糸井 |
ぼくは、けっこう前から
荒井さんの絵を知っていたんですが、
あの、勝手に、もっと、
おっさんが描いてると思ってたんです。
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荒井 |
おっさんですよ(笑)。
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糸井 |
いや、あの、もっと、
おじいさんに近い人だと思ってたんです。
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荒井 |
あー(笑)。
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糸井 |
勝手に、おじいさんがこういう絵を描いてると。
で、このじいさんは、じいさんのくせに、
なんだか妙にパワーがあるなあ、
体力のあるじいさんだなぁ、と思ってた。
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一同 |
(笑)
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荒井 |
おじいさんって言われたのは、
じつは、はじめてじゃないんですよ。
ときどき、
「おじいさんかと思ってました」
っていう人がいらっしゃいます。
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糸井 |
あ、そうですか。
それ、わかるわ(笑)。
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荒井 |
あの、ぼくも、
糸井さんをずっと前から知ってて、
いちばん最初は、大学1年のときです。
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糸井 |
それは、ずいぶん前だ。
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荒井 |
1975年ごろかな、
絵本つくろうって思ったんですよ。
でもそのとき、絵本のことを
なんにも知らなかったんです。
それで、まず外国の絵本を読んで、
どういうものがあるかを、
いろいろ知ろうと思った。
そのあと、日本の絵本も読んでいったんですが、
そこで長(新太)さんの絵本と出会って。
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糸井 |
長さんね、いいですよね。
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荒井 |
はい。で、もうひとつ、
すごく影響を受けたのが、
糸井さんと湯村(輝彦)さんの
『さよならペンギン』だったですよ。
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糸井 |
えっ。
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荒井 |
あれは、ぶっ飛びましたね。
で、すごく欲しかったんだけど、
これ、家に持って帰って読んだら、
たぶん、打ちのめされて
自分の絵本がつくれなくなると思ったから
買わずに本屋に置いとこうと決めたんです。
それくらい、ぶっ飛んだ。
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糸井 |
へーーー。ああ、そうですか。
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荒井 |
『さよならペンギン』を買って
毎日見てたら、たぶん、
「つくんないほうがいい」っていうふうに、
なるに決まってるから、知らんぷりして。
読みたくなったら本屋に行って。
もちろん、お金がないっていうことも
理由のひとつとしてはあるんです。
当時、洋書の絵本なんて3000円くらいして、
1975年の金銭感覚からいうと、
そうとう高いものでしたから。
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糸井 |
そうですよね。
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荒井 |
だから、本屋さんを
ちょっと離れた自分の本棚みたいにして、
何度も通っては、脳裏に焼き付けて帰ってた。
好きな絵本はみんなそうですよ。
『さよならペンギン』も、そう。
だから、ぼくにとっての糸井さんって、
最初は『さよならペンギン』なんです。
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糸井 |
そうですか。
いや、ちょっと驚きました(笑)。
あの、ありがたいことに、いろんな方が、
昔、ぼくが湯村さんとやった
『ペンギンごはん』というマンガのことを
ほめてくださるんですね。
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荒井 |
はいはい、『ペンギンごはん』。
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糸井 |
あれを、よく言ってくださって
それは、とってもうれしいんですけど、
絵本の『さよならペンギン』のほうは
意外にみんな知らないんですよ。
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荒井 |
あ、そうなんですか。
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糸井 |
当時、もちろんぼくも、
絵本のことはそんなに深く知らなくて。
いってみれば、ずいぶん、
向こう見ずな仕事だったんです。
どんな仕事でもそうだと思いますけど、
はじめて取り組むようなことは、
じっくり考えて、研究してから、
出したいんです、ほんとは。
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荒井 |
うん、うん。
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糸井 |
だけど、そんなに恵まれた環境で
取り組めることって、ほとんどなくて、
いつもなんか追い詰められて、
「できるでしょ?」って言われて
「はい」って言っちゃうもんだから、
苦肉の策を考えることになる。
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荒井 |
はいはい(笑)。
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糸井 |
いわば、それの第1号が
『さよならペンギン』なんです。
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荒井 |
あーー、そうですか。
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糸井 |
そうなんですよ。
いや、でも、うれしいなぁ、
『さよならペンギン』のことを
知ってくれる人がいて。
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荒井 |
当時は、びっくりしましたよ。
「日本にもこういう絵本を
つくる人がいるんだ!」って。
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糸井 |
あの本って、絵は湯村さんで
ぼくは原作の文字の部分だけですから、
ちょっと他人事みたいに言えるんですけど、
その‥‥すばらしいですよね。
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荒井 |
すばらしいです。 |
一同 |
(笑)
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糸井 |
ははははは。
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荒井 |
いや、ほんと、すばらしい。
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糸井 |
すばらしいんです(笑)。
(つづきます) |