ベッカムをめぐる、
インテルとミランと奥方の
雲の上の攻防
マンチェスター・ユナイテッドの更衣室で
数週間前にぼっ発したケンカが、
ミラノのサッカー人たちを
たいそう騒がせています。
英国一のチャンピオンであり、
世界でも超有名選手のひとりであるデイブ・ベッカムが
監督のファーグソンと暴力沙汰のケンカをしたのです。
バレーで言ったらプリマ・ドンナ、
つまりサッカーでは主役スターのベッカムには、
監督の数々の無礼が我慢できませんでした。
その監督がプレイ用のシューズで、
そのベッカムをぶんなぐったのです。
(いや、なぐろうと思ったわけではなかったのだと
言われてますが)
シューズの底を補強する固い部分が
ベッカムのあのデリケートな顔に切り傷をつけ、
左頬骨のあたりに傷跡を残してしまいました。
チャンピオン・ベッカムは大いに気を悪くし、
ファーグソンを許そうとはしません。
シーズンが終了したらマンチェスターを出て行く、
とまで言っています。
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ベッカムはまるでオークションに
出品されたゴッホの絵! |
この知らせがミラノの大金持ちふたりに
揺さぶりをかけました。
インテルのマッシモ・モラッティ会長(石油業者)と
ミランのシルヴィオ・ベルルスコーニ会長
(テレビ王でイタリア共和国首相)のふたりです。
そして彼らはすでに、
ベッカムを買い受ける準備はあると表明しており、
まるでサザビーかクリスティーで
ゴッホの絵が莫大な値を呼ぶのと同じような、
本気の競り合いがエスカレートしているのです。
ベッカムはサッカー・ボールを扱う名手であるだけでなく、
なによりジェット・セット・インターナショナルの
重要人物でもあります。
彼は、インテルやミランが競りの一位になるための金額を
いつでも払うと言うほどの、V.I.P.です。
けれど、ベッカムを競り落とせば、
人気の点では夫に負けず劣らずの奥さんも付いてくるんです。
みなさんご存じの、元スパイス・ガールズの
ヴィクトリア・アダムスですね。
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さあ「ヴィクトリア奥様」に
いかに気に入られるか?
そこが勝負なのだ。 |
ヴィクトリア・アダムスは
スパイス・ガールのひとりとして
世界中にミリオン・ヒットを飛ばし、
ベッカムと一緒になってからは
英国一の人気を誇るカップルの「お姫さま」となりました。
世界的フェスティバルでも、一流劇場でも、
彼らふたりの姿が見られないことはありません。
王宮でのレセプションにさえ、
彼らが招かれていないことはあり得ないのです。
王子様とお姫様のように、
彼らにはおとぎ話の世界が必要です。
彼女にとっての歌や、
彼にとってのサッカー場とは別の世界がね。
ですから、ベッカムを英国の地から引き離すには、
モラッティもベルルスコーニも彼とサッカー的契約だけを
すれば良いってもんじゃありません。
奥さんに夢の世界を提供することも「義務」なんです。
インテル側は副会長であるトロンケッティ・プロヴェーラが、
テレコム(イタリア最大の電話会社)と
ピレッリ(イタリア最大のタイヤ会社)の
社長でもあることから、
ヴィクトリアのことは任せろという構えです。
むこう5年間、一契約につき年3百万ドルで、
いくつかの広告代理店の「立会人」になってもらう
契約の準備があると、彼は言います。
これに引けをとりたくないミラン側では、
テレビ王のベルルスコーニ会長が
「ヴィクトリア奥様にテレビの契約を用意せよ」
との命令を下しました。
歌手としての彼女には特別に用意されたショーを、
女優としての彼女にはキラキラしたコメディー
(60年代のドリス・デイのように演じて頂ければ理想的と、
首相ベルルスコーニは申しております)を!!
サッカー選手ベッカムの運命は、
すっかりヴィクトリア夫人に握られている格好です。
彼女はシンデレラのように、
「白馬の王子様」と一緒におとぎ話のなかに居たいのです。
ベルルスコーニとモラッティのどちらが
彼らに魔法の城をプレゼントできるんでしょうねえ。
6月に、その答が出るでしょう、たぶん。
訳者の一言 |
日本語の「白馬の王子様」は、
イタリア語では直訳すると
「水色の王子様」になります。
il Principe Azzurro
イル・プリンチペ・アズーロ
アズーロの複数形がアズーリです。
イタリア・チームはやっぱり
王子様軍団なんだわと思った貴女、
アズーリの色は童話ではなくて、
サヴォイア家という
実在した王室の紋章の色から
きているんですよ。
王室の色だから、
まあ、そう遠くはないか・・・ |
翻訳/イラスト=酒井うらら
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フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!) |