おとなの小論文教室。 感じる・考える・伝わる! |
はじめまして。 わたしは今年で34歳になりました。 いま自分の進路、将来を考えるための「問い」を つくらないといけないんじゃないかと なぜだかわからない危機感をもったので、 いくつか「問い」をつくってみました。 (1)今まで面白いと思ってやってきたことが、 つまらなくなったのはなぜだろう? (2)家庭を大切にしたいけど、 仕事で遅くなるのはなぜだろう? (3)嫌いなお得意様でも、 ニコニコ話してしまうのはなぜだろう? (4)今の会社をやめたい気持ちもあるのに、 ずっといるのはなぜだろう? (読者のM・Kさんからのおたより) Lesson3 わたしの未来をひらく? 30の問い 今日はあなたと、「自分の進路・自分の将来について」 考えてみようかと思います。 聞いただけで、ウッ、ときそうなテーマですが、 ドーント、ウォーリ〜! この教室のみなさんが、 自分の将来を考えるのに有効な「問い」を、 たくさんつくってみてくれました。 これを手がかりに、一緒に心の中をみてみましょう。 あなたの目(心)は、どの問いにとまるでしょうか? ●自分の進路、自分の将来を考えるための「問い」 考えるには、「問い」を発見すること。 「私の進路をどうするか?」といった 大きな問いだと考えるのが、おっくう。 問題を考えるのに有効な、具体的で、 小さな「問い」をつくることで、考えが進む。 そこで、自分の進路・自分の将来を 考えるための「問い」を試しに一つ、 つくってみようというのが前回の宿題でした。 冒頭のKさんの質問、具体的ですっと入ってきます。 よく見ると(2)・(3)・(4)は、どれも、 (2)家庭を大切に 仕事で遅く (3)嫌いなお得意様 ニコニコ話して (4)やめたい気持ち ずっといる 「ギャップ」の形をしていますね。 このギャップは何? 続けて3つあげたのはなぜ? ●あなたがもし、なるとしたら? 次は、東京@極楽王子さんからのおたより。 谷川俊太郎さんの 「33の質問」という対談が本にあるんですが、 なかに、こういう質問があります。 (5)「もし、これから、なるとしたら、 次のどの職業がいいですか? :指揮者、バーテンダー、表具師、 テニスコーチ、殺し屋、乞食。」 ぼくは、友人の答えを聞いていて、 改めて彼の中をすこし覗けた気がしたんです。 同時に、彼も、普段気づかないような自分を 改めて知ったそうなんです。 それで、自分に向けて問うとすれば たとえば、このようなもの。 (6)「劇場で、コンサートが開かれている。 そこにいる人々、歌手、 それを支えるバックバンド、 舞台のセットを動かす美術スタッフ、 コンサートの進行を管理する現場監督、 歌手を世話するマネージャー、 この舞台のために遠くからやってきた観客、 コンサートの宣伝をして、当日 観に来ている画家さん、劇場主。」 もし、そのどれかになれるとして 為りたくない順に3つ、あげてください。 ●第一にするのは (7) どういう場面で死を迎えたいか…? 「あなたの手を握って死ぬだろう」と言われた時 私は自分が生きてきた意味を知ったように思いました。 そうして、これからの人生も、そう言ってくれた人との 関係を第一に考えて他の色々なことも考えるように なりました。 (Mermaidさん) ●やりたいことがみつからない 大学に入り就職を意識し始めた頃から、 自分に「好きなこと、やりたいこと」が ないことに気づき、びっくりしました。 「会社員」というぼんやりしたイメージしかなかった。 周りの友達はどんどん見つけていくように見える中で、 どうしようもない自己嫌悪に苛まれ、 結局私は考え続けることから逃げたのでした。 でもやっぱりこんなの嫌だ。成長したい。 私がわかっている、自分のつまづきはここです。 (8)問い とっても好きなことは何か? 王家衛の映画 山とか川とかの気持ちいい所 仲間と一緒にいること ここまではわかる。でも (9)これが何にどう繋がるの? ここでいつもギブアップです。 (Y・Nさん) Y・Nさんへ (9)の問い、いいですねえ。 つながりを考えるために、まず、視野を自分の内面へ。 好きなことは、どこが、どんな風に好きか? なぜか? そこから自分のどんな性質が見えるのか? というように具体化していくのも手。 次に、視野をこの2000年の社会へ、バアーっと広げて。 少しでも興味がある方向には、どんな職業があるのか? 具体的にはどんな仕事をしているのか? 見たり、聞いたり、調べたりするのも手。 直接その方面の人に話を聞いたり、 現場を見学するなどの フィールドワークをしていくことで、 「会社員」やほかの職業のイメージも、 より具体的になるかもしれません。 ●夢 考えが止ってしまった時。 私には夢があって、でも その夢に関する思考が止っています。 (10)どうして思考が止ってるの? その理由を書き出す。 何で、そう思ったの? じゃ、(11)あなたにとって大切なのはナニ? 大切な事を書き出す。 今出来る事は、夢を否定しない事。 夢について、一日一回は思い出すこと。 と、なりました。 意外とつまんないことに執着していることが分かった。 今、自分の周りにとても恵まれている事も分かった。 (12)いつ、私はそれを他の人に 分けてあげられる人になれるのか、動けるのか? (T・Tさん) ・T・Tさんへ、タナカカツキさんからのコメント 夢があるのはいいですね。 この世の中で自分の本当に やりたいことをみつけるのは大変なことだと思います。 一番むずかしいことかもしれませんね。 夢があればその夢にむかって、自分の時間、 自分の才能、自分のお金を投資できるので、 いきなり過ごしやすくなるように思います。 もちろん投資をつづける情熱が必要ですが。。。 僕は8歳の頃に既にマンガ家になりたかったので そういう意味では楽でした。 あの頃あこがれていた生活を 今まさにやっているような気もしますが、 (13)「今、自分のやってることが 本当にやりたいことなのか?」 と問えばいつもわかんなくなりますが(笑) ●やる気がでた「問い」 次はA・Iさんからおたより、 「とりあえず」、一流レベルの大学へ、 「とりあえず」、1番近い大学だから。 勉強はいっぱいしていたけれど、 考えることはしていなかった。 この間、私はその大学を辞めたんですけど、 それは、この「とりあえず」の鎖を 断ち切るためでもあったのだと思います。 (14)具体的には今、何をしている? プログラム言語の勉強をはじめたところ。 WEB製作のバイトも始めた。 英語に関しては、今はちょっと保留にしている。 (15)三ヶ月後、どうなっていたい? プログラム言語をなんとか書けるようになっていたい。 WEBも何個か作っていたい。 英語は、英検の勉強が進んでいるといい。 あと、他に何かバイトを始めている。 日焼けして、ちょっとダイエットも成功してるはず。 「三ヶ月後にどうなっていたい?」というのは、 考えていてハッとしたりして、楽しいものでした。 近い未来をイメージして、こうなっていたい! と思うと、やる気みたいなものが出てくるようです。 そもそも (16) 私の場合は、 大学に行くということが合っているか? という問いを無視して、 (17)どの大学に? という問いを選んで、こういう答えが出たわけですね。 ●大人の受験生さんから 30才をこえていますが、10年以上ぶりに 受験勉強中であります。医学部を目指しております。 以下、論文を添削してもらったときの、主なやりとりです。 Q.(18)あなたはなぜ医学部を目指しますか? A.弟が原因不明の心の病気に突然おそわれ 色々調べていくうちに関心が深まった。 Q.(19)きっかけは、きっかけとして・・・ A.本当の原因、本当のことを知りたいという 思いが強い。勉強しながら自分のできること、 役割を見つけていきたい。 周囲の人を診てあげられたり 今よりもう少し、直接、人の役に立つことが できたらと思っている。 大人の受験生さんへ 医学系の小論文に、私は3つの傾向があると思います。 1.科学的な思考ができるかを見る。 2.現代の社会問題への視野の広さと倫理観を問う。 3.人間性(患者に対する思いやりや、精神力)を見る。 あなたは、周囲の人への目配り、その中で 自分の役割を考えているので、素質は十分と思います。 医療も、社会の動きと密接にかかわってきますね。 医療問題が頻発する、臓器移植がさかんになる、 高齢化が進む…、するとどんな問題が起こってくるか、 どんなモラルが求められるか、というように 社会との関係で志望を考えるのもいいでしょう。 また、人間普遍の「生きるとは? 死とは?」という 方向でも考えを深めてみてください。 ●まだまだあるぞ、クラスメートのナイスな「問い」 (20)自分は誰と話す時が一番おもしろいと思うか? それはなぜか? (21)自分が今、一番身につけたい事は何か? それはなぜか? (Y・Kさん) (22)仕事はしたい? したくない?(Mさん) (23)30年経ってから今の自分を振り返った時、 何を思うだろうか?(ひろみさん) (24)疑問符が私を沸騰させています。 そんな「問い」をずっと考えつづけるべきか? (こーしさん) (25)「夢がある」って言っときながら、 本当の努力はしてますか?(M・Tさん) (26)自分のやりたいことで、できることで、 世間の役に立つことは何か?(Y・Nさん) (27)胸がドキドキする仕事かどうか? 自分にとって、胸がときめかない仕事は、 どうでもいい異性と同じで、 長く付き合って行くことはできないと思います。 (M・Kさん) (28)自分の職業は自分の好きな分野で 選ぶべきかどうか? 納得いく仕事って、 お客様と自分のかゆいところに 手が届くくらいのレベルのクオリティ。(K・Kさん) ●「コンビニ哲学発売中」から 「ブランドが重要なんだ」 「新しいビジネスソリューションの可能性」 「一対一のマーケティングが大事だ」 ・・・などの言葉を、ビジネス系の本に見かけます。 しかも、何となく転職が流行っているようですし、 会社を設立することも、とても流行っていますよね。 率直に言えば、みんな不安なんだろうなあ。 何かに飢えているという感じを、とても受けるのです。 ま、ぼくも不安で飢えているわけではあるけれど。 ただ、不安の外へのあらわしかたとして、 「より大きくて強いものをつくればいい、 より効率よく、より一生懸命やればいい、 より知識を吸収して世界に誇れるようになればいい」 という流れに対しては、 ちょっと「おや?」と思うところがあるのです。 (29)やりたいことを見つけるために、 会社を辞めて、別のことをはじめたとしても、 最終的にそれを、目に見えるかたちの 答えにするのは、いいことなのだろうか? (メリー木村さん「コンビニ哲学発売中 第27回」より) ●発見賞! 最後に、山田の独断と偏見によって、 今回の問いの発見賞を発表したいと思います。 あまりにあたりまえなのですが、 あらためてこの問いに向かうと、 私は、ずしん!ときました。 京都で大学4回生、Y・Tさん、21歳のおたよりです。 自分の将来、誰でも思うことは 「幸せ」になりたいと思うこと。 その「幸せ」に向けての進路だと思うのですが、 ここで「問い」です。 「幸せ」って何なんでしょう? ひとり一人人間の感じる「幸せ」って違うと思います。 大きな夢を叶える事が、叶った時が「幸せ」なのか? 大きな夢に向かっている時が、「幸せ」なのか? ここでさらに「問い」です。 「夢」って何なんでしょう? こーなってくると、十人十色。 いろんな「夢」が、今の世の中には あふれていると思います。 豊かな社会になり、何でもできるようになり、 本当にたくさんの「夢」が生まれた。 そのたくさんの「夢」の中から一つを選択して、 それに向かって進む。 それが「個性」ということになって、 自分はこんな自分という アイデンティティーの確立ができる。 というようなプロセスになっているような気がします。 大きく「幸せ」「夢」という捉え方は、 難しいと思ったりします。 だからこそ、最後に「問い」なんですが、 (30)明日の晩御飯、何食べよう? |
2000-06-14-WED
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