京都
「知りあいの宿」を
つくろう。
夏休み、京都は案外空いている。




京都は山に囲まれた内陸の盆地ですから
海からの涼しい風が入らず、
全国的に見ても、ひかえめに言っても、暑いです。
(今年は全国的に雨が多いせいで、
 京都でもおだやかな暑さのお盆を迎えているようですが)
でも、その「暑さ」の元凶となっている山々が
京都の景色の特長になっているんですよ。
景観を保つため、建物が低めにつくられているので、
町なかにいても、
北西東のどこかの方角に、
こんもりとした山の緑と空が見えます。
市内を流れる大小の川も、いい風情。
とはいえ、盆地は盆地。
「京都で避暑」は、できるのでしょうか。
お盆まっさかりですが、
「ほぼ日」を通じて、
京都の「旅館 銀閣」へ泊まりに行く方が、
毎日のようにいらっしゃいます。
みなさんに、京都の夏の風情をたのしんでいただくためにも、
「京都で涼むこと」について、
サカベさんに伺ってみましょう。

京都で涼みたい、と?
無理やろう、と?
いやぁ、よう訊いてくれはりました。
夏の京都といえば、川!
ほんまに、川がきれいなんですよ。
── 京都の川といえば、
鴨川(かもがわ)、桂川(かつらがわ)、
高瀬川(たかせがわ)などがありますね。
サカベさんのおすすめは、どこですか?
どの川もいろんな特長があっていいのですが、
涼しくなりたい方には、
貴船川(きふねがわ)が、おすすめです。
貴船神社という
ええ感じの神社があるとこです。
── 貴船というと、京都の中心からすこし離れた、
鞍馬(くらま)のあたりですね。
鞍馬へは、出町柳(でまちやなぎ)というところから、
小さな電車に乗って行くんですよね。
ええ。叡山電鉄(えいざんでんてつ)ですね。
終点が鞍馬で、ひとつ手前が
貴船口という駅になっています。
(貴船口から貴船神社までは
 歩いて30分くらいかかります)
先に終点の鞍馬まで電車で行ってもらって、
ちょっと距離と起伏はありますが、
鞍馬から貴船まで歩くのも、いいですよ。
鞍馬寺の奥の院をゆっくり見てもらいながら‥‥。
あのあたりは、景色もすごくいいです。
東京へ帰らはってから、ぜひ
「鞍馬の山へ登ったえ」と、自慢してください。
── 登ったえ!と。
鞍馬寺って、たしか、
源義経(みなもとのよしつね)が
小さいときに修業したお寺ですよね?
弁慶とはじめて出会った橋も、京都にありますね。
ええ。五条大橋ね。
橋の手前には、牛若丸(義経の幼名です)と
弁慶の小さな像があります。
── 鞍馬・貴船のあたりは、とにかく静かでいいですね。
古き京都を「残そうと思って残している」のではなく、
人びとが、古い町でそのままに、
豊かに暮らしている、というかんじがします。
ほんまに、そうですね。
貴船神社は、石段の参道に
赤い燈篭がずらーっと立っていて、
雰囲気がすごくいいんですよ。
夕方から8時くらいまでは、
この燈篭に明かりが灯ります。
ここには、京都の水をつかさどる神様が
祀られているんです。
── 貴船川は、鴨川の上流にあたる川ですね。
まさに、都の水の源流。
この神社でぜひ試していただきたいのがねぇ、
おみくじの占いなんです。
こよりのようなおみくじの紙を引いて、
貴船川のきれいな清水に浮かべると、
恋や願望について占った言葉が
パーッと出てくるんです。
── 水に浸けると文字が浮かんでくるんですか?
わあ、やりたいやりたい!
それは、カップルでも女の子同士でも、
たのしそうですね!
そうでしょ?
私も、行くたんびにやってしまいます。
ロマンチックですよ。
── そのロマンティックな心境のまま、
お食事も、うっとりとした気分で
いきたいところですね。
ふふふ。ええとこがありますよ。
貴船には、ええ川床(かわどこ)があるんですよ!
川ギリギリまで、
もう、足がつかるかもしれん、というくらいまで
床がせり出しているお料理屋さんがあるんです。
手をのばせば川にさわれます。
もう、寒いくらい!!
── いくらなんでも寒くはないでしょう!
でも、たしかに、
あのあたりは静かですから、
すごく涼めそうですね。
ええ。その、川床のあるお料理屋さんは、
1万〜1万5千円くらいがめやすです。
すこし高めなんですけど、
ちょこっとずつお小遣いためて、
ぜひぜひいらしていただきたいですね。
もちろん、ほかにお手軽なお店もありますよ。
とろろそばのお店なんか、
そぼくで、おすすめです。
── ほかに、川と言えば、
木屋町(きやまち)もいいですね。
木屋町は、高瀬川ですね。
先斗町(ぽんとちょう)から近いので、
夜のお散歩におすすめです。
ぶらぶらと歩くの、楽しいですよねぇ
── ほろ酔いで歩くの、いいですね。
町の中心部だから、
地下鉄もあるし、タクシーも走っているし。
あとはねぇ、桂川の上流にあたる
保津川(ほづがわ)という、
野趣あふれる川があるんですけれども、
この保津川では、川下りができるんですよ。
保津川下りをするには、
JR山陰線かトロッコ列車で
亀岡まで行きます。
川の水量によって下るスピードが違うんですが、
船頭さんが竿で岩を突きながら
急流を下りていくのは、おもしろいですよ。
ただし、保津川を下るのには、
だいたい2時間くらいかかります。
かなり暑いと思いますので、
日よけの帽子などをお持ちくださいね。
船は、渡月橋(とげつきょう)で有名な
嵐山(あらしやま)に到着します。
── 嵐山の川原で、ゆっくりするのもいいですね。
渡月橋は、サスペンスドラマにも
よく登場しますよね。
そうですね!
あのへんで、たいがい刑事さんが
車から降りて妙に走ったり、
おみやげもん屋さんで
聞き込みをしたりするシーンがありますね。
── そういえば、嵐山には
みやげもののお店はたくさんありますが、
お食事処に困ってしまうかんじがするかな
そうですねぇ。
嵯峨野まで行ったら、お豆腐のおいしいとこも
あるんやけど・・・。
あ! 嵐山には、亀山屋さんという
おいしいどんぶり屋さんがありますよ。
ここの天とじ丼、たまごがぷるぷるで、
すごく、おいし!
── ほんとうですか!
食べごたえがありますよ。
お昼ごはんに、ぜひ。
川以外の見どころとしては、
庭園やだるまの絵で有名な
天龍寺(てんりゅうじ)もあります。


天龍寺の曹源池の回遊式庭園です。
── だるまの絵はCMにもなっていましたね。
あのだるまさんは愛嬌があって、いいですよね。
平成9年に描かれた、加山又造氏作の
モダンな龍の天井絵も見ものです。
あとね、嵐山は、
夜に鵜飼い(うかい)があるんですよ。
── え! そうなんですか!!!
ぜんぜん知らなかったです。
9月中旬くらいまでやっていると思います。
かがり火をたいた鵜飼いのようすを、
川の端から見れますよ。
── 本格的に観たければ、
自分で鵜飼い見学の予約を入れることも
可能なんですよね
その場合は有料で、1,700円ですね。
19時と20時に船が出ます。
10分前に川沿いの船乗り場に並んでいただければ、
予約しなくても乗れますよ。
── 嵐山の鵜飼いかぁ。
京都の、真っ黒になった山と川に
炎があうんですよね。
さて、明日16日、
京都では、いよいよ大文字が行なわれます。
「ほぼ日」でも画像の中継をしますよ。
明日の夜は、こちらのページでも
京都の夏をあじわってくださいね。



京都まめまめ知識

【床(ゆか)、川床(かわどこ)】
川に張りだした、料亭のお座敷のこと。
屋根がついていないのがふつうで、
まれに、屋寝つきの小舟のようなデザインの
床もあります。
蒸し暑い京都を、足もとから
ちょっとでも涼しくしようという、
古くから伝わる知恵なのだそうです。
京都でもっともたくさん床が出ているのは、
鴨川の、三条通と四条通に挟まれた地区。
鴨川に床を出す料亭の入口は、
ほとんどが先斗町ぞいにあります。
夕飯どきに行くなら、ぜひ予約を。

2003-08-15-FRI

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