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京都のお月さん、
十五夜は、雲がかかってました。
東京は、いかがでしたか? |
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きれいでした。
夜空に雲がスーっとのびて、
もう、秋ですねぇ。 |
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ほんま、そうですね。
ところで、今日は秋らしく、
神社のお話をしたいんです。
しかも「ご利益がある」という噂の! |
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う〜、願いごとがたくさんある身としては、
ぜひうかがいたいです。 |
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ほな、「京のご利益、あっちこっちひとめぐり」
と題して、行きましょ。
まずは、縁切りから!
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── |
え、縁切りからですか。 |
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そうです。願いごとをする前に、
いやな縁は切っておかなあきまへん。
「別れられへん」「やめられへん」「なおらへん」
など、ないですか?
そんなときは、縁切りで有名な
安井神社(安井金毘羅宮・やすいこんぴらきゅう)
に行ってみてください。
境内に「縁切りの碑」があって、
そこをくぐると悪縁を切ることができる、
といわれているんです。
碑には縁切りのお札がぎょうさん貼ってあって、
もう、碑そのものが見えないくらいなんです。
来られた方々の、「縁切りたい!」という念が
渦巻いているようですよ。
ほんますごいです。 |
── |
個人的には、縁切りというよりも、
自分の性格のいやなところとか、
弱いところにサヨナラしたいです‥‥。 |
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おお、そんなんでも、いいと思いますよ。
しかし、強い願いでもって、くぐるのが肝要です。
なにしろ迫力がある碑ですから、
「切りたい!切りたい!」思ていかんと! |
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心の芯から思っていないと、
いけないのですね。 |
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気を強く持っていきましょう!
ここで、みごと縁を切ったら、南に下って
商売の神様へ直行します。
全国にある「おいなりさん」の総本宮、
伏見稲荷(伏見稲荷大社・ふしみいなりたいしゃ)
です。 |
── |
あ、以前CMにも出ていた、
鳥居で有名なところですね。 |
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はい。まず、神社に大きいきつねの像があって、
これがとりあえず、すごい迫力です。
そして、本殿の奥に、かの有名な
「千本鳥居」があります。 |
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トンネルみたいに、
鳥居がいーっぱい、並んでるんですよね。 |
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その鳥居の道は、お山の上まで続いているんですが、
途中からちょっと、なんというか、
だんだんと「雰囲気」が出てきましてね。
正直言いまして、こわいかんじです。
勇気ある人は、行ってください。 |
── |
そうなんですか。
赤い鳥居が無数に並んでいて、
きれいだと思いますが。
でも、奥に進むにつれ、人もいなくなるだろうし、
山のなかだから、暗くもなるだろうし‥‥。
しかし、商売を志すもの、そこは
根性入れて前進あるのみ、ですね! |
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それこそが、商売の道というもの
なんでしょうかね!
ところで、その伏見稲荷なんですが、
おみやげもんで、
みそせんべいというのがあるんです。
きつねの顔をかたどったおせんべいで、
みそ味で、安くておいしい!
おすすめですよ。 |
── |
そのおせんべいを食べるだけでも
商売のご利益がありそうですね。 |
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‥‥あんねぇ、ちょっと話がそれますけども、
よろしいでしょうか。 |
── |
はい、はい。 |
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うちのおばあちゃん、
「ちぃばあちゃん」というんですけどね、
ミヤコ蝶々そっくりなんですけどね、
そのおせんべい、大好きだったんですよ。
病院で、ものも食べられへん、
点滴すら受けつけへん体になって、
「こらもう、あかんわ〜〜」てなったときにね、
なんと、このみそせんべいを、こなごなに砕いて
ちぃばあちゃんの口にガーッと、
入れてみたんですよ。 |
── |
むちゃくちゃしますね。 |
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そしたら、生き返った。 |
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‥‥‥!! |
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そのくらい、ご利益あるんですよ。 |
── |
ええーっと、それはきっと、
「昔、みそせんべいが好きだった」というご記憶が
よみがえった、ということなんでしょうね。 |
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そうなんですよね、ええ話でしょ。
ええ話を思い出しつつ、
ここらへんでちょっとお昼に行きましょか。
伏見稲荷の駅前で、
スズメの焼き鳥をバリバリいくか‥‥、
あとは、伏見稲荷駅から京阪に乗ってふたつめの
東福寺で降りれば、
そば懐石(3,500円・要予約)のおいしい
「澤正(さわしょう)」があります。
ここは、たたずまいがよくて、
落ち着きたい方に、おすすめですね。
行動派の方は、
京家食品のコロッケがいいですよ!
揚げたてのサクッサクで、ひとつ45円!
串カツも食べて、縁起をかつぎましょ! |
── |
何と言ったって、
食べものは、力が出ますからね。
運をひきよせられる気がしてきた! |
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そして、ニシダやで、
しば漬けをおみやげに買いましょう。
ミョウガがたくさん入っていて、
ばっつぐんに、おいしいです。 |
── |
ひ〜よだれが! |
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さ、食べものの話はそのくらいにして。
つづいてお参りしていきましょう。
東福寺から東に進むとある、
美人になれると名高いお寺、
泉涌寺(せんにゅうじ)。
ここには楊貴妃観音の像があるんです。
東山の山なかにあって、
ほんまにきれいな、
由緒正しいお寺なんですよ。 |
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世紀の美女にあやかって、
美しくなりたいですね。 |
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ここでは、絵馬の奉納をして、
美人祈願のお守りを
買って帰りましょう。 |
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わー、絵馬ですか。
美人のお守りはおみやげにもいい! |
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さあ、ここからが本番ですよ。
美を磨いたら芸を磨け、ということで、
ちょっと遠くへ足を伸ばします。
反対側の京の西、
車折神社(くるまざきじんじゃ)に
行ってみましょう。 |
── |
車折‥‥嵐山の手前ですね。
路面を走る京福電車に
ゴトゴト揺られて行きましょう。 |
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車折神社は、芸能の神様でね、
女優さんや歌手の方がよく
おまいりしていらっしゃいます。
習い事とかしたはるんやったら、
ぜひ、行ってみてください。
ここも、なんとも言えん、
例の、「雰囲気」がありますよぉぉ。
日が暮れんうちに、昼間のうちに、
到着してくださいねぇぇ。 |
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願いごとをかなえてくださる神様に会うぶん、
負けないくらいの気合いと意思表示が大切、
ということですね。 |
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そういうこと。
それこそが芸の道
というものなんですかね! |
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さあこれで、いやな縁を切った、
仕事と美と芸を手に入れた。
これで明日からの毎日、大丈夫、
‥‥でしょうか。
ちょっとまだ迷いがあるような気がします。 |
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そうですか。
ほな、ここで、
サカベのとっておき情報を。 |
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待ってました。 |
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内緒の場所なんですけどね、教えます。
それは、たぬき大明神といいます。
先斗町に、おばんざい屋さんの
「ますだ」というお店がありまして、
そこのおかみさんが
亡くならはったんですけどね。 |
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みそせんべいで生き返った、のではなく。 |
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のではなく。
「ますだ」には、そのおかみさんに会いに、
商売で悩む人や、会社の社長さんが、
夜な夜な集っていました。
そんでね、そのおかみさん、
いっつも社長さんたちに、怒ったはったんですよ。
「あんたはん、顔色悪いな。
あんな、ものごとというのはな、
桃栗三年、柿八年言うやろ」
とかね。 |
── |
はあ。 |
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その怒ってるセリフをね、
生前に、
何パターンか録音したはったんですわ。 |
── |
ええ?! |
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さて、たぬき大明神に行って、
10円をチャリーンと入れると、
「ポックポックポック‥‥
あんな、ものごとというのはな」
と、おかみさんの声が流れてくる。 |
── |
そ、それはすごい。 |
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おかみさんを偲びつつ、
その足で「ますだ」でお食事して、
ご利益めぐりの1日は終わりです。
カウンターの大鉢に盛られた
京のおばんざいをつまんで、
日本酒をちびちびいただきましょう。 |
── |
あああ、シメはやはり、
おかみさんにお尻を叩かれて、
「しっかりしていかなあかんな」と。
秋の京都、奥深い旅ができそうです。
みなさんも、京都で願掛け、
いかがでしょうか。
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