YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

ESSAY 120 うごめくパワー

成功してしまった人の声が、
自分の中に響かないときがある。

成功してしまった人っていうのは、
弱い自分をふりきってしまって、
向こう側へいっちゃった人の声なんだろうな。

だから、「そんな弱音は吐くな」というし、
「そんな苦労なんかあたりまえだ」というし、
「そんなことでへこむな」と言う。

それがわかっていて、
そっち側にいけないから、すごく苦しくて。

たぶん、そういうときの自分は、
不安にとらわれている。

先のことを考えたら、終わりのないものなんてない。
いつまでつづくかわからない
という部分では、みんな同じなんじゃないかと思う。

新しいものへ踏み出すとき、
より、リスキーな道に進もうとするとき、

そもそものところで、
それは自分が選んだのだ、
という「納得感」が必要だと思う。

不安は、くり返し、くり返し、
訪れて、足元をさらおうとするから。

私と同じように、人生の賭けにでて、
どうしていいかわかんない、
っていうふうに思っている人がいたら、

何もしてあげられないし、
わたしだって自分で手一杯だけど、なんか、

そっから、うごめく、
というか、
うごめくパワーを発信してほしい。

あなたが、これから時間をかけて何者かになっていく。
その成果もとてもたのしみだけど、
そうではなくて、

いま、つらいけど、その先にいいことがある、
そういう考え方も、絶対、ありなんだけど。
それ以上に、

いま、苦しんだり、あがいたりして
うごめくパワーそのものが、
ものすごい私に力を与えている。
与えているんだ、ということをわかってほしい。

打ちひしがれ、
頭をたれている人の姿は、
何かを祈っているように見える。



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
山田ズーニー著 PHP新書660円

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの
痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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2002-10-30-WED

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