ノー・スケジュール。ご勝手にっ。
て言うよ。そうすると、けっこう、
それぞれに楽しい思いをしてるよ。
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ノリスケ |
すごいわ、それってツアーにしたら
商売になりそうよ。
二組連れてくのよ、
オフを満喫してみたいおとっつぁんグループと
ブランドショップでちゃんと扱われてみたい
上昇志向のあるOLグループを。
で、前半はおとっつぁんについてって、
後半は女子についてってあげるの。どう?
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ジョージ |
そんな忙しいの、嫌!
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つねさん |
グループ間で抗そうが起きそうだ。
でもさ、自分でやったことないこと
やれたりとかって、
嬉しかったり楽しかったりするよね。
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ジョージ |
そう。それでね、
オフの達人っていう言いかたが
いいのかどうかわからないけど、
自分として意見が言えたり、
あるいは自分として人に役立つって、
すごい楽しいことじゃない?
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
その、オフには何の目的もなければ
評価もないとは言ったけど、
でも、やっぱりね、
自分、何とか株式会社の何とか課長の
誰それさんとして役に立つのでも、
何々家のお父さんとして役に立つんでも
何でもなくて、
自分個人として他人の役に立つことって、
すっごい幸せな嬉しいことなんだよね。
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ノリスケ |
うん!
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ジョージ |
で、旅行とかに行って、
たとえば、若い子とかと行くと
僕なんかとは、行く場所違うんだよね。
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ノリスケ |
うんうん。
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ジョージ |
ね? で、なんか、ほったらかしとくと、
知らないところに行って帰ってきて、
晩飯一緒に食ってるときに、
「いや、今日、どこそこ行ってきたんですけど、
けっこう、あそこって、
こういうのが面白かったですよ」
って言うのね。僕はすっごい嬉しいんだよね。
役に立つんだよ。
「あーっ、すごいね、すごいね、
僕も行ったことなかったよ、
明日、一緒に連れてってくれる?」
て言うと、彼は彼として、
僕に役にたったんだよね。
役職を離れて。そうするとね、
ああ、自分の興味を、
いっしょうけんめい生かして、
自分として頑張れば、
自分の上司であるこんな人の、
別の意味での役に立つことができるんだー、
っていうね。
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ノリスケ |
そうか!
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ジョージ |
でね、どんどんどんどんね、
自分のことを大切にするようになるよ。
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(つづきます)