おとなの小論文教室。 感じる・考える・伝わる! |
プロローグ 「おとなの小論文」って何? いきなりですが、 17歳のバスジャック、あなたは何を考えましたか? 頭の中でちょっとだけ考えていただけますか。 ええ、あなたです。はい、今すぐです。 思考タイム… 考え、出ました? では、ある人のこんな意見、読んでみてください。 ●狂った犯人にあんなでかい尖った刃物を 長時間つきつけられた少女の精神は 今後どんなところで 普通の人とは違う部分をみせていくのか。 大変なプレッシャーだったと思います。 今後、少女にとって、今回のさまざまなキーワード、 「刃物」「ひとり旅」「とがったもの」「バス」 についてどういった動きをみせていくのか、 マイナス面はいろいろあるでしょうが、 かけがえのない良い体験に消化させたらおもしろいな、 と思いました。 「殺されるかもしれない」という 長時間のプレッシャーから「解放された瞬間」、 両親の胸におもいっきり飛び込んで 抱きしめられた「快感」。 ほんとに大勢の人に心配されたことなどは 他の人にはない体験だった と思います。 おもいっきり巨大な愛に助けられた瞬間、 その後の「怒濤のような安堵感」というのは 当事者の少女の「独特の体験」 だったと思います。 タナカカツキ また、ある人は…、 ●今回は SATという,テロ対策特別グループが 同タイプのバスを利用して 綿密なシミュレイションに基づいて 早朝バスに飛び込みました. 評論家の多くは,これまでのプロセスに 「時間がかかりすぎる」 と批判的な向きの発言をしています. しかし, 高速バス専用という車両, 高速道路上, さらには犯人が17歳の少年、 という3つの特殊性を総合的に勘案するだけでも、 現場の警察側は慎重にならざるを得なかったと思います。 やむをえない事態でした。 高速用車両は、眺望をよくするため床が高く、 硬質の窓、座席が多く通路が狭い着席重視の造りで、 一般路線バスのイメージで強行侵入を考えてはならず、 車内でも意外にうまくふるまえない 可能性が高かったはずです. また、一般道路ではバスを塞ぐことは容易ですが、 実況中継で分かるように、 高速道路本線では実質的に難しく インターチェンジやサーヴィスエリア付近に限られ、 時間がかかったと思います。 結果的にマスコミの批評は「横暴」にうつりました。 評論家の多くは、 新聞などで報道されている 静的な情報を整理して、批判していますが、 現場の動的な情報を知らないで、 安易に批判しているようにしか見えません。 西山敏樹 ●自分を解放する「考えること」の愉快 連休のさなか、 長い長い時間をかけて報道されたこの事件。 冒頭の質問に戻って、あなたは何を考えましたか? 考えそのものよりも、 その考えがいったいどこから、どんな風に出てきたのか、 大変興味があります。 私は、ショッキングな映像に心をざらつかせたり、 テレビのコメントに違和感を持ちながらも、 そのもやもやを形にすることができませんでした。 そこへ、舞い込んだ先の2通のメール、 「やられたー」と思いました。 たぶん事件を見て、 体の中に自分なりの何らかの印象が湧き上がってきた ところまでは、彼らと一緒だったはずです。 ところが、私は思考がストップモーションのまま。 二人は思考がどんどんダイナミックに動いていって、 言葉となり、ついにこういう形で体の外へ出たわけです。 体の中にあったもやもやは、 さぞかし解放されたろう。 考えないって、自由じゃない。 考えないのは、 なんにもとらわれない、自然・天然の状態ではなく。 体内にインスピレーションのベンピを起こすこと。 そんな自分をほっといてくれる世の中じゃなく テレビから、新聞から、口当たりのいいコメントが じゃんじゃんあびせられるので。 「何か、私の言いたかったことに似てるカモ? ちょっと違ってるようだけど、 そのへんでいいカモ?」 そうして2・3日後には ずいぶん遠くへ流されてしまって、 身の内にあった、最初の印象が何であったのかさえ 忘れてしまいます。 それは、世界でたった一人、 自分という存在しか持ち得ない、 明日のお宝だったかもしれません。 ●「おとなの小論文教室」で、スカッとしましょう。 来週から週一回ではじまるこのコーナーでめざすのは、 自分でものを「考える」面白さ、 「書く」よろこび、 自分の気持を相手にスポ――ン!と 「伝える」気持ちよさ をあなたと存分に味わうことです。 そのために、 どうやったら、自分で考え、書けるようになるのか、 方法や習慣性を身につけたり、 自分を知って、相手を知って、 思いを伝えるテクニックを いろんなプロから教わったり、 糸井さんから盗んだり、 私らであみ出したりしたいと思います。 *今回、タナカさんからは「希望」、 西山さんからは「現場」というメッセージを 受け取りました。 ありがとう。 この二人をもっとよく知りたい人は、 こちらのホームページをどうぞ。 タナカカツキ http://www.multies.co.jp/~ka2ki 西山敏樹 http://www.sfc.keio.ac.jp/~bus/ |
2000-05-17-WED
戻る |