ITOI
ダーリンコラム

<チェックリストいっぱいのつらさ>


実際の若い人たちの会話ってものを、
ぼくらも耳にする機会はあるのだけれど、
それと、テレビに出てくる若い人たちの会話は、
ちょっとちがうような気がする。

あれって、わざとそういうセリフの目立つ人たちを
登場させているのかもしれないけれど。
テレビ番組のなかでは、若い人たちは、
「否定」の会話ばかりしているように見える。

「うざい」「ださい」「きもい」「信じられない」
「ありえない」「さむい」「さえない」「かったるい」
「めんどくさい」「だるい」「むかつく」「しね」
あと、まだいくらでもあるのかな?

機関銃のように、対象となる人やモノゴトを
撃ち落としまくっているように思える。
これ、1回言うごとに、
自分の首をしめてることになると思うんだよなぁ。
「うぜぇよ、あいつ」と言った本人は、
その場では、自分は「うざくない」ということだし、
「きもいんだよ、おまえ」と言ったら、
自分は「きもくない」ってわけだろう。

しかし、「うざい」と言われている人間と自分の間は、
ほんの紙一重のはずだ。
若いうちは、人と人との差なんか、
ほんとは、ほとんどないからね。

自分は「ださくない」ということは、
自分で決めきれるものではないはずだ。
まわりの「みんな」が
自分に「ださい」と言わないことで、
自分が「ださくない」ことがわかるというものだ。
「うざい」も「きもい」も、同じことだ。

これ、安心していられないと思うんだよなぁ。
ださくないように、ださくないように、
うざくないように、うざくないように、
たえず自分でチェックいれてなきゃいけないじゃん。
つらいわ、これ。

そこの集団の共通の価値観から、
逸脱しないようにたえず注意して生きているって状態は、
けっこうつらいと思うよー。

で、で、これ、
さらに気づいたんだけど、
若い人たちが軽蔑していると思われる
「公園デビュー」とかっていう社会とか、
「いやな会社」とかと、同じかたちじゃないの。

自分は「外れてないか」たえずチェックしてるって、
苦しいし、自分の力を最大限に伸ばせない。

若い人の日常語が、否定形に満ちているとしたら、
そりゃぁ、生きてくのつらくなると思うわぁ。
いつもチェックリストばっかりながめているんだもんな。

でも、これはテレビに出てくる
いまどきの若者像を見ていて思ったことなんで、
ほんとうのところは、どうなのか知らないんですけどね。
ぼくの知ってる若い人たちは、
そういう感じじゃないんだけどなぁ。

2002-09-30-MON

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