ITOI
ダーリンコラム

<お笑いバブルが終わりつつある?>

どうも、なんかおかしいなぁと思ってはいたのだけれど、
このごろ確信に近づいてきている。
テレビのバラエティ番組を、観なくなっているのだ。
これは、自分だけかなぁと思っていたのだけれど、
視聴率のランキングなどをみると、
そうとも言えないような感じなのだ。

ぼくは、テレビを嫌いじゃない。
どんな番組でも、「えーい、消してしまえ!」
などという気分になったことはない。
だいたい、観てればそれなりには楽しめるものなのだ。
バカらしいなぁと思いながらでも、
観ている側の工夫でなんとかなるものだ。
よくある手だよなぁ、とか感じながらも、
いちおうテレビは点けていられる。

ドラマに関しては、ちょっとキツイかなということもある。
ドラマの場合は、観ている時間の積み重ねがいるので、
途中でつまらないなと感じたら、
もう、とりかえしがつかない。

でも、ゲームやら、笑いやら、むだ話を軸にした
バラエティ番組の場合は、
とぎれとぎれに観られるので、
そのままにしておける。

ところが、いつのまにか、
バラエティ番組と、「他の番組」があるときに、
「他の番組」のほうを観ることが多くなっていた。
欠かさず観ていた「あれ」や「それ」を観ないで、
その時間にやっている「他の番組」を観ているのだ。

ニュースだったり、スポーツだったり、
ドキュメンタリーだったり、いろいろなんだけれど、
笑わせる要素の少ないものを、自然に選んでいる。
もともと、ドキュメンタリーは好きだったのだけれど、
時間帯が「笑い」と重なっていたら、
ちょっと考えて「笑い」のほうを選んでいたと思う。
しかし、このごろは逆なのだ。

だいたい「年をとるとNHKを観るようになる」
という「伝説」があると知っていたから、
これは年齢のせいなのかなぁとは思っていたのだが。

それに、もともとぼくは「泣かせもの」は好きだった。
作品としての質が低いとは思っても、
上手に泣かせてくれれば、オッケーというやつだった。
「泣く」ってのは、「笑う」と同じように気持ちいい。
そういうのは失礼だろうと言われるかもしれないけれど、
昔の人たちの娯楽では、
「泣かせ」というのは中心になっていたわけだし、
「笑い」のほうがサブの位置だったと思うのだ。
しかし、いつのまにか、
「笑い」の価値がバブル的とさえ言える上昇をして、
世間の価値観の中心にきてしまったような気がするのだ。

映画のスターも、「お笑い」ができれば仕事は増えたし、
「お笑い」もできるアイドルだとかも増えた。
「笑い」の要素のあるバラエティ番組に出なければ、
テレビ出演の機会はほとんどなくなっていたとも言える。
これは、やっぱり、「お笑いバブル」だったと、
考えるほうがわかりやすいのではなかろうか。

そういう状況が、
元に戻りつつあるということかもしれない。
本来の価値と値段が釣り合うようになってきた、
ということなのだろうか。

では、「笑い」というテレビの王様の後がまには、
何がくるのだろうか。
バラエティ番組が減っていった分だけ、
何が増えていくのだろうか。
「ニュースとスポーツですよ」というような
簡単な解答ではなく、
もっと大きなコンセプトが見つけられるといいなぁ。

ついでに言うのですが、ぼくは「笑い」は好きですよ。
ただ、残念ながら、
だんだん「おもしろいこと」が言えなくなってます。
このあたりも、興味深いところなんですけどね。

このごろ、これだけは見逃せないというテレビ番組って、
どんなのがありましたか?

2003-03-03-MON

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