アジオ&アジコ |
博士こんにちは。 |
博士 |
はい、こんにちは。
ふたりとも今日はなんの用だい? |
アジオ |
やだなあ。
今週も味写を見に来たに
決まってるじゃないですか!
プンプン。 |
アジコ |
ホント!
一度子供をその気にさせといて、
そんな態度ズルイと思います! |
博士 |
なんだい‥‥
ずいぶん突っかかるじゃないか。 |
アジオ |
ただ博士もしょせん
体制側の人間かってことですよ。 |
アジコ |
いくらその場では盛り上がっても、
次に会ったときにはもう忘れてる。
一度組織に戻ったら
大人ってすぐリセットされちゃうのよ。 |
アジオ |
こっちはその気で先を進めてるのに
やれ会社の都合だ、
上司の機嫌がとか言っちゃってさ。
じゃあ、あのときの約束は
なんだったんだって話だよ。 |
アジコ |
個人が責任を持たない社会に将来なんてある?
だから日本はいまだアメリカに‥‥ |
博士 |
‥‥いや、ホント何があったの?
日曜の朝からそんなにまくし立てられても‥‥ |
アジオ |
来たくて来てるんじゃないんだよ!
こんなところ。 |
博士 |
こ、こんなところ‥‥ |
アジオ |
ホントなら今頃
ディズニーランドだったのに!
え〜ん! |
アジコ |
私だって鬼怒川温泉だったのに!
え〜ん! |
博士 |
なあんだ、そういうことか。
まあパパたちにもいろいろ
都合ってものがあるからね。 |
アジオ |
え〜ん!
息子への愛情が都合に負けた〜! |
アジコ |
え〜ン!
娘との想い出が接待に負けた〜! |
博士 |
え〜い泣き止まんかい! じゃりんこ共!
親に約束破られたくらいで号泣とは笑止な!
理不尽な境遇にあってこそ
人はそこから真の活路を見いだすのじゃ!
そう、アントニオ猪木が力道山の付き人時代に
その仕打ちから現在の闘魂スタイルを
作り上げたようにな! |
アジオ |
え! アントニオ猪木が!? |
博士 |
左様。
猪木が師匠、力道山から受けたスパルタ教育は
それは厳しいものじゃった。
しかしを猪木を本当の意味で苦しめたのは
むしろ師匠がとった
ジャイアント馬場に対する態度だったのじゃ。
読売巨人軍の投手から
プロレスに転向してきた馬場はいわばエリート、
一方猪木はブラジル帰りのいち青年。
ふたりに対する力道山の態度は
お世辞にも平等とはいえなかった。
そこには明らかな差別があったのじゃ。
だが猪木はそこから不屈の闘志で
這い上がって来た。
いま思えばそんな修行時代があったからこそ、
猪木は燃える闘魂を勝ち得たのじゃ!
親に遊んでもらえないことくらいがなんじゃ!
日曜の楽しみくらい自分の力で見つけんかい!
少なくとも猪木ならそういうだろうな。 |
アジオ |
ガ〜ン! ボクが甘かったよ、博士!
猪木に笑われちゃうな。
親子でディズニーランドなんて
平凡もいいとこだい! |
アジコ |
私こそ恥ずかしいわ!
自分で見つけてみせる。
日帰り温泉なんかより楽しいこと! |
博士 |
うん、その意気だ。
よし。じゃあ今日はそんな諸君に
エールの意味を込めて
私のコレクションの中でも
とっておきの味写作品をご披露しようかな?! |
アジオ |
待ってました! 博士! |
アジコ |
1、2、3、ダー!!
|
アジオ |
‥‥紛れもない傑作ですね、博士。 |
アジコ |
ええ。
作品全体に味が染み渡って、
逆にどこから指摘すればいいのか
不安になるほど‥‥ |
博士 |
慌てることはない。
落ち着いてひとつひとつ味わっていこうか。 |
アジオ |
ホラ、見てごらん。
この赤ちゃんの安らかな寝顔を‥‥ |
アジコ |
それに比べておじいさんのこの表情。
明らかに憔悴してるわよね。 |
博士 |
ひょっとすると孫じゃないのかもしれないね。
この赤ちゃん。 |
アジオ |
実はボクもそう思ったんだ。
だっておじいさんの表情が深刻すぎるんだもの。
途方に暮れているといってもいい。 |
アジコ |
そうね。
自分から可愛い孫を抱いてるという
雰囲気じゃないわね。
むしろなんらかの事件に巻き込まれた結果が
こうなんだって感じよね。 |
博士 |
うん、確かに取り返しのつかない事態に
直面している表情だね。
手近にパイプ椅子があったことだけが
唯一の救いでした‥‥みたいな。 |
アジオ |
ここはいったん腰を下ろして冷静に‥‥
そう自分に言い聞かせているみたい。 |
アジコ |
どこかで歯車が狂ったんでしょうね。
その原因を探るため、懸命に記憶の糸を
たぐり寄せてる最中じゃないかしら。 |
博士 |
ゴム長を履いてパイプ椅子に腰掛け、
見ず知らずの赤ん坊を抱いている自分に
いまだ整理がつかない作業着の老人。
しかも後ろでは平屋の新築工事が
急ピッチで進行中‥‥
第一印象から受ける静寂とは裏腹に、
ここでは私たちの理解を超えた
混沌のドラマが繰り広げられていたんだね。 |
アジオ |
それにしても多過ぎやしませんか?
屋根の上の大工さんたちが。 |
アジコ |
いくらなんでもあんなに大勢いらないわ。
屋根板の取り付けくらい
2、3人で充分だと思うけど。 |
アジオ |
真ん中に集まってる人たちはともかく、
端っこに座ってるふたりには
今すぐ降りて欲しいよね。 |
アジコ |
全くよ!
赤ちゃんのお守はたったひとりだというのに。 |
アジオ |
なぜ誰も助け船を出そうとしないのかな?
おじいさんひとりで
あんなに困ってるというのに! |
博士 |
深い事情を考えずにはいられないね。
しかしあまり深入りするのは危険だよ。
事実、私なんかこの味写作品を研究中に
重いノイローゼを煩ってね、
半年ほどまともな社会生活が
送れなかったほどなんだ。 |
アジオ |
ノイローゼ! |
アジコ |
この味写で! |
博士 |
いま思えば新しく開かれた可能性に
気負いすぎてたというべきか‥‥
この作品に少しでも近づきたかったんだろうね。
赤ちゃん代わりにお中元のハムを抱いて
毎晩神社の境内で
受け身の練習をしていたみたいなんだ。
全く記憶にないけどね。 |
アジオ |
恐い‥‥ |
アジコ |
結局答えは見つかったんですか? |
博士 |
諦めた。いや諦められたというべきか‥‥
片思いでいいと思ったんだ、
この作品に対してはね。
成就する愛より叶わぬ恋が
逆に人を豊かにさせる場合もあるからね‥‥ |
アジコ |
深いなあ‥‥味写って。 |
アジオ |
もうこれ以上の詮索は止めにしましょう。
事態はいずれ好転するわ。 |
博士 |
この赤ちゃんがいる限りね。
さあ諸君、今日の味写はいかがだったかな? |
アジオ |
面白かった!
千葉の大型テーマパークよりも。 |
アジコ |
温まったわ。鬼怒川の天然温泉よりも。 |
博士 |
来週からはいよいよ
読者のみなさんから送られた
味写作品を発表するよ。
全国から寄せられた珍味を思う存分
味わっていこうじゃないか! |
アジオ&アジコ |
やったあ〜!!
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