ジョージ |
ふふ、お料理は楽しいよねー。
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つねさん |
お料理は楽しい!
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ノリスケ |
ずっと楽しかった?
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ジョージ |
一時期、僕、嫌いになったことある。
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つねさん |
なんで?
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ジョージ |
小学校のね、調理実習?
家庭科の授業の。
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つねさん |
あ、そっか、思い出した。
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ジョージ |
で、目玉焼き作るでしょ?
目玉焼きとこふきいもっ。
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ノリスケ |
うん、作る作る。
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ジョージ |
でさ、クラスでね、
「いちばん上手で美味しい
目玉焼きができたチームを選びましょう」
とかっていうふうになったのよ。
「家に帰って、
お母さんと美味しい目玉焼きって、
どういうふうに作ればいいのか、
相談してきなさい」
とかって言われたんだよ。
来週までに、って。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
それで家に帰って、
「ねえねえ、美味しい目玉焼き、
どうやって作ればいいの?」
っつったら、
「あんたバカねー、
ベーコンとかハムとかと一緒にして、
ハム・エッグとかベーコン・エッグにすれば、
美味しいに決まってるじゃない」
って言われたの。
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つねさん |
あ、そっかー。
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ノリスケ |
それは、美味しいよね。
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ジョージ |
で、調理実習の日が来ました。
ぼく、ロース・ハム持ってったの。
それも筒状よ、切ってないやつ!
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つねさん |
ハッハッハッハ!
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ノリスケ |
極端(笑)。3切れくらいで、いいじゃない。
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つねさん |
この、クソガキ、って感じ?(笑)
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ジョージ |
それで、面白いんだけど、
ウチの小学校って商店街の中の小学校なのね。
で、あの、じゃまくさいのがいるのよ。
PTAに対しても影響力持ってる商店主が
親の息子って、じゃまくさいんだよね。
そうすると、そういうじゃまくさいやつって、
一箇所に集められるの。
ウチの班の4人ってね、
ほんっとに皆んなじゃまくさいんだよ。
そしたら、4人が4人ともだよ?
ハム持ってきてんの! 筒のまま!
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ノリスケ |
ガハハハハハ。
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ジョージ |
で、ほーら、そうでしょう? って。
やっぱハムエッグだよねー、って言いながら、
ハム薄ーく切って。
それもね、芸術的に薄く切れたのよ。
あの年齢としたらば。
で、ハム・エッグ作ったんだよ。
んで、先生のとこ、持って行きました。
そしたらね、10点満点でね、4点なんだよ!
なんで? っつったら、
目玉焼きを作れって言ったわけであって、
ハムエッグを作れとは言わなかった、
だから、これは目玉焼きじゃない、
美味しい目玉焼きじゃない、って言われたの。
で、僕ね、しばらくね、
料理作るのね、やめたの。
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ノリスケ |
アハハハハ。
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ジョージ |
失礼ですよー。
家帰って、
「どうだった? 今日、どうだった?」
「4点しかもらえなかった」
って、母に言ったら、母ったらこういうの。
「もー、ほんとにね、
貧乏人の言うことは信じちゃダメよ!」
って……。
我が家が倒産する前の話ですけど。
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ノリスケ |
ハハハハハ。
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ジョージ |
たとえば、今日は目玉焼きを作りましょうと
思って、冷蔵庫開けて、
たまたまハムが残ってたら、
ハムエッグにするでしょう?
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つねさん |
するするー。
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ノリスケ |
まず、目玉焼きだけ作るっていうことは、
僕もないよ。つまり、その授業って、
「おいしく食べることが大事」っていう
肝心なところを、ぜんぶ忘れてるのよ。
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ジョージ |
でしょう?
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ノリスケ |
卵しかないんだったら、
オムレツのほうが美味しいし。
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ジョージ |
でしょう?
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つねさん |
あ、僕、だし入りの卵焼きにする。
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ジョージ |
ね?
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つねさん |
ねー。
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ジョージ |
目玉焼きっていうのは、
ハムエッグ作ろうと思って、
ハムがなかったら、
ウィンナーさんでも何でもいいから、
とりあえず肉炒めるよね。
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つねさん |
あ、入れる入れるー。
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ノリスケ |
うん、うん。それがおかずというものよ。
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ジョージ |
悔しかったー。
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ノリスケ |
まあ、美味しい目玉焼きに純化させるんなら、
弱〜い火で、じっくりやれば、
ホテルの朝食みたいのはできるわよね。
でもねえ。
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ジョージ |
すっごい悔しかった。ほんっとに。
ほんとよ、それからしばらくの間、
家でハムエッグを食べるたんびに、母が、
「あんたんちの学校の先生は、
たぶん一生ハムエッグなんか
食べないんだろうね」
とかって言ってたわ。
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つねさん |
いや、こわっ。
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ジョージ |
「あーっ、ハム・エッグは美味しい、
美味しい」って言いながら。
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ノリスケ |
すっごい家(笑)。
そのうち倒産するとも知らずに。
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つねさん |
(笑)。トラウマ?
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ジョージ |
だって、やっぱり、人間、
食べるっていうことは、
一生なわけじゃない?
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つねさん |
そりゃそうだ。
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ジョージ |
でしょう? だって、いつかはさ、
いつかはセックスもできないわけよ。ね?
で、いつかは、寝るなって言われても、
もうもう、ずっと寝ちゃうわけじゃない?
でも、食欲はなくなって食えなくなったら、
もう、人間じゃなくなるんだから、
やっぱり、食べることは必死になんなきゃ。
人生をかけて食べるのよ!
なのに、それを粗末にするのがいるのよ〜。
なーんか、人がせっかく作ってくれたものを
残して当たり前とかね。いるの!
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つねさん |
あれだよね、旨いもの食ったら、
俺生きてるーって実感するけど、
セックスやったからって、
生きてるっていう実感はないよ。
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ジョージ |
んー、たまにそういうセックスすることも
あるけどね。
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つねさん |
ごめんなさいっ、フリが悪かったざんす。
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ジョージ |
僕、肉ジャガ戦争したことあるからね、
1回。
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ノリスケ |
なに? それ。
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ジョージ |
僕が作る肉ジャガと、
そいつが食べたい肉ジャガが
根本的に違ってたの。
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つねさん |
そいつが食べたい肉ジャガって、どんなの?
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ジョージ |
基本的に、基本的に僕が作る
肉ジャガっていうのは、
ほとんどお砂糖入んなくて、
タマネギの甘みと、しらたきが入っていて、
豚肉で作るんだよ。
で、ジャガイモは男爵さん使って、
ちょっとコロコロ、大っきめに煮崩しながら?
お汁けっこうたっぷりめで、
薄口醤油で作るの。
でも、その人は、そう、すき焼きみたいな。
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ノリスケ |
はいはいはい。
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ジョージ |
しかも、水分がほとんど無くって。
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ノリスケ |
はいはい。
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ジョージ |
あの、基本的に僕、
ミリン使う料理好きじゃないんだよね。
なのにそいつのは、ミリンどぶどぶなの。
それですごい喧嘩して、
別れたことあるものっ。
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ノリスケ |
すっ、すごい極端……。
歩み寄ればいいのに……。
ああ、うちの人は料理下手でよかった。
なに食べても「おいしいね」だもーん。
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つねさん |
ふん。「ごちそうさま」って
言って欲しいんでしょう。けっ。
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(このテーマはこれでおしまい。