ポケットに『MOTHER』。 〜『MOTHER1+2』プレイ日記〜 |
楽しみにしているものが発売される日というのは どんなジャンルにせよ胸躍るものではあるけれど、 ゲームのそれは少し特殊である。 まず、これはとても大切なことだが、 売り切れてしまうという可能性がある。 ほかの分野のものも多少はそういう性質を持つが、 ゲームは飛び抜けて、売り切れてしまう可能性を持つ。 ばっと売れて、どかんとはけて、しゅっとなくなってしまう。 気を抜いていると「次回の入荷予定は未定です」という 手書きのポップが売場の棚に並ぶことになる。 なんとも切ない話である。 つまり、楽しみにしているゲームが発売されるとき、 僕はわくわくすると同時にびくびくせねばならない。 ゲームが発売されるうえで生じる特殊さがもうひとつ。 そのソフトの発売日がくると、 僕の頭には全国で大勢の人が 熱心にそれをプレイしている様子がイメージされる。 要するに、よういどん、という印象がある。 べつに何を競っているわけでもないのだけれど、 なんだかみんなでそれを始めている予感があって、 大きなにぎわいを好む僕としては どうしてもそこに速やかに加わりたくなってしまう。 つまり、楽しみにしているゲームが発売されるとき 僕はわくわくすると同時にうずうずせねばならない。 そういったことを考慮すると導かれる答えはひとつである。 そう、僕は発売日に確実にソフトを入手せねばならない。 くどくど書いたわりにばかみたいな答えで申し訳ない。 となれば、もっとも合理的な選択は そのソフトを予約することである。 どこか適当なゲームショップの なんともチャチい予約受付用紙に、 ボールペンで名前と電話番号を書くだけで 発売日当日の「びくびく」は解消される。 ならばさっさとやっちまえばいいのだが 非常に残念なことに予約は僕のポリシーに反する。 我ながら自分のポリシーを忌々しく思う。 やっぱ予約しとくかと 楽しみにしているゲームの発売日が近づくたび、 ひとりで地味に悩んだりするのだが けっきょく今回もまた僕は無策のまま6月20日を迎えた。 仕事を終えたあとで 大手ゲームショップのエスカレーターを上る僕は わくわくびくびくしている。 わくわくうずうずしている。 ゲーム売場のあるフロアーへ踏み入れる。 すると、目の前に、 『MOTHER1+2』のパッケージが 目立つ位置にディスプレイされていた。 おおっ! と思うと同時に、僕はある種の焦りを感ずる。 というのは、そのディスプレイが、スカスカなのである。 具体的にいうと、その大きな台の上に、 ソフトが3本しかないないではないか。 つまり、あと3本で売り切れであるらしい。 ひったくるように1本、手に取ると、 その手応えは非常に希薄である。 要するに、とても、軽い。 僕の深い洞察によれば、どうやらこれは空箱である。 中にソフトが入っていない、空のパッケージである。 ここにおいて僕はやや迷う。 「この空箱をレジに持っていくと 奥からホンモノのソフトを取り出してくれるのか?」 それとも、 「この空箱をレジに持っていくと 『お客様、こちらは見本の空箱でございます』などと あっさり言われて恥をかくのか?」 強く短く考えたのちに僕は前者だと判断した。 それで、その軽いパッケージを持ってレジへ並んだ。 レジのお姉さんは「5040円になります」と言った。 ホンモノのソフトは奥の棚から出てきた。 ラスト3コだった『MOTHER1+2』を 手に入れて、僕は上機嫌で店を出た。 やっほう。 |
2003-06-21-SAT
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