第5回 その世界のなんかにタッチしたい。

糸井 学生のころは荒井さんも
それなりにとんがってたわけでしょう?
荒井 とんがっていた‥‥そうですね、
ぼくも、周りも、みんな、
やっぱりとんがってましたよね。
糸井 ぶつかったら、どっちが先に謝るかみたいな。
荒井 そういう世界でしたね(笑)。
糸井 苦手でもそこにいざるをえないですよね。
荒井 そうなんです。
糸井 仲間は、日芸の人たちですか。
荒井 いや、ほとんど大学行ってないです。
5年かけてなんとか卒業しましたけど。
糸井 あ、そうなんですか。
卒業したあとは、どうなるんですか。
荒井 いや、とにかく働きたいなぁと、
漠然と思ってたんですけど。
働ければ、なんでもいいと思ってた。
で、ガロに電話をしたこともあるんです。
糸井 おおー(笑)。
ってことは伸坊、
いや、ナベゾ(渡辺和博)の時代かな。
荒井 渡辺さんのときかもしれません。
糸井 ガロだったら
働けるかなぁと思ったわけですね。
鈴木翁二さんとか見てたわけですか。
荒井 見てました、見てました。
糸井 あとは誰が好きでした。
荒井 高校時代から、永島慎二さんが好きでしたね。
糸井 おー、喫茶店ポエム
(永島慎二さんのマンガに
 登場する実在の喫茶店)。
荒井 そうです。
上京したとき、すぐ阿佐ヶ谷行って、
ポエムを見に行ったんです。
「あ、ここだ」って(笑)。
糸井 いいですねぇ(笑)。
荒井 それで、ポエムに入って待ってたんですけど、
永島さんは、ぜんぜん来ない。
当たり前なんですけどね(笑)。
でも、何回か行って待ってましたね。
来るんじゃないかと思って。
会ってどうなるわけじゃないんですけど、
すごく憧れてて。
糸井 わかる、わかる。
なんだろう、その世界の
なんかにタッチしたいんですよね。
荒井 そうそうそう。
糸井 ぼくは、阿佐ヶ谷で
赤瀬川原平さんの家を探しましたもん。
荒井 あ、そうですか。
糸井 「赤瀬川原平」っていう表札が
ないものかと思って
ぐるぐる、ぐるぐる歩き回りましたけど、
まぁ、ないですよね。
荒井 (笑)
糸井 そうか、永島慎二さんかぁ。
じゃあ、荷物を棒にくっつけて‥‥。
荒井 そう、旅人くんとかね。
みんな好きでしたね、
永島慎二さんの絵は。
糸井 その後、永島さんには会えたんですか?
荒井 ずっとあとになって、ある画廊で、
一度だけ、いっしょになったんですが、
ただただ硬直して(笑)、
お辞儀しただけで終わりました。
糸井 そういうもんですよね(笑)。


(つづきます)


30歳になってから知り合った大事な友人に、
いつもありがとうの気持ちを込めて、
この本を明日プレゼントします。
(r4)

荒井良二さんの絵がとても良いです。
ふわっとした絵なのに、
なんだかすごい密度ですね。
紙の手触りなどのせいか、
ウェブ上で見たときの感じとは
また別の風合いを感じます。
色合いも美しいですし、
何よりも見ているだけで、
幸せな気分になるのが良いですね。
折られているどの面にも、
ブイちゃんらしき犬の絵が
描かれていて愉しいです。
(竹中)

一度に読むのがもったいない。
大事に行きつ戻りつ読みます。
(スミレ)



2010-06-17-THU