田中 |
問題解決のためのひとつの手段として、
デザインを捉えるという考えは、
日本ではまだ一般的なものに
なっていないですよね。
そのために、悪い言い方すると、
デザインに力があると、
「デザインでごまかして」みたいな
言われようをしたりしますよね。 |
佐藤 |
そうそうそうね。
デザインの力で、
ほんのわずかでも世の中をね、
いい方向にもっていくことも
できるんだと思うんですよ。
たとえば、パッケージひとつとっても、
ゴミ問題との関わりがありますよね。
リユース(再利用)とか
リサイクル可能な素材とか。
また、素材の問題っていうのも
環境問題にとって大きいですよね。
じゃ、環境問題にとって
完璧なものを使いましょう、
っていったところで、
完璧なものって、何もないんですよ。 |
田中 |
むしろ社会の仕組みから
デザインし直さないと、
根本的な解決にはならないですよね。 |
佐藤 |
そう、ペットボトルは再生素材です、って言っても、
じゃ、ほんとにペットボトルが
すべて再生されてるか、っていうと、
100%にはとうてい至っていないんですね。
中にジュースの液体が
こびりついちゃってる場合には、
正しくリサイクルするためには、
洗わなきゃなんない。
で、そんなシステム、
まだ完璧に準備できてないわけですよね。
神様じゃあるまいしね、
すべてを完璧にすることはできないから、
どこまで、できるかっていう範囲と程度って、
やっぱりあると思うんですよ。
少なくとも自分が置かれた環境で、
できるだけのことはやりましょうよ、って
思ってやってます。
で、それをやってくとね、
もう、面白くない仕事ってないんですよね。
もうほんっとに、
何一つないっていう感じなんですよね。 |
田中 |
問題やヒントが目に入って
しょうがないんですねえ。
過敏症とも言えますね(笑)。 |
佐藤 |
自分が何をここでできるか、っていうことを
探ってったときに、
必ず何かあると。
で、誰も気がついてないところを、
ほんのわずかでも見つけられたら、
それはクライアントが
その時点で理解していようがいまいが、
やってみよう、っていう気持ちですね。 |
田中 |
なにも大きな問題が
しょっちゅうあるわけではないですしね。
デザインを通じて
なにが伝わるかが大事ですよね。 |
佐藤 |
クライアントが予想した以上に、
それを受け取るユーザーや生活者のほうは
理解してくれたりするんです。
あのロッテのクールミントガムの
ペンギンの前から2番目だけが
手を上げてるやつとかね。 |
田中 |
あれは最初に聞いたときに、
うれしかったですよ。
なんでそういうことで自分がうれしいのか、
わからないんですけど(笑)。 |
佐藤 |
もう生活者が、
だんだんだんだん気がついてますから。
もう、ぼくがいろんなこと喋ってるから、
クールミントの2番目のペンギンが
手を上げてるっていうことを知ってる人って
多いわけですよね。
「集団行動を象徴してるみたいよ」とか、
「会社の中で、
2番手がすごく辛いみたいよ」とか、
ぼくがしゃべったことを
みんなが広めてくれるんです。
そしたらね、そういう評判が、
まわりまわって社長の耳にはいったみたいで。
うれしいらしいんですよ、それが。 |
田中 |
あ、社長もうれしいんだ(笑)。
噂が評判になっていくと、
誇らしい気分になるわけですね。 |
佐藤 |
でもね、最初はね、
クライアントもどこまで効果があるか、
半信半疑だったと思うんですね。
自分は何かできること、新しいこと、
メッセージみたいなものを必ず込めたい。
もちろんビジネスとして、
少なくとも成り立たせなきゃいけない、
デザインを機能させなきゃいけない。
でも、機能させた上で、
そういうメッセージを忍び込ませて。 |
田中 |
それは、暗号をデザインされたわけですもんね。 |
佐藤 |
ある意味では(笑)。
必ずそういうひそやかな楽しみを、
もしくはそれがメッセージだったりするんですけど、
忍ばせるとね、
つまんない仕事なんか何もないですよね。
なんかこう不景気とかね、
悪いニュースばかり聞いてるとさ、
元気がなくなるじゃない?
もう、「デザインなんかに何ができるの?」とかね。
こんなに山ほど世の中に物があってね、
「もういるの?、ほんとに物が?」ってね。
そのネガティブなほうにばかり考えていくとね、
なかなかエネルギー生まれないですよね。 |
田中 |
なにもデザイナーだけでなく、
「仕事つまんないな」と思ってるビジネスマンも、
「あ、そういう手があるか」と思えますよ、きっと。
「自分もひそやかな楽しみを入れるよ」って
明るくなりますよね。
|