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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

お料理だいすき。その9
ご馳走様。

ジョージ ふふ、お料理は楽しいよねー。
つねさん お料理は楽しい!
ノリスケ ずっと楽しかった?
ジョージ 一時期、僕、嫌いになったことある。
つねさん なんで?
ジョージ 小学校のね、調理実習?
家庭科の授業の。
つねさん あ、そっか、思い出した。
ジョージ で、目玉焼き作るでしょ?
目玉焼きとこふきいもっ。
ノリスケ うん、作る作る。
ジョージ でさ、クラスでね、
「いちばん上手で美味しい
 目玉焼きができたチームを選びましょう」
 とかっていうふうになったのよ。
「家に帰って、
 お母さんと美味しい目玉焼きって、
 どういうふうに作ればいいのか、
 相談してきなさい」
とかって言われたんだよ。
来週までに、って。
ノリスケ うん。
ジョージ それで家に帰って、
「ねえねえ、美味しい目玉焼き、
 どうやって作ればいいの?」
っつったら、
「あんたバカねー、
 ベーコンとかハムとかと一緒にして、
 ハム・エッグとかベーコン・エッグにすれば、
 美味しいに決まってるじゃない」
って言われたの。
つねさん あ、そっかー。
ノリスケ それは、美味しいよね。
ジョージ で、調理実習の日が来ました。
ぼく、ロース・ハム持ってったの。
それも筒状よ、切ってないやつ!
つねさん ハッハッハッハ!
ノリスケ 極端(笑)。3切れくらいで、いいじゃない。
つねさん この、クソガキ、って感じ?(笑)
ジョージ それで、面白いんだけど、
ウチの小学校って商店街の中の小学校なのね。
で、あの、じゃまくさいのがいるのよ。
PTAに対しても影響力持ってる商店主が
親の息子って、じゃまくさいんだよね。
そうすると、そういうじゃまくさいやつって、
一箇所に集められるの。
ウチの班の4人ってね、
ほんっとに皆んなじゃまくさいんだよ。
そしたら、4人が4人ともだよ?
ハム持ってきてんの! 筒のまま!
ノリスケ ガハハハハハ。
ジョージ で、ほーら、そうでしょう? って。
やっぱハムエッグだよねー、って言いながら、
ハム薄ーく切って。
それもね、芸術的に薄く切れたのよ。
あの年齢としたらば。
で、ハム・エッグ作ったんだよ。
んで、先生のとこ、持って行きました。
そしたらね、10点満点でね、4点なんだよ!
なんで? っつったら、
目玉焼きを作れって言ったわけであって、
ハムエッグを作れとは言わなかった、
だから、これは目玉焼きじゃない、
美味しい目玉焼きじゃない、って言われたの。
で、僕ね、しばらくね、
料理作るのね、やめたの。
ノリスケ アハハハハ。
ジョージ 失礼ですよー。
家帰って、
「どうだった? 今日、どうだった?」
「4点しかもらえなかった」
って、母に言ったら、母ったらこういうの。
「もー、ほんとにね、
 貧乏人の言うことは信じちゃダメよ!」
って……。
我が家が倒産する前の話ですけど。
ノリスケ ハハハハハ。
ジョージ たとえば、今日は目玉焼きを作りましょうと
思って、冷蔵庫開けて、
たまたまハムが残ってたら、
ハムエッグにするでしょう?
つねさん するするー。
ノリスケ まず、目玉焼きだけ作るっていうことは、
僕もないよ。つまり、その授業って、
「おいしく食べることが大事」っていう
肝心なところを、ぜんぶ忘れてるのよ。
ジョージ でしょう?
ノリスケ 卵しかないんだったら、
オムレツのほうが美味しいし。
ジョージ でしょう?
つねさん あ、僕、だし入りの卵焼きにする。
ジョージ ね?
つねさん ねー。
ジョージ 目玉焼きっていうのは、
ハムエッグ作ろうと思って、
ハムがなかったら、
ウィンナーさんでも何でもいいから、
とりあえず肉炒めるよね。
つねさん あ、入れる入れるー。
ノリスケ うん、うん。それがおかずというものよ。
ジョージ 悔しかったー。
ノリスケ まあ、美味しい目玉焼きに純化させるんなら、
弱〜い火で、じっくりやれば、
ホテルの朝食みたいのはできるわよね。
でもねえ。
ジョージ すっごい悔しかった。ほんっとに。
ほんとよ、それからしばらくの間、
家でハムエッグを食べるたんびに、母が、
「あんたんちの学校の先生は、
 たぶん一生ハムエッグなんか
 食べないんだろうね」
とかって言ってたわ。
つねさん いや、こわっ。
ジョージ 「あーっ、ハム・エッグは美味しい、
 美味しい」って言いながら。
ノリスケ すっごい家(笑)。
そのうち倒産するとも知らずに。
つねさん (笑)。トラウマ?
ジョージ だって、やっぱり、人間、
食べるっていうことは、
一生なわけじゃない?
つねさん そりゃそうだ。
ジョージ

でしょう? だって、いつかはさ、
いつかはセックスもできないわけよ。ね?
で、いつかは、寝るなって言われても、
もうもう、ずっと寝ちゃうわけじゃない?
でも、食欲はなくなって食えなくなったら、
もう、人間じゃなくなるんだから、
やっぱり、食べることは必死になんなきゃ。
人生をかけて食べるのよ!
なのに、それを粗末にするのがいるのよ〜。
なーんか、人がせっかく作ってくれたものを
残して当たり前とかね。いるの!

つねさん あれだよね、旨いもの食ったら、
俺生きてるーって実感するけど、
セックスやったからって、
生きてるっていう実感はないよ。
ジョージ んー、たまにそういうセックスすることも
あるけどね。
つねさん ごめんなさいっ、フリが悪かったざんす。
ジョージ 僕、肉ジャガ戦争したことあるからね、
1回。
ノリスケ なに? それ。
ジョージ 僕が作る肉ジャガと、
そいつが食べたい肉ジャガが
根本的に違ってたの。
つねさん そいつが食べたい肉ジャガって、どんなの?
ジョージ 基本的に、基本的に僕が作る
肉ジャガっていうのは、
ほとんどお砂糖入んなくて、
タマネギの甘みと、しらたきが入っていて、
豚肉で作るんだよ。
で、ジャガイモは男爵さん使って、
ちょっとコロコロ、大っきめに煮崩しながら?
お汁けっこうたっぷりめで、
薄口醤油で作るの。
でも、その人は、そう、すき焼きみたいな。
ノリスケ はいはいはい。
ジョージ しかも、水分がほとんど無くって。
ノリスケ はいはい。
ジョージ あの、基本的に僕、
ミリン使う料理好きじゃないんだよね。
なのにそいつのは、ミリンどぶどぶなの。
それですごい喧嘩して、
別れたことあるものっ。
ノリスケ すっ、すごい極端……。
歩み寄ればいいのに……。
ああ、うちの人は料理下手でよかった。
なに食べても「おいしいね」だもーん。
つねさん ふん。「ごちそうさま」って
言って欲しいんでしょう。けっ。
(このテーマはこれでおしまい。
 また近々!)

2001-10-04-THU
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