感心力がビジネスを変える!
が、
感心して探求する感心なページ。

第8回 お待たせしました。
    いい声をつくる方法とは?


田中 そろそろ「ビジネスに役立つ声のつくり方」について
聞きたいんですけど(笑)。
巻上 いろんな声を出したほうがいいね。
そうすると、喉の可能性っていうのが
広がってくるから。
田中 物まねしてみることが
大事ってことですかね?
巻上 会社でも部長の物まねとか
よくするでしょ?
そういうのはね、けっこういいんですよ。
田中 はぁー。
それ、喉を運動させることになるわけですね。
巻上 そう、運動になるんですよ。
あと、その人の考えてること
つまり、思考がわかるわけ。
昔、寺山修司の物まねする人が
いっぱいいたけど、
物まねすることによって
思想模写もできるわけ。
田中 声帯模写が、思想模写になるわけですね。
巻上 うん。その物まねの対象の
考え方がわかるようになるんです。
田中 僕も仕事をするにあたって
企画のプレゼンテーションなどでは、
話し手によって、
企画の通りが良さとか悪さが決まってくるな、

という気がしていたんです。
「声を工夫してみたらいいんじゃないか」
と思ってみたりしますし。
声と伝達内容っていうのは、
実はすごい近いのかな、とか、
声と人柄っていうのは、
かなりオーバーラップしてるのかな
と思っているんです。
巻上 それ、すごい重要ですね。
というのは、
人って、あんまり内容を
聞いてないってことですから。
田中 あっ!
そう思うんですよ。
巻上 内容はあんまり重要じゃないんですよ(笑)。
コミュニケーションのいちばん重要なのは、
音とか‥‥。
田中 形式のほうですね。
巻上 そうそう、見た目とか、そっちですよ。
田中 ええ、スーツ着るとか。
巻上 そう!
そんだけですね、おそらく。
田中 例えば、裁判長という人がいてですね、
あの服じゃなくて、
仮にパジャマ着て、甲高い声出したら、
たぶん説得力ないと思うんですよ、
どんないいこと言ってても。
巻上 はっはっはっは!
田中 その関係というのは、
すごく興味があってですね。
巻上 だから、違うところを見てるんでしょうね。
みんな伝達内容よりも、
その奥にある声質から感じるもの。
だいたいのその人を表す人間性とか伝えるもの。
そういったものを感じるほうが大きいみたいですね。
田中 そっちのほうがたぶん、
ダイレクトに入ってくる情報ですよね。
巻上 そうみたいですね。
それがいちばん大きいかな。
だから声を良くするっていうのはね、
説得力を増しますよね。
田中 ですよね。
じゃあ、いい声って、
どういう声なんですか?
巻上 いい声はね、良く使ってる声ですよ。
田中 良く使う声(笑)。
巻上 うん、良く使われてる声。
部分的にしか声を使ってないと、
説得力がないですよ。
田中 さっきおっしゃった
響かせ方の幅がある声っていうのが、
いい声であると。
巻上 前に婦人公論で糸井さんと対談したんですけど。
そのときに鈴木松美さんが、
僕の声を測ってくれたんです。
普通に話しているときで160ヘルツ以上あるのかな。
普通の人の3倍使ってるんですって。
その幅の広い人のほうが説得力がある
そうなんです。
田中 その周波数の振れ幅が大きいということですよね。
巻上 うん。
田中 そのほうが、抑揚つけたりとかしやすいってことですか。
巻上 そうですね、
だから、いろんなレベルで話をすることができる。
田中 っていうと、中身が同じことを喋ってても、
相手に対して納得されかたとか、
相手の説得されかたが、
違ってくるってことですよね(笑)。
巻上 明らかに違うでしょうね。
それはやっぱり、
僕は声をいろんなふうに
使っているのと同時に
耳も育ってる思うんですよ。

いろんな音やいろんなレベルの倍音聴いてね。
ときどき、嫌なこともありますけどね、
いっぱい聞こえ過ぎてしまって。
田中 あ、もう、ノイジー過ぎるわけですね。
余計な音まで拾っちゃう耳なんですね。
巻上 そうそう(笑)。
普通の人はもうカットしてる音をね、
聴いてるから。
田中 ってことは、いい声を作ろうと思えば、
いろんな声を聴くってことも、
大事だってことですよね。
巻上 いろんな声、聴いたほうがいいですよ。
都会はね、あんなに音に溢れているようで、
意外に音の幅っていうのは少ないそうです。
田中 平板なんですか。
巻上 うん、でもジャングルとか行くと、
すっごい幅があるんだって。
そういうところにいると
耳から豊かになるそうなんです。
田中 耳が豊かになってくると、
自分も豊かに出していける
ってことになるわけですね。
巻上 で、都会にいるときは、自分で出す。
いろんな音出して(笑)。
田中 巻上さんは無理矢理
自作自演できますからね。
巻上 お、耳が気持ちがいいってね(笑)。
喉の快楽は耳の快楽ですよ。
今泉 日本で普通に言葉で使ってるのって、
例えばミ、ファ、ソぐらいの、
3度ぐらいしか使ってないっていいますよね。
それに幅が増えると、
抑揚がつけられるってことになりますよね。
巻上 そう、だからプロフェッショナルで
やってる人っていうのは、
そういうのよく解ってるわけじゃないですか。
理論的にわかってなくても、
経験的に知っていくわけですよね。
だから、いろんな声出してみようとか、
いろいろ勉強するんだけど。
普通の人は、そんなにしないですよね。
今泉 意図的にやらないときっと、
増えないですよね、それは。
巻上 うん、だから、ボイスのレッスンってね、
会社員にもね、すごく役に立ちますよ(笑)。


<ワンポイント考察>
実用をお望みのみなさま、
たいへんお待たせいたしました。
いかがでした?

声帯模写は形態模写だけでなく、
思想模写でもあったとは!
喉の運動の可能性を拡げることが、
よく響く幅のある声につながり、
そして、幅のある声をつくろうと思うならば、
まずはいろんな声や音を
よく聴くことがたいせつ。


耳の大きいお猿がシンボルの
「ほぼ日」にふさわしい、ええ話やありませんか。

さらに考えてみれば、
よく響く幅のある声が
説得力を持つということは、
いい声は、
十人十色の人の体を
できるだけたくさん響かせる力を
備えた声であるってことになりますよね。


わたくし、ビジネス格言をつくりました。
「よく聴き、よくまねべ。」

声は鍛えられるんですねえ。
 

2003-05-29-THU

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