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糸井 |
あなたは、話のなかで、
「たまたま竹馬だけができた」
というふうにおっしゃってましたが、
じつは、パフォーマーとしての基礎的な腕前が
そうとう高いんでしょう? |
ジル |
いちおう、竹馬のほかに、綱渡りができます。
あと、火吹きもできます。 |
糸井 |
ああ、やっぱり。
そういう基本的な実力がないと、
お客さんの前に出られませんものね。
ということは、そうとう努力されたんですね。 |
ジル |
努力?
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糸井 |
うん。だって、
それだけできるようになるためには、
たくさんのエクササイズがいるでしょう? |
ジル |
‥‥いいえ、自然にできました。 |
糸井 |
あ、そう(笑)。 |
ジル |
もともと私はバランス感覚がいいんです。
だから、最初から、怖くなかったんです。
怖くなければ、それはもうできるということです。 |
糸井 |
「怖くなければ、できる」。
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ジル |
そうです。簡単なことです。
もしも怖くなければ、
竹馬で100キロだって歩けます。 |
糸井 |
そうですか‥‥怖くなければ? |
ジル |
そうです、怖くなければ。 |
糸井 |
‥‥あなたは、決めたんですね。
怖くないって決めたから、できたんだ。 |
ジル |
そこに心を向けると道が開けてきます。
道が開けるとそこに行きます。
そして怖くなくなるんです。 |
糸井 |
いまも、同じ方法で、
いろんなことを乗り切っているのですか? |
ジル |
そのとおりです。
たとえば私たちの最新のショーである
『ラブ』では、ビートルズの音楽を、
音源から編集して使わせてもらいました。
たいへん大きなプロジェクトです。
これは、私にとって、
大きな竹馬に乗っているのと同じです。
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糸井 |
おもしろい(笑)。
それはいいなぁ、うん。 |
ジル |
まさに、とっても大きな竹馬ですよ。
だって、ポール・マッカートニーにどう説明して、
どうわかってもらえばいいんでしょう?
ヨーコ・オノにどう話せばいいんでしょう? |
糸井 |
怖がったら終わりですね。 |
ジル |
そうです。
すばらしいショーをつくりあげるためには、
すばらしいショーになるんだということを
本当に信じなければいけません。
信じていない人には誰も説得されません。
そして、信じると、怖くなくなります。
それは、竹馬に乗るのも、綱渡りするのも同じです。
本当にできると思うと、できるんです。 |
糸井 |
それは、
シルク・ドゥ・ソレイユの精神そのものだね。 |
ジル |
イエス、イエス。
‥‥でも、正直に告白すると、
ベ・サン・ポールから竹馬に乗って
ケベック市まで歩いたときは、
それが約3800名の従業員を抱えて
15のショーを運営するカンパニーに発展するなんて
思ってもみませんでしたよ(笑)。 |
糸井 |
(笑)
(続きます)
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