田中 |
今までは、むしろ問題製造業者とか、
場合によっては問題複製業者だったかも
しれないけども、
デザイナーの視点で
だれもが問題解決業者になれるってことが
ありそうですよね。 |
佐藤 |
うん。
デザインドクターなんていう言葉をね、
ときどき使いますけど、
ほんとにお医者さんに近いっていうかね。
聴診器をぶら下げて歩いてるみたいなさ(笑)。
何かあったときにさ、
「こう、どこがいけないのかな?」って、
デザイナーって、
そういうとこがあるんじゃないかな。
なんだかさ、新しいものを作りだす、
アイデアだけを考える、という、
生み出すことばっかりが語られるんだけども、
実は「見つける」ってことをしてる職業なんですよ。
なんかかっこいいものをつくる職業みたいにね、
いまだにそんなことを思われちゃっててね。
「あなたたちはいいわよね、
いつも楽しそうで」って。
いや、もちろん楽しいことは楽しいんだけども‥‥。 |
田中 |
「好きなことを仕事にして」とか、
好き勝手やって暮してる人みたいに言われて(笑)。 |
佐藤 |
そうそうそうそう(笑)。
そんなに向こう側に追いやらないでよ、
って言いたいんだよね。
一緒じゃないですか、何やったってね。
お医者さんも、やぶ医者は、
頭の痛い原因をちゃんと調べずに、
頭痛薬をくれちゃいますよね。
それは対症療法としてはね、
場合によっては必要ですけども、
ほんとに頭が痛い理由を、
やっぱり知らなきゃいけないわけですよね。
睡眠不足だけだったら、薬なんていらないわけだし。 |
田中 |
眼鏡の度が合ってないかもしれませんしね(笑)。
噛み合わせの問題かもしれないし、
だから、総合的に見えるっていうのは
大事なんですよね。 |
佐藤 |
それも完璧にするとなると無理なんだけど、
でも、できるだけ問題はどこなのかっていうことを
見つけていこうとすると、
自分はそのとき、何も関係ないんですよね。
私が何をやりたいかとか‥‥。 |
田中 |
自分の中に問題は無いですもんね(笑)。 |
佐藤 |
うん、そう!
それがね、若いデザイナーで、
ほんっとに誤解をしている人がいてね。
デザイン学校とか大学のデザイン科とか出てね、
で、世の中に出て、1回ボキッと折られてね、
それで、ハッと気がつく人はまだいいんですよ。
ところがね、気がつかないでずっといってね、
世の中とぶつかり続けていく人がいるんですよ。
なんで俺のやってるデザインが
わかってくんねぇんだ、っていう。 |
田中 |
なるほどな。
それ、頭痛いって言ってる患者さんに、
「いや、俺は盲腸の手術得意だから、
盲腸の手術を」なんていうのと似てますよね、
なんか感じとしては(笑)。 |
佐藤 |
そう(笑)。
で、まず体を切るのが好きで、
とりあえず切っちゃうっていうね。
「だから、切りたいって言ってるのにさ、
なんで切らしてくれないんだ?」って、
こう文句言ってるみたいな、デザイナーがね、
けっこういるんですよ。 |
田中 |
それは、やっぱり自分の流派を掲げたいみたいな、
そういう欲望に近いですよね、結局のところは。 |
佐藤 |
べつに、あえて、「それは違うでしょ」とも
言いたくもないっていうか。
どうぞ、そういう生き方でいかれる方は
いかれればいいじゃないですか、って気分なんです。 |
田中 |
そういう人がいたほうが、
佐藤さんの価値が高かったりしますからね(笑)。 |
佐藤 |
「私がいい」と言ってるわけじゃなくてね、
自分はそうだから。
自分のことは
自分がいちばんわからないじゃないですか。
だから、自分がいいと言ってるわけじゃなくて、
私は違うと。少なくとも違う。
で、あなたはあなたですよね、って。
それはこうハッキリと言いたい。
少なくともあなたのやり方は、
かなり自分の可能性の幅を狭めますよ。
でも、狭めて深くいく人もいるかもしれない。 |
田中 |
むしろそういう人はデザイナーというより、
アーティストとしての生き方を
貫いてるんですもんね。 |
佐藤 |
うん、そう。その生き方を選ぶのも自由ですよ。
デザイナーって、
さっき医者って言い方をしたんですけど、
翻訳者っていう存在でもあるかな。
デザインってものが、
最終的には人間に届くものなんてだけども、
ひじょうに曖昧な、よくわからないもんなんですけど、
それを自分のわかる範囲で言語化したり、
かたちにしたり、
そういう翻訳者みたいなところがあるんです。
翻訳者もやっぱり言ってる人のことを、
まずよくわからないと翻訳ってできないですよね。 |
田中 |
そうですね。
デザイナーって、一般人の視線で見ると、
なんか専門用語ばっかり喋る
特殊な存在みたいな感じで、
かえって翻訳者とは逆の匂いが
漂ってると思いますよ。 |
佐藤 |
そういう人、いるんですよ、またね。
「なんでそんな難しい言葉をいっぱい使うの?」
っていう人がね、いるんですよ。
カタカナが多いってよく言われるでしょ。
好きな人もいるんだよね。
「じゃ、プラスティシティなんて、
なんで英語で言うのか?」って
いうのもあるんだけどさ。
「ああ、そっか、俺もそうかもしれないな」なんて
反省する部分もあったりするんだけども。
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