YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson1 小論文の5大要素を意識すれば、
     あなたの言いたいことはもっと伝わる!

今、あなたが一番言いたいこと、言えるとしたら、
だれに?  何を? 伝えたいですか?

ちょっとイメージしてみてください…。
その人に、言いたいことが、
スポーン!と伝わった状態も…。

この教室は、その気持ちよさを味わうためにあります。

今日から、毎水曜。
伝える術(すべ)を、身につけていきましょう。
スタートの今日は、ものが伝わる5大要素を押さえます。


●小論文とは何か? を知る

小論文は、「意見」と「理由」の文章です。
「自分の言いたいこと」をはっきりさせ、
その「理由」を筋道立てて説明し、
相手を「説得」する文章です。
↑(受験生のみなさんはココ、大事!)

でも、おとなの小論文は、一味違います。クイズです。

Q. 次の例文のうち、小論文的なものに○、
  そうでないものに×をつけなさい。
  (ヒント:意見と理由に着目)

1. この映画、すっごく、すごーく、よかった。
  もう、感動してボロボロ泣けた。
  ぜーったいおすすめ。ぜひ、ぜひ、観て!

2. この映画は、監督の7番目の作品だ。
  前作から5年半が経過している。
  音楽・衣装・助演男優と、
  オスカー受賞者が3人もいる。
  私は、7作すべてを観ている。

3. 遠慮して恋するなんてありえない。
  世間体とか、身分とかそんなことは蹴り倒したらいい。
  そのくらい恋は立派で真剣なものだと
  感応できる映画だから、ご覧なさい。

4. 今シーズン一押しというと、
  とりあえず、この映画です。
  米国では公開3日間で3000万ドルの興業収入、
  歴代どうどうのナンバー1だからです。観てください。

5. 「この映画、観ないなんてバカ!」 おすぎ


●「意見」と「理由」で小論文は書ける

では、正解を。小論文的なものは、3,4,5、
そうでないのは、1,2です。そのワケは…、

1は、「意見」があって、「理由」がない。
気の許せる友達どうしにありがちですが、
どんなによかったと言われても、
観てない方は困りますね。
それに、私が感動したから、
あなたも感動するっていう論理も「?」です。
どこが、どういう風によかったのか、
相手に説明してあげましょう。
「理由」は相手のためのものです。

2は、「意見」がない文章。
これでは、単なる事項の羅列。
どんなにすごい知識を並べても、
「結局、何がいいたいの?」
ということになってしまいます。
3は、「意見」と「理由」がちゃんとそろって○です。

●自分の根っこにある「気持ち」にうそはつけない

4は、意見と、理由があり一応○です。
でも、説得力がイマイチです。
「とりあえず」の言葉からわかるように、
どうも、この人、
この映画にラブがあるように思えません。
実感より、興業成績優先の人でしょうか。

一方、3の人は、とらわれない、
積極的な恋愛観をもっていることがうかがえます。
また、知識を羅列した2の人の、
根っこにある気持ちは、
もしかしたら「自慢」かもしれません。
このように書き手の価値観は、
短い文章にもごまかしようなく表れてしまいます。

これから書こうとすることについて、
自分の根っこにある気持ちを点検してみましょう。
もし、これから書こうとすることに、
気持ちや生き方がついていかないなら、
書くことを変えるか、
いっそ、「書かない」という方法もあります。


●「相手」はどんな人でしょうか?

書くことは、自分の外に向けた行為です。
読み手あっての小論文。
あなたの文章を読む人は、どんな人でしょうか? 
今日は何をしてたんでしょうか? 
今はゆとりがある? ない? 元気はある? ない?

あなたが書くものは、
相手にとって、どんな意味がありますか? 
ちょっと役立つ知らせ?  励ます?  啓蒙? 和ませる?
笑わせる? 自分を理解してもらう? 問いかけ?
もし、相手を沈ませる、
イヤな気持ちにさせるということに気づいたら、
それでもあなたは、筆を執りますか?


●「自分」は、相手からどう見られているか?

さて、クイズに戻って、
「5がどうして○なの? 意見だけで 理由がないのに」

と思った人も多いのでは?
小論文はつまるところ、「説得」の文章です。
独断ですが、5には、
有無も言わせぬ「説得力」を感じます。
それは、本音で生き抜いてきた、
おすぎさんの言葉だからでしょう。
何を言うかより、「誰が言うか」が雄弁な場合があります。
例えば、同じニュースでも、
メディアが何かで、印象はぐっと変わります。

・ついに宇宙とコンタクト(日経新聞)
・ついに宇宙とコンタクト(東スポ)

あなたは、相手や社会から、どう見られているでしょうか?
役立つ情報をくれる人、感性が合う人、
と信頼されているなら、伝えるのもスムーズです。
ちょっと気になる、ユニークなやつだ、
と思われている人もいるでしょう。
その特性も利用できる。
自分というメディアに影響力がまだないという人は、
意見の根拠をしっかり説明しなければなりません。
内容で十分勝負できます。
あるいは、自分の意見を伝えるのに
もっとも有効なメディアを選ぶという、
奥の手もあります。
自分がお父さんに頼んでも買ってもらえない自転車を、
お父さんから信頼されている、お兄さんに頼んでもらって、
買ってもらったという人がいたら、
あなたはメディアの使い方をよく理解しています。
いずれにせよ、伝えるためには、
自分のメディア力を挙げていく必要があります。
それは、意識すれば、普段の生活・人との関わりの中で
確実に高めていくことができます。
もし、人から疑われている人がいるなら、
小論文の勉強なんかしてないで、信頼回復が先です!!


●今日のおさらい、おとなの小論文5大要素●

1.言いたいことをはっきりさせて。(意見)
2.相手にわかる「理由」を示す。
3.自分が「心から」言えることだけ書き。
4.相手にとっての意味も考える。
5.普段の信頼関係で、
  自分というメディア力を挙げておく。

「1〜5まで、ぜーんぶいるの?」
いえいえ、これは、あくまで原則。
原則がどう殻をやぶっていくか、
その愉快を次週から味わいましょう。
ではまた来週、水曜日。

2000-05-17-WED

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