ジョージ |
お箸づかいね。
中国料理かなんか食べに行くとさ、
大皿でバーンと出てきくるじゃない?
それをささっと取ってくれる女の人って、
すごい素敵じゃん。
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ノリスケ |
うん。役割っていう意味じゃなくてね。
だからそれは、男の子も、同じなのよ。
上手な箸づかいで、
ささっと取ってあげられたら
格好いいの。
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つねさん |
ああー。
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ジョージ |
だけど、取ってくれるのに、
お皿にてんこ盛りだとかね。
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つねさん |
あーの、何も考えずに、
ガサッとがさつにやるヤツ?
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ジョージ |
そう。あと、前菜三品盛りかなんかが出てきて、
その3つを綺麗に小皿に盛りつけてくれて、
そっと出してくれたら、
ほーっ! この女ーっ、かっこいい!
て思うもんね。
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つねさん |
たしかにね。
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ノリスケ |
お膳立てできると、かっこいいよね。
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ジョージ |
それは、「料理」なんだよ。
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ノリスケ |
そうか、それも、料理だ。
盛りつけは料理。
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ジョージ |
ねっ?
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つねさん |
おう。
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ジョージ |
ま、かといって、コンビニで買ってきたお総菜を
盛りつけるのだけが上手な女っていうのは、
ちょっとやかな? って思うけど。
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ノリスケ |
それは、寂しいかなー?
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ジョージ |
でも、あの、スチロールのパックで、
そのまんま出してくるよりはマシかな?
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つねさん |
まあねー。ま、2品ぐらいまでなら許せるけど、
全部はイヤよね、ってやつ?
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ノリスケ |
んー、ぜんぶは困るね。
ちょっとごまかしで、プラスの2品だね。
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つねさん |
1品は、私これ作りました、みたいな、
主張があるメイン・ディッシュがあったら、
それはちょっと許せるでしょう。
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ジョージ |
ねえねえ、好きな人のために作りたい料理って、
どんな料理?
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ノリスケ |
僕は、ごくごく普段のもの。ふつうのもの。
「いつ食べても、これはおいしいね」
っていうものを、食べさせたい。
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つねさん |
僕も、なんか、そんとき食べたいやつって感じ。
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ジョージ |
ああ、僕、も、僕、ものすごいの……
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ノリスケ |
あるの? とっておきがあるの?
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ジョージ |
うん。みんながうなずく答え、
ひとつ知ってるよ。
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つねさん |
なに?
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ジョージ |
「朝ごはん」。
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ノリスケ |
ああ〜!
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ジョージ |
昔ね。昔、二丁目のお店でね、
今宵の恋の相手が見つかりました。
その男といっしょに帰るでしょう。
で、しばらくして、そのお店行くでしょ?
そうすると、マスターから
「どうだったの、あの人?」って聞かれるの。
そうするとね、僕の答えがね、
1、お水、
2、コーヒー、
3、フレッシュ・オレンジ・ジュース、
4、洋食、
5、和食。
そのどれかなのよ。
その5段階が、朝ごはんにあったのよ。
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ノリスケ |
そ、それは、どういう……
あとのほうが、いいごはんだけど。
わかった。一夜を過ごした相手の評価が、
その「朝ごはん」なんでしょう!
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ジョージ |
そうよ。
だって、もう、もう、いいわ、って、
二度と会わなくていい、って思ったら
朝起きて、「水でも飲む?」って言うの。
で、そん次はコーヒー入れてあげて。
まあ、可もなく不可もなくな場合には、
キュルキュルキュルって、
オレンジ・スクワッシャーでもって、
フレッシュのオレンジ・ジュース作ってあげて。
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ノリスケ |
あ、それは、けっこうなことじゃない?
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ジョージ |
でしょう? 出してあげるの。それが真ん中。
で、んー、あと、まあ2・3回はOKかなー?
っていう感じだと、トースト焼いてあげて。
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ノリスケ |
シリアルとか?
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ジョージ |
そう。スクランブル・エッグとかで、ね?
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ノリスケ |
アメリカン・ブレックファスト。
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ジョージ |
洋朝食ね。
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ノリスケ |
じゃあ、和食は……
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ジョージ |
そりゃあ、ああ、もう、
一生いっしょにいたいわ、とかって思うと、
味噌汁作り始めるの!
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ノリスケ |
アハハハハハ。
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ジョージ |
ね?
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つねさん |
僕、水も出なかった。
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ジョージ |
うふ、んー、だってー、なんかー、
そんな、朝ご飯作るヒマもなかったの。
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ノリスケ |
何それ?(笑)
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ジョージ |
だってー、寝顔を見ているのが嬉しくって。
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つねさん |
ハッハッハ! ……ウソつき。
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ジョージ |
ウソだよ。
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ノリスケ |
僕、起きる時間が違うから、
朝ご飯作って置いてくるよ。
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ジョージ |
朝ご飯て、いいよね〜。
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ノリスケ |
すっごい喜んでくれるよね。
一緒に住んでいるけど、
いつも作ることを習慣にしたり
義務にしたりはしてないんだ。
自分が食べるから2人分作って、
さめちゃうけど置いとくとかは、する。
そうすると、すっごい喜んでくれるのね。
意外なほど。
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ジョージ |
好きな男に朝ご飯をつくるのって、
幸せなことよ。
あのね、朝ご飯を作る空間っていうのはね、
何にもないんだよ。
まずね、起しちゃいけないでしょう?
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つねさん |
ああ。
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ジョージ |
だからね、そーっとね、ベッドを出てね、
テレビもつけられないしね。
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つねさん |
音楽もかけられないし。
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ジョージ |
音楽もかけられないんだよ。
音がないんだよ。
音のないシーンとした台所でもって、
トントントントンっていう、
音だけがするんだよ。
そうするとね、もうね、それだけでね、
盛り上がっちゃうの。
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つねさん |
あれでしょ? ご飯が炊き上がるときに、
シューッて音がして(笑)。
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ジョージ |
そうなの! シューッて音がするんだよ。
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ノリスケ |
ちょっと聞いてくれる?
僕はそれで失敗しちゃったの。
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つねさん |
ウハハッ。
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ノリスケ |
もうね、作ってあげようと思ってね、
すっごい清らかな気持ちで(笑)。
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つねさん |
はい。
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ノリスケ |
で、メシ作ってあげようって、
お魚があったからお魚焼いといて。
お味噌汁を作って。
あ、ご飯炊いとかなくっちゃ、て思って。
うち、玄米なのね。
で、玄米、そのまま炊く時間なかったの。
つけ込まなきゃいけないから。
で、精米機があるの。
で、それを、なんにも悪びれずに、
精米機にジャッて入れて、
グォーッ! て(笑)。爆音!
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つねさん |
音がしちゃったのね。
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ノリスケ |
あの、工事現場のような音が(笑)。
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ジョージ |
それはダメ……
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ノリスケ |
も、機嫌悪いの、起きてきて、
なにやってんのーっ? て(笑)。
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ジョージ |
起されて、って感じだよね。
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つねさん |
無理やりね。
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ノリスケ |
失敗しました。
お料理上手も、ちょっと、
精米機まであると問題だったわ(笑)。
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(つづきます)