つねさん |
メシ食いに行って、
これ美味しかったーって言ったら、作るほう?
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ノリスケ |
それはね、そうでもないよ。
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つねさん |
あーそう?
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ノリスケ |
家で作るものはね、ふつうのものばっかり。
家で作れないもん食べに行くだと思うから。
部分的に、あ、この工夫いいなとかいうのは、
真似することあるけど。
できないから食べに行く、
ていう前提があるから、やんないかな。
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
でも、部分的にもらうのって、いいことだよね。
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ノリスケ |
そう。これって直火であぶるといいんだ、
みたいなね、そういうことね。
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ジョージ |
あとね、野菜ってこういうふうに切ると、
綺麗に見えるんだ、とか。
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ノリスケ |
そう。
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つねさん |
そうだね、盛りつけとかね。
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ジョージ |
たとえば、ミョウガだって、
縦に切るのと横に切るのでは味が違うんだー、
とかね。そういうのは、勉強になるよね。
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ノリスケ |
うん、そういうことは勉強になるけど、
そのもの自体を再現っていうよりは、
もう1回あのお店に行きたいから、
お仕事頑張ろうみたいな気持ちのほうが
強いかな?
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ジョージ |
でも、それは、あれだよ、
自分で食うものを自分で払う人の特権だよ。
よく、グルメ系の番組、
テレビ番組とか観てると、
おばさんたちが何か旨いとこ食いに行って、
まあ、美味しい、
これ、私作ってみようかしらー、
って言うけど、あれは絶対作らないよね。
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つねさん |
作らない、ね。れない、じゃなくってね。
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ジョージ |
特にさ、いいよ、よしんば作ったとしよう、ね。
そしたら、食わせてもらった亭主とかさ、
おまえ、気の利いたもん作るじゃないか、
どうしたんだ?
えー、あたし、こうこうこういうわけで
ご近所のお友達と、お夕ご飯食べに行ったの、
どこそこのお店ー、4千5百円だったの、
って言ったら、夫婦喧嘩が始まるんだよ。
そしたら、絶対作れない。
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つねさん |
そっかー、そうだよね。
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ジョージ |
うん。
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つねさん |
確かにそうだね。
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ジョージ |
ね。そういう人、いっぱい知ってる。
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ノリスケ |
レパートリー増やそうっていうより、
素材、いい塩を探そうとか、
美味しいお水は何だろう? とか、
そういうほうに行ってるな、僕は。
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つねさん |
でも、それはさ、
あらかじめレパートリーがある人なんだよ。
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ジョージ |
いや、なんか、どんどんどんどん
おんなじもんばっかり作るようになるよね。
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ノリスケ |
うん。僕、レパートリー、
ないんじゃないのかな?
毎日食べるものって、かわりばえしないよ。
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ジョージ |
今年の夏の、
我が家のゴーヤチャンプルみたいなね。
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つねさん |
あ〜、今年は、ずいぶんゴーヤ食べたね。
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ジョージ |
で、あれだけいっぱい作って食べて、
この前、僕たちはそうとう上達したよね、
って思ったのに、今日、ここに来て、
ちょっと沖縄系のバーに来てるんですけど、
やっぱり違うのよね。
こっちのほうが美味しいです〜。
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つねさん |
ハハハハハ。
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ジョージ |
それとね、ちょうど、あの、おととい僕、
沖縄に行ってたんだけど、
喫茶店にまでゴーヤチャンプルがあるんだよ。
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つねさん |
まるで、四国の……
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ジョージ |
そう、四国の喫茶店にうどんがあるような感じ。
でもね、四国の喫茶店には
メニューにうどんが載ってるけど、
沖縄の喫茶店のメニューにはなかったんだよね。
で、沖縄といえばゴーヤチャンプルだよねー、
とかって言ってたら、喫茶店のおばさんが、
「ゴーヤチャンプル定食、作りましょうか?」
って言って。あ、じゃあ、お願いします、
って言ったら……旨い。……旨い。
およよよよよよ。旨い!!!
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ノリスケ |
地肩が違うってやつ?
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ジョージ |
そのとき、あらためて、
ああ、家庭料理っていうのは旨いんだ、
って思ったね。
でね、この前、青森行ったとき、
こっちはまだ暑さが残ってたけど、
キノコが出始めてるんだよね。
東北で北のほうだから。
取ったばっかり、出たばっかりのキノコを、
味噌汁にして食えばいいよって
地元の人が届けてくれて。
そしたらね、それ取ってくれた人が、
うちでは、キノコの汁には
大根おろしを入れるんですよ。
温かい味噌汁なんだけど、
味噌汁の完成直前に大根おろしを入れて
一煮立ちさせるんですよって。
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ノリスケ |
へー?
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ジョージ |
そうするとね、さっぱりするし甘味が出るし、
若いキノコっていうのは、
菌で毒を持ってる場合があって、
毒消しにもなるから
大根おろしを入れるんですよって。
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ノリスケ |
ほー。
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ジョージ |
で、貰ったキノコをお店に渡して、お店の人に、
すいません、これで、お味噌汁作って下さい、
って言ったら、作ってきた味噌汁にはね、
大根おろしが入ってたの。
その会話は知らないはずの人なのに。
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ノリスケ |
ほー。
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つねさん |
あー。
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ジョージ |
美味しかったよー。
で、こういうのはやっぱり、家庭料理だよね。
ノリさんちの家庭料理って何?
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ノリスケ |
とろろ汁とかかなー?
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つねさん |
あー。
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ジョージ |
つねさんとこは?
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つねさん |
うちはね、白菜とクジラの煮物。
最近はチャンポン。
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ジョージ |
なるほどね。
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つねさん |
ちゃんとね、鳥ガラでスープから作って。
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ノリスケ |
お魚の内臓系の料理もあったよ。
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ジョージ |
あ〜。
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ノリスケ |
あれ、捨てちゃうようなもんなんだろうね、
たぶん、地元でしか食べないようなもんでしょ。
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ジョージ |
ウチは天ぷら。天ぷらって言っても、
さつまあげみたいな、あれを
天ぷらって言うんだけど。
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ノリスケ |
はいはいはい、あれね。
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ジョージ |
あとさ、味噌が違うね、お味噌が。
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ノリスケ |
お味噌、ぜんぜん違う。
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つねさん |
そうだね。
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ジョージ |
私が作ったお味噌なの、っていうのは、
ものすごい嘘ぽくてで嫌だけど、
私のお母さんから分けてもらったから、
お味噌汁作ってあげるー、とかって、
男的には、すっごい嬉しいね。
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ノリスケ |
嬉しいね。
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ジョージ |
ね。それが甘かろうがしょっぱかろうが、
ああ、そうなんだ、って。
それで、魔が差してさ、
「お前と結婚したら毎朝これが食えるんだー」
とかって言っちゃうんだよね。
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つねさん |
ところが(笑)。
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ジョージ |
そう。ぜったい作ってくれなかったり
するんだと思うよ。
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ノリスケ |
あのさ、かたくなにさ、
ウチではこうなのっ、つってさ、
かたくなな料理されると、
ちょっといやだね(笑)。
二人の暮らしが始まったら、
二人の味覚を育てるべきだから、
いままで自分がつくってきた料理の味は
彼と暮らし始めたときに、
変える覚悟でいたほうがいい。
変えるっていうか、いままでの蓄積を基本にして
アレンジしてくっていうか。
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つねさん |
ベースはそれでね。
で、ちょっともう少し薄い味が好きなんだよ、
とかさ。なんか。
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ジョージ |
だから、今言ったようなことは、
ひとりの男に、一生に一回しか使えない、
飛び道具だよ。
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つねさん |
あー、そっかー。
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ジョージ |
僕の顔なじみの子でね、
けっこう仲が良かったの。
それで、旅行とか行こうよ、っつったら、
いやー、旅行は行けない、って言うんだよね。
なんで? ペットかなんか飼ってるの?
って言ったら、いやー、ペットより面倒なの
飼ってるんだよ、って。
なに? ったら、
ぬか床育ててるから、って(笑)。
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つねさん |
は〜、すてき。
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ジョージ |
夏の旅行は行けないんだよ、って。
毎日かき混ぜないといけないから、
って言われた。も、そん時にはね、も、
感心を通り越して笑ったね。
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つねさん |
ああ、そうだね。
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ノリスケ |
うん。自分にぬか漬けさせたら
上手いと思うんだけど、
それを考えると嫌だね。
梅干しまでは、許せるかも。
期間限定だから。
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つねさん |
そう。
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ノリスケ |
ペット飼わない理由と
ちょっと似てるかも知んない、たしかに(笑)。
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つねさん |
でもペットって、旅行のとき預けられるもん。
ぬか床、預けられないもん。
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ノリスケ |
ぬか床あずけるとこないもんね。
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つねさん |
人の手が入ったら、また変わってくるから、
味が。
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ジョージ |
そうだね。
でね、茄子とかつけてね、その……(笑)
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つねさん |
なに? なんで笑ってるの。
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ジョージ |
「寂しい時には、茄子を丸ごと使って
慰めるの」っていうんですもの(笑)。
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ノリスケ |
ぐははは。やだー。いきなり、おげれつ。
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(やだやだ。つづきます)