米原 |
外国人に自分の国について話す時は、
相手によって、違いますからね。
でも、日本にやってくると、まず、
「水道の水は飲めるか」ってすぐ聞かれます。
日本にやってきた人にとっては、
「ミネラルウオーターを買ったほうがいいか、
水道の水を飲んでもいいかどうか」
というのは、だいじなことでしょう?
そうすると、
「ああ、日本の水道水はだいたい飲めますよ」
っていいますね、大阪は別にして。 |
糸井 |
ちょっと自慢ですね。 |
米原 |
自慢です。
「日本という国は非常に工業先進国で
開発が進んでいるけれども、
日本の総面積の85%は山で、
だから、水が汚れる暇がない」と言います。 |
糸井 |
斜めだからですね。 |
米原 |
そのことで、
日本という国が、ちょっとわかるでしょう? |
糸井 |
結果的には、ぼくの言っているのと
同じようなことをいって‥‥(笑) |
米原 |
そうなんです。 |
糸井 |
ぼくは、今、農業の方に、ずいぶん
頭の中を向けちゃっているものですから、
そうやって日本を見ると、
すごくありがたい国なんですよ。 |
米原 |
そうなんですよね。 |
糸井 |
これがうれしくてねえ。
ついつい四季とか
言いたくなっちゃったんですけどね。 |
米原 |
いや、ほんと。
これだけ環境汚染が進んでいるのに、
日本って湿気が多いから、いざとなったら、
農業国としてやっていけるんですよね。 |
糸井 |
東京都の面積の7倍の
あいている畑があるんです。 |
米原 |
あ、そんなに! |
糸井 |
水が絶えず供給されているんですね。
台風一つだって、あんなもの、
なかなか来ないですからね。
で、全部斜めにちゃんと地下でも
流れていくような仕組みになってて見事ですよ。
四季があるから、温暖の差を利用して
いろんなものをつくれる。 |
米原 |
そうですね。
本当にいろんなものがつくれる。
それで、寒流と暖流があるから、
お魚にも、いろんな種類があるし。 |
糸井 |
その山というのは、
今までの農業のパターンだと、
利用しにくい場所と思われたんですけど、
実はそっちの方が向いているということが‥‥。 |
米原 |
ええ、棚田のお米の方がおいしいですよね。 |
糸井 |
よくご存じですねえ、やっぱり通訳しているから? |
米原 |
いや、違うんです。
私、棚田のお米を取り寄せているんです。 |
糸井 |
つまり、たっぷりやり過ぎるもの、
というのは、だいたいダメなんですよね。 |
米原 |
そうです。人間もそうね。 |
糸井 |
まったくそうなんです。
ちょっと余談ですけど、
急斜面で牛を飼うという牧場があるんです。
一番ひどいところだと、
45度の傾斜のところに牛がいるんです。
これはねえ、牛、実はご機嫌なんです。 |
米原 |
ああ、筋肉も鍛えられるだろうし。 |
糸井 |
自分の生きる力が呼びさまされるんです。
牛って暇ですから、別にどこかへ行くのに
時間かかってもいいですし‥‥。 |
米原 |
ああ、そうか。 |
糸井 |
見ると、牛歩でいく道が、
ちゃんとできているんです。
そこで育った牛のミルクは、うまいんです。 |
米原 |
そうでしょうね。
狂牛病の原因って、結局、
お乳を搾り過ぎのせいでしょう? |
糸井 |
えさなんですけどね。 |
米原 |
150%とっているんでしょう、実際は。 |
糸井 |
もともと言えば、
いっぱいミルクを出すというのが
いい牛を育てたということで、
それで賞をもらうような体系が
できあがっていた‥‥。
でも、今いった牛は、従来の枠組みで
優秀とされる牛の8割ぐらいしか出ないんです。 |
米原 |
その方が絶対いいんですよね。 |
糸井 |
そう。
おいしくて、高く売れるからいいんです。 |
米原 |
ああ、結局ね。 |
糸井 |
捨てなきゃならないミルクを
絞る必要はないんですよ。
そう考えると、さっきの85%の山間部は
全部オーケーなんです。野菜にしても何にしても。 |
米原 |
本当は腹八分の方がいいんだけど、私も。(笑) |
糸井 |
全くそうです。 |
米原 |
なかなかそれができない! |
糸井 |
その面でいうと、
日本は、すてきなんですよ。
自動車の輸出がどうであろうが、
何かもともといい場所に住んでいた、
という喜びがあるんですね。
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