田中 |
「ほぼ日」読者にとって、
すぐに使える実用的な話を聞きたいんですが(笑)。 |
佐藤 |
どうぞどうぞ。 |
田中 |
ここのところプリンタやコピー機の性能があがって、
ビジネス書類のカラー化が進んでますよね。
で、プレゼンテーション画面でも
そうなんですが、
色使い過ぎて失敗しちゃってるケースって
多いですよね。 |
佐藤 |
多いですね(笑)。 |
田中 |
書類をつくるときに、
どこに気をつければいいのか、
「ほぼ日」を読んでる働く人たちに
何かアドバイスできることはあります?。 |
佐藤 |
うん、ありますよ。
文字が載ってる紙1枚って、
まあ、もちろん当たり前のことですけれど、
情報ですよね。
情報であるということには、
何も変わらないんだけど、
やっぱり人の側が、
常に変化をしてるってことですよね。
環境も含めて。
だからその情報っていうのは、
刻々とその届き方が違うってことなんですよ。
たとえば、
パッとその書類を見たときに、
何がまずその人の眼に入っていって、
で、次の段階で何が入っていって、
よく見ると次に何が入って、っていう、
情報に奥行きをつける考え方で、
作ってみてはどうだろうかなぁ、と思います。 |
田中 |
情報の受け手の目線を先まわって、
書類のデザインをするわけですね。 |
佐藤 |
だから、色を使うことが
べつに悪いわけではないんです。
パッケージもそうなんですよ。
遠くから見たときにね、
最初に何が見えて、
それで、1秒で何がわかるのかっていうことを
考えるわけです。
1秒で目をそらす人には、
最低限いちばん重要なことだけは
わかってもらわなきゃいけないっていうことですね。 |
田中 |
新聞でいう見出しみたいなことを
意識して作るということですか。 |
佐藤 |
うん、そうですね。
だから、文字に色が加わった場合、
色の強さっていうのがあるので、
2つが同じように強いと、
それはぶつかり合って、
どちらも記憶に残らないっていうことが
あるじゃないですか。
だからやっぱり色を使うんであれば、
こんど色の機能も考えなきゃいけないので、
複雑になるんですよね。 |
田中 |
変数が増える分だけ、
ややこしくなりますよね(笑)。 |
佐藤 |
うん、だから、
そんなには複雑で難しいことが
できないんだったら、
扱う要素は少ないほうがいい。 |
田中 |
少ないほうがいいと(笑)。 |
佐藤 |
そういうことでしょうね。 |
田中 |
カラーにしたがばっかりに、
色をいっぱい使っちゃって、
わけわかんなくなった書類ってあるじゃないですか。 |
佐藤 |
ありますね。 |
田中 |
それだったら、
単に、下線引くだけにすればいいのに、
という書類もありますよね。 |
佐藤 |
ありますね。 |
田中 |
ということは、書類を作る側が、
何をいちばん伝えたいのかっていう、
その順番づけが
しっかりできてないっていうことが、
やっぱり大きいんでしょうか(笑)。 |
佐藤 |
うん、そうですよね。
で、色っていうのは、
ものすごく人に影響を与えるっていうことを、
もっと認識されたほうがいいんじゃないですかね。 |
田中 |
ああ、なるほど。 |
佐藤 |
もの書いたり、なにか人に伝えたりするときに、
色の持ってるポテンシャルっていうのは、
はるかにすごいものがあるんですよ。
文字っていうのは、
大きい小さい、太い細いっていう、
そのことで強さ弱さって変えられる、
ということは多くの人たちが知っているけれども、
色に対してそれだけの戦術を
持ってるかっていうと、
持ってないじゃないですか。 |
田中 |
そうですねぇ。
色のはたらきについては、
知らないことが多いですね。 |
佐藤 |
意識がひじょうに低くなっちゃうんですね、
色に対してね。
だけど、実は色を効果的に使うと、
ものすごく文字の力が引き出せる。
コミュニケーションの幅が広がるわけですよね、
無限にね。
ま、順列組み合わせでいったって
広がるわけですよね、物理的に。
だから、難しいわけですよ。
そこで、まず重要なのは、
自分が作ってる書類がね、
いかに人にわかりにくいものか
っていうことに気がつかないと! |
田中 |
あははははは!
そうですよね。 |
佐藤 |
これはもう救いようがないっていうことだと
思いますよね(笑)。
色が大切ですよ、って言ったって、
“これのどこが悪いんだ?”って思ってる人に、
それは通用しないから。
自分の作ってる書類が、
いかに最低なものかっていうことに
気がつかないとね、将来はないですよねぇ(笑)。 |
田中 |
色でいうと、
カラーコーディネーターのような
資格ができたりとか、
そういう情報の受け渡しにも、
色がたくさん使われるようになったりとか、
色について考える機会は増えてはいるのに、
そのコントロールの仕方とか、扱い方を、
知らないですよね。 |
佐藤 |
うん、力のあるものだから、
もっと大切に扱えばいいんじゃないかな。 |
田中 |
そうか。
次に「ほぼ日」読者の中でも、
主婦向けに料理と色について
聞きたいんですけど(笑)。
料理を見たときに、色の取り合わせって、
わりと敏感に感じられますか?(笑) |
佐藤 |
いや、そんなこと考えないですね(笑)。
料理って、まず視覚から入りますよね。
ま、臭いが先にくることもありますけど。
まず視覚が大きく影響しますよね、
赤、緑、どんな素材か。
で、それによって、
過去のいろんな経験が引き出されるわけですよね。
臭いの経験だったり味の経験だったり。 |
田中 |
他の記憶や感覚が呼び覚まされますよね。 |
佐藤 |
そう。
視覚からはじまるけれど、
臭覚だったり、噛み具合の触覚だったり、
まさにトータルで美味しいっていうことは
表現できるわけですから。
だから、それは、
色の組み合わせという理論では
判断できないですよ。
「唾液を出させるデザイン」は、
やっぱり奥が深いんです。
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