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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

オンとオフ。その6
男はひとりでデパートに行きなさい。

ノリスケ この頃ね、外にご飯食べに行こう、
っていうときに誘うのって、
女の子の友だちばかりなの。
同居人は外食嫌いだし、
男の連中はなんだか億劫がるし。
むかしの同僚で、
いまも働いてる女の子たちしか、
「ちょっと美味しいもん食べに行こう!」
って気分を、わかってくんないの。
男友だちとは、ダメなのよ。寂しいなあ。
つねさん そういうのもさ、
オフの使い方なんだろうね。
ノリスケ そだよん。そういうふうに、
何ヶ月かに一度でも会って話をすると、
何か気持ちみたいなものが交換できるのね。
そうすると、ちょっとした悩みが解決したり、
お互いにいいことが起こるような気がする。
そういう相手と、場所って、あるかないかで
違うような気がするんだけどなあ。
ジョージ お休みの日に行く、お気に入りの場所。
みんなどうしてるのかな?
この人(つねさん)、
お家がお気に入りだもんね。
つねさん うん。
ノリスケ ひとりの時にでしょ?
ジョージ 一人暮らしの人はね、いいんだよね。
お家がお気に入りでもね。
ノリスケ うん。
でもレストランなんかだと
お金かかっちゃうのよね。
ジョージ そうね、コツはお金をかけないことだよね。
お金かからない、ひとりの時間の過ごし方。
つねさん たとえばさ、休みのときにしか行かない喫茶店とかさ。
ノリスケ 僕、以前、海辺の町に住んでたのね。
時間があると、海岸に椅子持ってって、
ずっと本読んでたよ。
今は、屋上に行って、本読んでる。
あれ買ったの、安いデッキ・チェア。
んで、飲み物をクーラーバッグに用意して
ずーっと本読んでんの。
つねさん それで灼けてるのね。
ノリスケ そうなの。でも、お日さまの下でなくても、
本読む場所を探すのは好き。
ひとりになれるとこ。
つねさん 僕は、テレビ観てゴロゴロ。
動物飼ってるから、ケージから出して一緒に。
ジョージ 女の人のオフって、どんなんだろう?
ノリスケ 一人暮らしで働いてる女の子は、
上手にやってると思う。
むかしっからそう思う。
ジョージ 主婦になったら? 大変だよね、
子供つくったら大変だよね。
ノリスケ 僕の友だちは、上手に預けて遊んでるよ。
前よりは、つきあってくれなくなったけど、
でも、友だちと一緒に
遊んだりする時間は、確保してる。
たぶん、ダンナや、お母さんを、
ちゃんと説得してるんだろうね。
つねさん アメリカ映画見てると、
ベビー・シッターを雇って、
夫婦で映画や演劇観に行くよね。
そういうのって、ないじゃん、日本って。
ジョージ ないねー。
ノリスケ ダンナがそういう気になってくんないからね。
ジョージ だね。思う。
ノリスケ で、女性同士で行くと、
ダンナが働いてんのに、みたいな、
ささやかな攻撃の対象になったり。
たしかにそういう人もいるけどね。
つねさん 家族を大事にするっていうのと
違うところで、封建的なのかしら?
ジョージ っていうか、ものぐさなのよ。
つねさん あーん、そうなのか。
ジョージ とくに、日本の男の人はものぐさだと思うな。
めんどくさい、って必ず言うもん。
つねさん あ、多いね。
ノリスケ 服買いに行くのも、めんどくさい、
とかね?
ジョージ めんどくさがるんだよー。
めんどう、めんどうが楽しいんだけどね。
つねさん ん、だから、めんどうが楽しいってこと、
知らないんじゃないかな。
ジョージ あとね、訓練できてないの。
どこに行ってどういうものを見ればいいのかも
わからなければ、ものの違いがわからないの。
つねさん 情報も活用してないよね。
雑誌は読むけど、それはなんか、
週刊ポストだったりっていう。
ジョージ そうだよね。
もったいないなと思うのが、
若いころにメンズ・クラブとか
読んでた人たちが、
結婚して子供できちゃうと、
読まなくなるんだよね。
読み続ければいいのにね。
ノリスケ ほんとだよね。
ジョージ 雑誌を読むのが億劫なら、
それこそ、デパートの上から下まで、
じっくりじっくり、
ぶーらぶーらぶーらぶーら。
そゆのも、いいんじゃないかな?
ノリスケ それ、お金かかんなくていい。
流行もわかるし、ものの値段もわかる。
ジョージ ねっ。で、嫁さんと一緒に行くと、
邪魔臭いんだよ。絶対。
ノリスケ あの、喜んじゃうからね。
あたしが、あたしが、になっちゃう(笑)。
ジョージ そう。嫁さんだと散歩になんないんだよ。
洋服売り場でもって1時間とかになっちゃって、
くたびれるだけだから。
ひとりで、とりあえず、
昼ちょっと前ぐらいに行って、
エレベーターでデパートの最上階まで行って、
昼飯を食って。
それから、エスカレーターで
1階ずつ下に降りながら。
そうすると2時間ぐらいの、いい散歩だよね。
ノリスケ けっこう歩くしね。
言い訳としては、じゃあ、
奥さんにちっちゃいプレゼント1個、
買って帰ってくればいいじゃない?
ジョージ ダメ! それは、クセになるから、
やめたほうがいい。
ノリスケ あそう?(笑)ハンカチ1枚でも?
つねさん 一緒に行ってから、
あとで何時間後とかっていうのは、
ダメなの?
ジョージ ダメだな。
つねさん それはまた、違うんだ。
ジョージ ダメだな。そーれはダメだね。
だって、行方不明になれなきゃ
いけないんだから、
家を出るときからひとりじゃないとダメ。
つねさん あそっか。
ジョージ だいたい、お父さんがひとりで
家を出るときって、
ゴルフぐらいしかなかったりとかするんだよ。
つねさん あ、そっか。そうだね。
ノリスケ ゴルフか浮気だ。
ジョージ ねーっ。だからね、ゴルフじゃないときにね、
ひとりで行ってたら浮気って言われるの。
ひとりで出るのが当たり前にしとけば、
浮気のときも楽なのにね。
ノリスケ すーぐどっか行っちゃうのよ、っていうの、
楽だよ、相手の人も。
ジョージ そうそうそうそう。
ウチのは、まったくどこ行ってんだかー。
でもまあ、お金使ってるようでもないしー。
ノリスケ けっこう若いでしょう? なんてね(笑)。
ジョージ そうそうそう。
ノリスケ いいことだと思うんだよね。
ジョージ で、ハンカチとかブローチとか買って帰っちゃ
ダメな理由はもいっこあって、
これってさ、若い女の子にあげるつもりで
買ったやつを私に回したのかしら、
って思われるのよ。
ノリスケ ハハハハ。それは気がつかなかった。
つねさん そっかー。
ジョージ 気の利いた買い物っていうのはね、
今日、デパートの催事場で
けっこういい伊万里焼のフェアがあって、
いいお湯飲みがあったから、
2つ買っといたよー、とかっていうのをね、
ポーンと、たまに買って帰ってくると、
おっ、なかなかいいじゃん、
とかって思われるんだよね。
ノリスケ 素敵だねー。
ジョージ んで、「あんた、何してんの? 最近休みの日」
って聞かれたら、正直に、
「んー? デパートぶらぶらしてるだけ」
で、いいんだよ。そのうち、自分で自分の
ネクタイ買って帰ったりとか。
あるいは靴下買って帰ったりとかしてね。
そうすると、奥さんが、なんかいいなー、とか、
思うんだよ。で、そのうち奥さんのほうから、
「ねえねえ、あなた、たまには私も一緒に
 デパート連れてって」
て言われたら、デートになるんだよね。
つねさん おお。
ノリスケ おお。
ジョージ 若いころのデートって、
ま、今の男の子、どうかわかんないけど、
男が行き先を決めて女がついてくるのが
デートじゃん。
だけど、結婚したら、
女に手引っ張られて男が連れてかれるんだよ?
デートじゃないよ。
これは、男の奉仕作業だよね。
ノリスケ うん。
つねさん うん。
ジョージ いいね。もう、男はどんどんひとりで
デパートに行きましょうっ!
散歩してると、若い売り子さんと
知りあいになれるかも知れない。
つねさん あと、やっぱり、そこに来ている
いろんな人の服見たりとかって、あるじゃない?
ジョージ それは上級テクニックだね。
つねさん あ、そっか、上級テクニックなのね(笑)。
ノリスケ 目が行かないかも知んないね。
食材売り場とかも、面白いんだけどね。
ジョージ で、洋服売り場かなんかで、
洋服見てると必ず来るんだよね、
女の子かなんかがね、
何かお探しですか? って。
「んー、なんか、似合うのを……
 どういうのが似合いますかねー」
とかって。で、その場では絶対に買わないの。
また来週も来ますー、とかって。
そしたら、なんか、
毎週来る変なオヤジで有名になるから。
つねさん あ〜。
ジョージ いいよー。そしたら、
みんながよってたかって
イメージ・チェンジさせようとするからね。
ノリスケ ふふっ、楽しい。
ジョージ 楽しいよーん。
ねねね、お料理作るとかって、どうかな?
ノリスケ いいと思うよ、それ!
つねさん ねっ。
ノリスケ でもこれも、「洋服はお勉強」と思ってる人には、
同じことらしいの。
作れば、って言うと、
どうやって勉強したんですか?
て聞かれちゃうの。
好きでやってるだけなんだけど。
ジョージ あのね、料理を作る、
って考えるからいけないんであって、
あなた作る人、僕食べる人、っていう関係を、
ちょっと壊せばいいんだよ。
ノリスケ うん。
ジョージ んと、あなた作る人、僕も作る人、
だから、あなたも食べて僕も食べる、にすれば。
「今日、お父さんが作ってやろうっ!」
っていうと、
お父さんが全部作ろうとするんだよね。
だから、カレーくらいしかないのさ。
つねさん そうね。
ノリスケ そりゃそーだ。
ジョージ ね。
つねさん で、あの、逆にそれが
めんどくさかったりとかするじゃない?
周りからしたら。
ジョージ そうそう。で、後片づけしないとか
どうとかこうとか言われて、
お父さん、二度と台所に立たないでちょうだいっ、
て言われるの。だから、奥さんが作ってるときに、
横に立って、なんかお手伝い、
今日はさせて、って。
じゃあキュウリ切って、とかね。
レタスちぎってー、とか。
つねさん それって、いいねー!
ジョージ ってやってると、
すごいラブラブな夫婦だよー。
つねさん なんか、一緒に、なんか、
別の作っててもいいから。
ジョージ そうそうそう。
つねさん なんか、台所に立つ?
ジョージ いいよね。で、そういうのを見て育つ子供って、
ぜったい家庭内暴力を起さないと思う。
つねさん あー。
ジョージ 人も殺さないだろうし。
ノリスケ いいねー。
ジョージ ね。そう。で、そういうことずっとやってると、
会社かなんかで、
たまにピクニックかなんか行って、
お外でもって料理作るときに
自然に手伝いができるよ。
ノリスケ うん、包丁持てるね。
ジョージ そう。千切り、するの。
ノリスケ 格好いいよねー、
サクサクサクッて切れたらねー。
つねさん もう、おーっ、て。
ノリスケ それだけでいいよね。
格好いいよね。うん。
ジョージ オフを確立しないといけないから、
なんか特別なことしなきゃいけない、
と思うからダメなんだろうね。
要は、その、自分としていろんなことを、
ちょこっとずつでもいいから、
継続してやってみる努力をすれば、
何とかなるのかな? と思うのよ。
(このテーマは、これにておしまい。
 次は“お料理”をもちょっと話します。
 お楽しみに!)

2001-09-07-FRI

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