APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

オンとオフ。その5
お酒と、お洒落と。

ジョージ いい例かどうかわかんないんだけど、
一緒に呑みに行くじゃない?
ノリスケ 仕事絡みの人間関係で?
ジョージ そう。で、そんときに、
いちばん盛り下がるのって、
仕事終わって呑みに行ってるのに、
最初から最後まで仕事の話題しかないとき。
つねさん はいはい。
ジョージ しかも、いちばん上座には
いちばん偉い人が座ってて、
下座にペーペー座ってて。
で、その座り方が最後まで変わらないで?
ノリスケ お酌して回んなきゃいけなくて?
ジョージ そう。
ノリスケ いちばんこっちにいる人が、
おしぼり取りに行ったり、
メニュー取りに行ったり(笑)。
ジョージ これって、何だったんだろう?
って思うよね。
ノリスケ そうねー。
ジョージ 何だったんだろう? って思うと同時に、
こんな飲み会しかできないような会社って、
最低かな? って思うのよ。
で、いい飲み会っていうのは、
さっきまで仕事してたんだけど、
一緒に飲みに行こうっ、つったら、
も、一切仕事の話はほとんど出なくって?
で、なのに、ものすごく話が盛り上がって。
んで、超、みんなが酔っ払いになって、
あ、こいつって、会社では冴えないやつだけど、
ジーパンの話させたら、
こんなにいっぱい話をするのー? とかね。
ノリスケ いいとこあるじゃんか! という発見。
ジョージ そうそうそう。
おまえ、いろいろ知ってんじゃーん、
って、いうのがあると、
いい飲み会なわけじゃない?
ノリスケ そうだね。
ジョージ それって、オフとオフがぶつかりあってるから、
いい関係になってるんだよね。
つねさん そっかそっか。
ノリスケ 仕事していくんだったら、
お酒の力借りて、なんか面白い発想をしようよ、
っていうんだったら、それでもいいんだけど。
ジョージ うん、オンでは出ないオフの部分を持ち出して、
それをオンに転嫁させようとするわけよね。
それはそれで、いいことだと思うよ。
つねさん うん。
ジョージ クリエーションの世界とかで、
生活者の立場になって考えてみようよ、
とかっていうときにはね、
けっこういいんだよ、飲んだりとかして、
いちおう役職は外して、一個人になって?
で、そんときに一個人が何にもなかったら、
生活者の気持ちには
なれなかったりとかするんだよね。
寂しいと思うよ〜。すーごい寂しい、
何が寂しいって、たとえば、
大きなスーパーの管理職のおとっつぁんならね、
ぜったい自分たちでパンツも買わないだろうし、
ポロシャツもTシャツも、
買いに行かないだろうなー、
という人たちかもしれないよね。
それが、自分たちのお店の、
マーチャンダイジングは
どうあらなきゃならないか?
っていうのを考えなきゃいけないっていうのは、
苦しいだろうなと思うよー。
ノリスケ ほんとだよね(笑)。
ジョージ それで、間違ったように記者会見で、
カジュアル・ウエア着て出てきちゃう。
ノリスケ おかま、百人くらい雇えばいいのに(笑)。
ジョージ そうだよね。ぜったいそうだよ。
僕はほんっとに、強烈にアピールするよ。
でも、ダメだね。
ノリスケ だよね。
ジョージ ダイエーの仕事しない?
って、来るおかまはひとりもいないよ。
ノリスケ そうだよね。
ジョージ やめさせてー、って言うよね。
ノリスケ GAPには来るよね。
ジョージ ん〜、そうね〜。そうなのよね〜。
ノリスケ ユニクロのヤナイさんは、
5時以降のアポ、一切入れないんだって。
ジョージ 入れないね。それで、あの人、
スーツぜったいに着ないしね。
で、今度、初めてユニクロでもって
ビジネス・ジャケット売るんだよ。
ノリスケ あ、そうなの?
ジョージ 7800円かな?
ノリスケ ふーん。
ジョージ それは、このまえ着てた。
つねさん それ、プロモーションで?
ジョージ そうそう。というか、
自分が着て気持ちいいと思わないものは
絶対に売らないっていうからね。
つねさん そうなの?
ノリスケ ユニクロって、みんなヤナイさんみたいに
頭、やわらかいのかしら。
それとも、上の一握りだけがわかってて
意外とその下には
頭かたいのがガーッていたりするのかしら。
ジョージ あ、それは、そうでしょう。
でも、頭かたいのがザーッといるから、
あれだけのことになったんだと思うよ。
ノリスケ そうか。
ジョージ そんなもんだよ。だけど、その、
頭かたいひとたちと
付き合わなきゃいけない
頭の柔らかい人たちが、
いっぱいいるんだよね。
で、それを、彼らと付き合わなくっても、
直接上と付き合えるような
仕組みをつくってやれば、会社は大きくなる。
ノリスケ 社長と話させるっていうね。
ジョージ そうそうそう。
ノリスケ 社長と話さえできれば、
いろんなことがクリアになるのかも。
だから、理想的には
社長の考えてることを、その下の、
この層がぜんぶわかってるってことなんだよね。
つねさん でも、ぜんぶオブラートで。
ノリスケ オブラートっていうか、わかってない。
わかってるような気になってる?
そうすると動脈硬化おこしちゃう。
……あ、なんだか、私たち、
妙な話してるわねえ。
ジョージ でも、日本が、なんだっけ?
経済大国から生活大国へっていうの、
なかった? むかし。
つねさん なんか、あった。
ノリスケ あったような気がする。
ジョージ でしょう? いつまでたっても、
なんなくって、もはや、
経済大国でもなくなり始めてるじゃない?
ノリスケ もうねー、10年以内ぐらいにねー、
中国とか韓国とかにねー(笑)。
ジョージ そうなんだよ。
ノリスケ あの、追い抜かれるかどうかわかんないけど、
同じになると思うんだ。
ジョージ うん。たとえばね、
イタリアとか行くとね、
経済ボロボロじゃない?
だから、オンはボロボロなんだけど、
オフの部分はね、すーごいんだよねー。
なんか。ナポリの方に行くと、
ほんっとに貧しいんだよ。
もしかしたら食えてない人たちが
いっぱいいるんだけど、
じいちゃんとかがね、朝起きると、
ちゃんとジャケット着て、
磨いた靴を履いて、
家の前に椅子を置いて、
そこに日がな一日座ってるの。
つねさん は〜、は〜、は〜。
ジョージ それが、格好いいんだよー。
も、センツァ・クラバッタって感じ?
も、ユナイテッド・アローズの売り子さん、
見に来なさい。も、年季が違うでしょ?
っていうような格好して、座ってんの。
ノリスケ 格好いいー。
ジョージ それで、奇麗なおねえちゃんが前を通ると、
いちおう声をかけるの。
ノリスケ へっ!?(笑) 愛すべきくそじじいね。
ジョージ 今晩あいてるのかい? みたいなことを。
つねさん あ〜、いいな〜。
ジョージ んで、夜になると、一家が、
子供たちも帰ってくるでしょ?
そうすると、帰ってきた子供たちも
お洒落をして、
みんなで手をつないで、
街を散歩して歩くんだよ。
ノリスケ いいね〜。
ジョージ んで、広場でもって
ベーラベラベーラベラ喋って、
で、レストランでメシ食いに行くのかな?
と思ったら、
レストランにメシ食いに行く金もないんだよね。
で、街一周して、知り合いと喋って、
帰ってきて家でメシ食うの。
でも、そこでもね、
やっぱりお洒落してたりとかするんだよ。
ノリスケ ふぉー、生活大国だ(笑)。
ジョージ そうだよ〜、ほんとに。
ノリスケ 偏ってるのが問題だけどね(笑)。
(つづきます)

2001-09-06-THU

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