佐藤 |
デザインっていうのは、
もう身の回りにあるもの、
もうすでにあるものを
みんなデザインしてるわけだから、
特別なものじゃないわけですよね。
それなのに特別なところにいてね、
「デザインは任せなさい」っていう、
「特別なもんだから」っていう、
デザインを取り囲む雰囲気がね、
なんか嫌なんですよ。 |
田中 |
ああ。
でも、一方で、
ある程度特別なものと思ってもらわないと、
クライアントに
お金払ってもらえないわけじゃないですか。 |
佐藤 |
そうですねぇ。 |
田中 |
だからそういう意味で、
たぶん自分のデザインの値段をつけるって、
また難しいことになりますよね。 |
佐藤 |
難しいですよねー。 |
田中 |
たとえば、生臭い話ですけども、
見積もりを出してそのまま通ったとかって、
やっぱりそれは自信になっていくものなんですか? |
佐藤 |
う〜ん、どうかなぁ‥‥。 |
田中 |
高く買ってもらう喜びみたいなのは、
あります? |
佐藤 |
あの、提案する相手が、
企業として、デザインの価値を認めてるっていう
証拠だと思ってるんですよ。
だからよく担当者がね、
「すいません、ぜひお願いしたいんですけど、
予算がないんです」っていう。
で、それは、その個人が、発注者が、
自分のことは認めてくれてる。
でも、企業としては、
デザインに対する価値は認めてない
っていう判断を、
ぼくは下します。 |
田中 |
あ〜、ありますよね、そういうこと。
企業によって、
たぶん経理の監査があって、
なぜこのデザインに、
仮に1式1千万円だとして、
このデザインになぜ1千万なんだ、っていうのを、
説明する資料を見せないと
金額が認められないケースがあるじゃないですか。
そこがデザインの価値をわかってないとなると、
結局会社としては
わかってねぇじゃねぇかって
話になりますもんね。 |
佐藤 |
そうそうそう。
だから経営サイドがネックになりますよね。
予算をちゃんと準備してくれてる場合は、
「ああ、会社としても、
デザインを認めてるんだな」という判断をしますね。 |
田中 |
新しい、いい原料を調達しますみたいな話なら、
会社として予算がほいほい出てくるのに。 |
佐藤 |
そうそうそうそう。 |
田中 |
デザインも新素材と同じぐらい力があって、
それで選ばれて買われるっていう
可能性があるんだったら、
その新素材を買うコストとおんなじように
デザインも認めてもらって
当然だってことですもんね。 |
佐藤 |
でも、やっぱり目に見えるものじゃないから、
デザインはね。 |
田中 |
「いかがなものか」というツッコミを
入れられやすいことになるわけですよね(笑)。 |
佐藤 |
うん、プラスチックにはお金払うけども、
そのかたちのアイデアに対しては、
お金払ってくれないというか。
ま、そういうところもいまだに多いですよね。
でもそれは企業がいけないだけじゃなくて、
デザイナーもいけないところがあって、
お互いがいけなかったんじゃないかと思うんですね。
デザイナーも、
「俺が、俺が、俺のデザイン」とかね、
言い続けていたから。
それで機能しないようなデザインが、
あまりにもまかり通っていたから、
そんな誤解を招いていることも事実なんですよね。
だから、相手がわからない言葉は、
なにひとつ使わないようにしてるんです、僕は。 |
田中 |
サービス業として、まっとうな道ですねえ。 |
佐藤 |
だから、デザインについて、
わかんないわけだから
依頼してくるわけじゃないですか。
で、そこでね、相手がわからない言葉で
コミュニケーション取ったって、
それは取れないですよ。
どんどんどんどん煙に巻いてね、
煙に巻いてるうちに
私にやりたいことやらせろ、って
言うのといっしょで。
よくわかんないんだったら
俺に任せろみたいなね(笑)。
ま、ある意味で、
悪い言い方をすれば
詐欺みたいなもんなんだけど。 |
田中 |
たしかにマッチポンプみたいなところは
ありますよね(笑)。 |
佐藤 |
ね。
でも、ほんとにそういうことを
やってる人もいるわけですよ。
それは、そんなことやってるから、
デザイナーは信用されなくなるんで。
もう、すごくクリアにしていきたい。 |
田中 |
なんでもガラス張りにするという考え方ですね。 |
佐藤 |
で、ガラスを取っちゃったら何もないって(笑)。 |
田中 |
だから一方で、大先生として、
お経のような言葉に価値を高めていこうとする
教祖のデザイン派がいるわけですね(笑)。
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佐藤 |
「君はわかってないね、デザインが」、みたいな。
いろんな人がいるからいいと思うんですけどね。
でも、少なくとも、自分の生き方として、
それはできない。
だって、デザインなんて、
脳の話じゃないですけど、
やっと我々のからだがね、
少しずつわかり始めたわけじゃないですか。
我々はからだ全て使って、
どうやって物に反応してるのか、
どういう情報が自分の中に入ってきて、
今までの経験から何が引き出されるのか、
っていうようなメカニズムが、
少しずつわかり始めたような段階ですよね。
ということは、
「今までのデザインっていうのは
何だったの?」って、
今考えなきゃいけないときに
来てるに決まってるわけじゃないですか。
そんなこと何にも語られなくて、
「デザインはこういうものです」とかさ、
「きれいなかたちとは」なんていって。
「じゃ、きれいってどういうこと?」って。
ね?
きれいってことは難しいですよ。 |
田中 |
そういうことを見ないようにしてるっていう
デザイナーが多いでしょうしね。
いや、今おっしゃったように、
ほんとだったら、
認知科学でもアフォーダンスでも
知っといたほうがいい、ってことに
なるわけじゃないですか。 |
佐藤 |
そうそう、もういちばん今興味があるのは、
そこらへんですよ。
認知科学は、面白いですよね。
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