数年来、展開してきた「対称性人類学」をもとに、 中沢先生があらたに提唱した「芸術人類学」。 現代世界における「芸術」のさまざまな可能性を、 人間のこころの諸活動を探る人類学にむすびつけ、 まったくあたらしいサイエンスが誕生させた。 また、書き下ろしの小冊子『夜の知恵』は 多摩美術大学『芸術人類学研究所』の 開所式で配られた非売品。 他では手に入れることのできない、貴重な一冊です。
『芸術人類学』担当編集者より
担当編集者 石神純子さん(みすず書房)
人類に発生した「心」の起源に迫る、 野生のサイエンス。 人文諸学の再構築を目的とした、 芸術と人類学の創造的な融合。
シリーズ『カイエ・ソバージュ』全5巻や 『アースダイバー』(いずれも講談社)で到達したのは 「対称性の知性」という考え方でした。 これをさらに発展させ、 レヴィ=ストロースの構造人類学と ジョルジュ・バタイユの非知の思想を 横断的につないでゆく、未曾有の試みがはじまります。
構造人類学の限界は、 言語学を方法論に据えたところにありました。 しかし、現生人類の本質をなす 「流動する心」や「無意識」を含めた 心の働きを探るには、 もろもろの思考の力が寄り集まる 純粋な萃(すい)点である芸術をこそ、 この対称性人類学の実践的方法とすべきなのです。
先史時代に花開いた洞窟壁画から 縄文土器に表現された造形的思考へ、 山の宗教で顕わにされた自然智から 西田幾多郎・田邊元が大成したヤポネシアの哲学まで。 華厳経とマトリックス的思考、数学と精神分析、 友愛と自由に満ちた歴史学の構想など、 来るべき野生のサイエンスの全体像が ここに提示されます。
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