おとなの小論文教室。 感じる・考える・伝わる! |
Lesson44 自分を閉ざす「問い」、活かす「問い」 あなたはこんな経験ありませんか? 考えれば考えるほど、ドロドロと良くない方に進む。 しばらく考えまい、と思うけれど、 どうしても考えてしまう。 ネガティブなことばかり…。 逆に。 一人でもんもんとしていたが、 いちど、整理してみようと、 考えを前に前に進めた結果、 今やるべきことがわかり、 すっきり視野が晴れた! この差は何なのでしょうか? 私は「問い」の立て方だ、と思います。 考えることは、「問い」を立てることです。 自分の中で、 問いを出しては、答え、 問いを出しては、答え…。 それが、考えるということです。 ―― え? そんなことやっていないよ、 俺は考える時、こんなふうに、 「ああ、俺はダメだ。 もう歳だし、才能もねえ。 もう田舎かえる。」 っていうふうに頭の中で考えてる。 この、ドコに問いなんかあるの? ―― という人、 それは意識をしてないだけで、 逆算すると、無意識に、 自分の中に立っている「問い」がわかります。 「ああ、俺はダメだ。 (←自分という人間は良いかダメか?) もう歳だし、才能もねえ。(←どんな点がダメか?) もう田舎かえる。(←ダメな自分はどうすべきか?)」 これ、最初の問いが問題です。 そもそも多様な側面をもつ人間を、 良いか悪いかの二元論でとらえてしまっている。 だから、続く問いは、 ダメ人間である私を、なぜ? どうする? … みたいなことになっています。 問いは、木の枝のように、次々と枝分かれしていきます。 広がりのある良い問いは、次のよい問いを、 自分の視野を自分で閉ざすような問いは、 次々と悪い問いを生みます。 「問い」をどう立てるか? 今日は、ケーススタディとして、 メーカーに勤務する社員、 佐竹まことさん、の例を見ましょう。 佐竹まことさんは、この春、 どうにも納得できない人事異動をさせられました。 それを決めたのは、志麻田部長。 異動理由を求めても、 「きみは会社の決定にさからうのか!」 の一点張り。 さて、くやしくて、くやしくてたまらない佐竹さん、 ここからどう考えていくか? 佐竹さんの頭の中に潜入してみましょう。 ―――――――――――― ちくしょーー!!! 志麻田部長、 いや、クソ志麻田! ばかやろー!!! エラそー、なんだよ。 何かといえば、権力をふりかざしやがって。 だいたい、アイツ、異例の昇進だか、 なんだかわかんないけど、 現場経験も積まねえうちに、スルスル管理職に なりやがってよお。 商品のことも、 現場のことも、 おめえは、なーんにも分かってねえっ、つうの。 いっつも 計算書だせ、 企画案出せ、 って出前を取るみたいに ポンポン、ポンポン要求だけしやがって、 自分は右から左へ、数字を動かしてるだけじゃねえか! 空洞化してんだよ。 仕事は手品じゃねえぞ! そんなにホイホイだせるか。 人間がやってんだあ、こんちくしょー。 わかんねえんなら、わかんねえで、 だまって現場の好きにやらせろーーー! 自分の好みのとこだけ、 気まぐれに首つっこんで、 人をコマみたいに動かすなぁー!! クソ志麻田――! こうなったら、社長に直訴だ。 俺みたいに志麻田を怨んでるやついっぱいいるもんなあ。 そいつらに声かけて、いっせいに社長へメールだ。 いや、志麻田部長、みんなの前で、 水、ぶっかけてやる! こん、ちっくしょーー。 ―――――――――――― 再び、ズーニーです。 結論は、「志麻田部長をギャフンといわしたる」 ということでしょうか。 考えがバットな方向へいくときは、 自分の立てた「問い」をチェックする。 佐竹さんが立てた「問い」をチェックしてみましょう。 志麻田部長はどんな人間か? 志麻田部長のどこが、なぜバカヤローか? 志麻田部長にどうしてほしいか? 志麻田部長にどうやって目にもの見せるか? 「問い」は、部長に関するものばかり、 根っこにあるのは「恨み」 だから、このまま考えつづけても、 部長に対する恨みが、 木の枝みたいに細分化され、増幅されていくだけで、 まったく問題解決になりません。 こういうときは、どうしたらいいか? いったん、考えるのを止めるのです。 考えるという行為は穴掘りに似ています。 佐竹さんが本来、 考えるべきことが野球場くらいの広さとすると、 佐竹さんは今、志麻田部長という、 直径30センチくらいの穴を ひたすら、深く、深―く、 丁寧にほじくっているにすぎません。 他に考えるべきエリアが、 ぞっくり、抜け落ちているんです。 つまり「考えないほうがまし」です。 佐竹さん、1日、お休みはとれませんか? 好きな人と会ったり、自分の好きなことをして過ごし、 頭や体の別の筋肉を動かすのです。 リフレッシュしたら、「問い」の立て直し、 意識的に「問い」をつくってみましょう。 はじめの問いが肝心です。 まず、問いの主語を、他者から自分にしてみる。 他人事でなく、自分の問題として引き取るとは、 そういうことです。それから、 こうありたいという結果をイメージしてみる。 佐竹さんには、この二つに着目して、 「問い」をつくってもらいましょう。 再び、佐竹さんの頭の中に潜入です。 ―――――――――――― 俺は、いちばんどうなったら満足なのか? どうしても配属を改めてほしいのか? 人事の問題点を会社に伝えたいのか? 配属については自分でもあきらめており、 納得がほしいだけなのか? やる気をなくして、しばらくこの問題から逃げていたいのか? 自分でもやりたいことがわからないので見つけていきたいのか? 自分のやりたい仕事ができる状況に自分をもっていきたいのか? 「いつ」実現させたいか? 今でなくてはダメか? 何ヵ月後か? 来年か? 何年先か? 「どこで」実現させたいか? 自分の組織ではどの部署が近いか? 自分の組織外では、どんな可能性があるか? そのために俺は、どうしたらいいか? 自分に必要な情報はどんな情報か? 自分にはどんなスキルが必要か? 自分の内面の準備は整っているか? 俺は、この環境とどういうスタンスで関わっていくか? 新しい環境で求められていることは何か? そのことと自分はどう関係しているか? ―――――――――――― 再び、ズーニーです。 佐竹さんは、このような「問い」を設定して、 新しい部署と自分との関係を模索中です。 いつ、どんな状況でも、 自分にとってよろしくない環境であっても、 何か、自分を成長させてくれたり、 だれかの役に立つなど何かひとつ意味はあるもの、でも… もし、「何の意味もない」とわかったら、 あなたはどうしますか? さて、今日のおさらいです。 考えが悪い方向に行く時は「問い」をチェックして、 いったん思考を止める。 「問い」は、掘るところが散らばっているほうがいい。 他人にばかり向いていたら「自分」へ、 逆に自分にばかり向いていたら 「他人へ」「組織へ」「社会へ」、 「過去」にばかりむいていたら「今へ」「未来へ」、 というように、掘るところを変えてみる。 「問い」は、 あなたがより良い状態になることをイメージして、 それにつながるように組まれているのがいい。 木の枝のように細分化していくので、 最初の「問い」が肝心です。 創造力を駆使して、あなただけの「問い」を 立ててみてください。 よい「問い」には、かけがえのない価値があります。 |
2001-04-11-WED
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